エルオ大陸の転生者   作:kasyo

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俺なんかやっちゃいました?

気が重い旅立ちだったが、歩き出してみれば結構楽しいものだね。

初めて見る外の景色はなかなか新鮮だった。

 

村を出てしばらく田舎道をずんずん進んでいった。

そして途中からは山道に入る。ほとんど使われていないのか人に会うことはなかった。

 

それにしてもこんな山道なのに、なんで?って思うくらい道が綺麗なんだよね。

村の外へ続く道も途中からビシッと石畳で舗装されてて、その気合の入り方にビビった。

 

何なの?この世界にも道路族みたいな人がいるの?

まぁ旅が楽で助かるけど。

 

「親方、そろそろ休憩にしよう」

 

「あぁ、そうだな」

 

道路わきにある広場のようなところに荷物を降ろした。

俺は疲れないから休憩なんていらないけど、親父はそうじゃないので意識して休憩しないといけない。

元気魔法ぶっ放せばいけそうな気もしないでもないけど、エナジードリンクがぶ飲みするみたいでちょっと気が引けるしね。

 

「流石に早いな。明日にでもナンボナン市が見えそうだ」

 

「え?そうなの?」

 

まだ村を出て二日目だ。思ったより早いペースで進んでいたらしい。

 

「この道は険しくて馬車が通れないが、ナンボナン市への近道なんだ」

 

「あぁ、なるほどね」

 

親父に言われて納得した。

そりゃー人の足でしか通れないんだから誰にも会わないわけだ。

 

でも何で盗賊が?もっと人が多いところに出た方が効率よさそうなもんだけど。

 

「街道は騎士様が見回っているからな。盗賊なんてさらし首だ」

 

わーお。

まぁそうだよね。見せしめになるもんね。

 

この世界の風習なのか知らないけど、遺体を放置するってのがかなり嫌われるんだよね。

それで火葬が一番で、次が土葬って感じ。

平民だと薪代がかかるから土葬が主流なんだけど、うちの村は俺が木を伐って来るから薪がタダみたいなもんなので、けっこう火葬が主流だったりする。

 

煮炊きも薪でやるから、材木の半端なんかも結構うれる。結構どころかかなり売れる。

案外馬鹿にならない稼ぎになるから万々歳。

そう言えば炭って見ないな。煮炊きに使うなら炭の方が煙でないしよさそうな気がするんだけどね。

今度フィールドで作ってみるかな。

 

「そろそろ、出発するか」

 

「そうだね」

 

俺は荷物と親父を背負って再び歩き出した。

 

また山道をずんずん進むと、遠くの方に街が見えてきた。

すっげーデカイ。

 

視力を強化してみると中世の街から壁を取っ払ったような姿をしていた。

小さく見える人がたくさん動き回っているのがわかる。

 

「あれがナンボナン市だ。相変わらずにぎわってるようだな」

 

確かに繁盛しているように見える。

大河に目をやると小舟がひしめき合っていた。

 

うわーすごい。村はスーパーど田舎だと思ってたけど、あれを見たらウルトラど田舎に改名した方がいいな。

 

さて、さっさと仕事終わらせて帰ろ。

俺は小走りでナンボナン市へ向かった。

 


 

父様への手紙の返事を書いていると、俺の広域探知に引っかかるものがあった。

 

「おい、気づいたか。主祖がいるぞ」

 

その言葉に執務室はにわかに慌ただしくなる。

 

「若様、どちらの方角でしょうか」

 

「正面だな。それほど強くはないようだ、祝福の子か?」

 

騎士ガトーレンは俺の言葉を聞くとすぐさま行動に移った。野良の主祖がフラフラしているなど騎士たちには到底看過していられない重大事態なのだ。

 

「若様、万が一の場合に備えて装備をお願いいたします」

 

「あぁ、わかった」

 

俺が椅子から立ち上がるとテッシュが慌てた様子で鎧を持ってきた。

 


 

俺は親父を椅子から降ろすと二人で歩いてナンボナン市へ入った。

 

すっげぇ。遠くで見ていた時よりずっとすごい。

まず、活気がすごい。そこら中に店があって、前世で言うならアメ横みたいな感じだ。

 

田舎者丸出しでのんきにふらふらと大通り?を歩いた。

 

あ!あれカリーナちゃんのお土産にいいかな?

あのおもちゃコロナが喜びそうだな。

 

そんな感じだ。

ホントのんきにしてたんだ。

 

そしたら。

 

「お前たち!そこを動くな!」

 

急に拡声器を使ったような大声が聞こえてマジ驚いた。

しかも人の口から出ているもんだからさらにビビった。なんなのあれ?魔法なの?

 

俺と親父も、周りに居る人間もマジにビビりまくって、道路脇に半土下座?みたいなポーズで縮こまった。

この世界の土下座って変なポーズなんだよね。猫の伸びみたいな感じ?

 

あれ?

あれって騎士様?

高そうな鎧着てるしやっぱりそうなんじゃない?

ヤバイ!ヤバイヤバイ!今までこそこそ生きてきたのに!こんな一発目で!

 

こっちにずんずん近づいてくるし!

しかも金ぴかの鎧に金ぴかの槍を持った騎士様増えてるし!

 

どうしよう!全力ダッシュする?でも爺さんは騎士様には敵わないって言ってたし!

どうする!どうする!

 

俺はめちゃくちゃに焦りまくった。

 

すると先頭にいる騎士様が声をかけてきた。

 

「お前たち、ここで何している!」

 

親父もブルついてた。

あったり前だよ!めっちゃ怖いもん!

 

「わたくし共は霧の森村の大工衆でございます。クオルデンツェ・ウィルク様より呼び出しを受けまして、参上した次第でございます。私が棟梁のアルト。こちらが息子のバン、従祖の大工でございます」

 

親父は震えながらもしっかり受け答えをしていた。

貴族慣れしているのもあるかもしれないが、めっちゃかっこよかった。親父すげぇ。

 

そんなことを考えていたら騎士様が俺の顔を睨みつけた。

 

え!俺!やっぱり魔力持ちとかやべー奴扱いされるじゃん!

ホント、田舎でのんびりしたいだけなんです!信じてください!

 

「嘘をつくな!」

 

さっきの拡声器魔法?を近距離でぶつけられた。

ビリビリしてスゴイコワイ。タスケテ。

 

「う、嘘ではございませんっ!こちらに書状が……」

 

親父は豪華な手紙と俺の許可証を騎士様に手渡した。

騎士様は手紙と許可証を読むと、どんどん表情を険しくしていった。

 

「本物のようだが……」

 

そうなんです!本物なんです!ご迷惑なようならすぐに帰りますんで!

俺は心の中で日本式土下座をしまくった。

 

「ついてこい、決して不用意に動くな」

 

あ。終わった。これはダメなやつ。

カリーナ、コロナ。ごめん。

 

気が付くと金ぴか装備に完全に囲まれていた。

俺と親父は言われるがまま、とぼとぼと歩いて行った。

 

牢屋にでもぶち込まれるのかと思ったけど違った。

なんか豪華な大広間みたいなところに通されて「ここで待て」と言われた。

 

相変わらず金ぴか集団に囲まれて槍を向けられている。

心臓がやばいことになってる。体で地震が起こってるみたい。

 

逆に親父は部屋の隅でほったらかし状態でオロオロしてた。

親父ー助けてくれー。

 

「これから若様がいらっしゃる。お前はそのまま待て」

 

「おい、やれ」

 

まって!何やるの!

 

しかし、騎士様がそう言った瞬間に体に妙な感覚が走る。

なんかロープでぎゅうぎゅうに締め付けられたような息ぐるしさを感じる。

 

しばらくすると、恐らく若様が入ってきた。

見えないけどわかる。

 

魔力の塊がドーン!と動いているのだ。

俺はあんまり他人の魔力とかわからないけど、これははっきりわかった!さっきの騎士様とは比べものにならない圧を感じる!

 

「顔を上げなさい」

 

俺は恐る恐る顔を上げた。

王様みたいな椅子に青い髪の少年が座っていた。

その横にはザ・執事って感じの男性が立っている。

 

ものすごい魔力の圧力せいで全く身動きが取れない。

騎士様とかよく動けるな……。

 

「若様、こちらです」

 

そう言って執事さんが手紙と許可証を若様に渡した。

若様は無言で読んでる。ヤバイお貴族様ヤバイ。コワイ。爺さんの言ったとおりだった。

 

「おい、お前」

 

手紙を読み終えた若様が声をかけてきた。

多分中学生くらい?なんだろうけどめっちゃ威厳ある。

 

「おい、返事をしろ」

 

ビビりまくってたら騎士様に小突かれた。

やめて、ちゃんと喋るから、こわいから。

俺は意を決して口を動かした。

 

「はい。私はアルトの息子、大工のバンでございます」

 

はい。俺頑張りました。これが精いっぱいです。

若様ずっとこっち見てるし。

 

「伯父上の子か」

 

その言葉を聞いて執事さんが話し出した。

 

「ガーダクル様とナンボナンの宿屋の娘ミラの子でございます。私が妊娠を確認いたしましたが、帝国東部貴族への侵攻が始まりましたので出生は確認しておりません」

 

そう言って執事さんは頭を下げた。

いや、俺のことって記録しっかり残っててびっくりした。完全なほったらかしってわけでもないんだな。

 

「それでこんなものが舞い込んだわけか」

 

若様笑ってる。

でも周りの人が全然笑ってない!みんな苦虫を噛みつぶしたみたいな顔になってる!

 

「あの地がクオルデンツェ領となり何度か調査を致しましたが、あの者はフィールドにいることが多く直接会うことはかないませんでした」

 

えーと、ごめんなさい。それ俺のせい?

 

「従祖の古老に聞き取りを行い、一般的な従祖であると判断いたしました」

 

「魔力に気づかなかったのか?」

 

「魔力不全により魔力残滓が表面化しており感覚が鈍かったのだと思われます……」

 

執事さんはそこまで言うと、表情の苦虫レベルを一段上げた。こわい。

若様は「そうか」と一言だけ言ってずっとこっち見てるし。

 

そこでハタと気づいた。

金ぴか装備の人たちが小さく震えていることに。

そして表情が明らかに俺を見てビビっている、それだった。

ビビりとビビりでビビり合い、緊張しすぎてよくわからないことばかり頭に浮かぶ。走馬灯かこれ?

 

「おい、お前は主祖だぞ。気づかなかったのか?」

 

へ?

どういうこと?

若様の言葉に頭が真っ白になった。

お貴族様と平民の子供は従祖になるんじゃないの?

 

「私はガーダクル様と母ミラの間に生まれた従祖だと聞いております」

そう、許可証にはそう書いてあった。

 

「他の魔力持ちに会ったことは?」

 

「村のお爺さん以外には会ったことがありません」

 

「そうか」

若様は笑ってる。

やめて、若様が笑うたびに周りの人たちの表情ヤバくなっていくから。

 

「お前たちはどう思う?」

若様の一言で周りの人たちの金縛りが解けた。

お説教から解放されたみたいになってる。

 

「恐らくですが、ガーダクル様とミラの間に生まれた『祝福の子』であると思われます」

 

「まぁそうなるな」

 

執事さんと若様が揃ってこっちを見た。

なに祝福の子って……。

 

「ただの祝福の子なら首を刎ねればそれで済むが……そうもいかないな」

 

ちょっと雰囲気慣れてきたところでめっちゃピンチがががが。

 

「伯父上の子で主祖ならば、もはやクオルデンツェだぞ。どうする?」

 

「当主様へ急ぎ人を送っておりますので、すぐに返答があると思われます。しばらくの間この者たちを拘留いたしますので、お手数ですが若様には魔封印を施していただきたいと思います」

 

「わかった」

 

そう言うと若様がこっちに歩いてくる。

近づくと魔力のヤバさが分かる!こわい!

 

そして俺の背中に手を置いたと思ったらすごい量の魔力を流し込まれた。

苦しいー。

 

「これでいいだろう。伯父上の子だ丁重に扱え」

 

周りに人間は一斉に胸と腰に手を当てるポーズをとった。

敬礼みたいな感じ?かっこいいけどもう気だるくて何も考えられない。

 

どうなるんだろこれから。

 

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