小さな女の子にTSしたから、センシティブなミッションを達成してレベルアップする   作:大崎 狂花

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第1話 始まり

「もっとお金を稼がなくちゃなあ・・・・・・」

 

 二十代成人済み男性の谷崎シュロはこう呟きながら、宝箱を開けた。そばには首を刎ね飛ばされた、ゴブリンの死体がある。

 

 ここ、シュロが今いるのは現代日本だ。ビルもあるし、スマホもある現代日本。しかし、40年とか50年とか、そのくらい前に『魔物』というものが出現し、さらにはダンジョンなんてものが登場したせいで、スマホやビルだけでなく魔法やらスキルやらステータスやら魔道具やらのファンタジーなものが存在するようになってしまったのである。

 

 で、まあ、魔物を倒すと宝箱が手に入るから、それらが出現する前には存在しなかったハンターと呼ばれる職業が存在するようになったのである。宝箱の中身を売り払って生業を立てる職業である。

 

 まあ、ここはそういう世界なのだ。細かいとことかはあまり気にしないでくれると嬉しい。そういうもんだと思ってくれ。

 

 で、そんな世界でハンターをしているのが主人公の谷崎シュロだ。

 

「あー、もっとお金が欲しいぜ・・・・・・」

 

 シュロは、そう言ってため息をついた。

 

「そうすれば、もっとルラに楽をさせてやれるんだけどな・・・・・・」

 

 シュロは妹のために働いている。両親はいなくて、妹と二人暮らしだ。だからこそ、楽をさせるために目一杯働いてお金を稼ぎたいわけだけど・・・・・・

 

「あんまり儲からないな」

 

 もちろん、生活が出来ないほどではないけど、妹にもっと色々買ってやるにはもう少しほしい。

 

「転職とかするか? うーん、でもなあ・・・・・・今のところ、ハンターが一番稼げてるしなあ・・・・・・俺基準では」

 

 もちろん、シュロ以外にもっと稼いでいる人はいるけど、でもシュロ基準ではこれでも稼げてる方なのだ。他の仕事をしたこともあったけど、ていうか今現に並行してしてはいるけど、ハンターが一番稼げる。だから、才能が向いているのは明らかにハンターなんだろうけど、それがこの様では・・・・・・

 

「俺のレベルがもっと上がりやすかったらな・・・・・・そしたらもっと敵を倒せて、もっと宝箱をゲット出来るのに・・・・・・っと、悲観的になっている場合じゃないな。とりあえず宝箱の中身を確認しよう。高く売れるようなもんだといいんだけどな・・・・・・」

 

 罠発見の魔道具で罠がないことを確認してから宝箱を開けた。

 

 そこにあったのは──

 

「なんだ・・・・・・?」

 

 ピンク色、ハート型の、宝石が一つ入っていた。

 

「なんだ、これ・・・・・・? 初めて見る物だ。うーん、魅了とか、催淫の効果がある魔道具とか・・・・・・そういうのだったら需要がありそうだし売れると思うけど・・・・・・」

 

 手に取って、眺めていたその時だった。

 

「!?」

 

 ピカーっと、突然その宝石が光り出した。

 

「!? 手に取っただけで発動するのか!?」

 

 慌てて放り投げたが、おそらくはもう遅かった。シュロはピンク色の光に包まれてしまった・・・・・・。

 

 ・・・・・・

 

「なんだったんだ・・・・・・?」

 

 ようやく光が収まる。シュロは顔を上げた。地面に放り投げたからか、その役目を終えたからか、宝石は割れていた。

 

「こっちはなんともないな・・・・・・」

 

 シュロは自分の手の甲を見た。手の甲にはお札が貼ってある。呪いとか、そういうバッドステータスを回避するための防御の魔道具だ。破れたり、白紙になったりしていないということは、発動していない、つまりこちらに害を及ぼすような悪いものではなかったということなのだが・・・・・・。

 

「・・・・・・? いやなんか変だ」

 

 自分の手を見て、シュロは違和感を覚えた。手が綺麗すぎる。滑らかすぎる。それに、こんなに小さくはなかったはずだ。お札との比較をすれば、明らかに手の大きさが変わっていることがわかる。

 

「それに、体が軽いな・・・・・・やけに軽い」

 

 それに、声も高い気がする。

 

「・・・・・・え、あれ? ひょっとして・・・・・・」

 

 前に聞いたことがある。魔道具の中にはそういう魔道具もあると。めちゃくちゃレアらしいし、まず自分が手に入れることはないだろうとそこまで気にも留めていなかったのだが・・・・・・

 

 シュロは急いでスマホを取り出す。そして、インカメで自分の姿を見てみた。

 

「マジかよ・・・・・・」

 

 そこには見慣れた自分の姿ではなく、妹と同じくらいの歳の、淡い紫色の、長い髪と同じ色の目を持つ美幼女。

 

「性転換の、魔道具・・・・・・」

 

 前に聞いたことのある魔道具の名前が口からこぼれ落ちる。シュロはしばし呆然と、変わってしまった自分の姿を見つめたのだった。

 

 ◇

 

「マジかよ・・・・・・まさか、俺が女の子になるなんて・・・・・・」

 

 シュロは、肩を落としながら歩いていた。魔道具で起きた色々な事象に対応している、『魔道具お助けセンター』で色々と検査してもらったところ、確かに女の子になっていた。今は、センターがくれた半袖のシャツにスカートといった服装である。

 

「まあ、ちゃんと本人確認が出来たのは良かったな」

 

 TSした時、最初に不安になるのは身分証とか、そういったヤツだが、ちゃんと本人確認ができて、身分証とかに色々備考が追加された。

 

 指紋、声帯、虹彩・・・・・・色々変わってしまってそれらで本人確認は出来ないわけだけど、このファンタジー世界では魂の形で本人確認をするという方法があるので問題はないのだ。

 

 そう、魂の形・・・・・・指紋ならぬ魂紋で。そう、魂紋・・・・・・こんもんってけっこう危ない響きだ。二番目の『ん』を『う』にしたらまずい。

 

 現に、センターの職員さんは間違えていた。シュロはセンターで魂紋確認を受けた時のことを思い出す。

 

『それではこうもん・・・・・・魂紋確認をさせていただきます』

 

『・・・・・・いやまあ、仕方ないってことはわかるんですけど、そこは噛まないように全力で努力していただかないと・・・・・・』

 

『すいません。言い間違えてしまいました。あの、言い間違いついでに本当に肛門確認させてもらってもよろしいですか?』

 

『よろしくないです』

 

 ・・・・・・

 

 ・・・・・・うん、まあいいだろう。思い出す必要のないくだらない記憶だった。

 

(そういえば、なんか気になることも言ってたな・・・・・・)

 

 シュロは、職員の言っていた気になることも思い出した。

 

『性別が変わってしまうケースは、珍しいことは珍しいですけど、ないわけではないんですよ。毎年、ある程度の数の被害者が出てきます。ですが、残念ながら治療法は見つかっていないんです』

 

『マジですか・・・・・・? いや、でもなんらかの糸口くらいはないんですか・・・・・・?』

 

『ないですね。あなたの場合は、特にその中でもレアケースみたいなので、確実にないと断言できます』

 

『レアケース・・・・・・? それはどういうことですか?』

 

 何がレアケースだというのだろう。シュロはどういうことかと聞いた。

 

『いいですか? 通常の場合、性転換の魔道具・・・・・・青いハートの宝石で性転換するんですよ。通常なら。でも、あなたはピンクのハートの魔道具で性転換した。それは、《性転換の魔道具》ではありません。それは《特殊ミッション付き性転換の魔道具》なんですね』

 

『《特殊ミッション付き性転換の魔道具》・・・・・・?』

 

『ええ。この魔道具が存在することは前々から確認されていましたが、それを使って性転換した人はいません。だから、あなたが第一号です。なので、あなたの場合は対策なんてまず打てようがないんですね。通常の場合でも大抵絶望ですが、あなたの場合は特に絶望です』

 

『マジかよ・・・・・・』

 

 シュロは頭を抱えた。

 

『まあでも、それには特殊ミッションがついているので、一応当たりではありますよ』

 

『当たり・・・・・・?』

 

『ええ。それで性転換した者には特殊ミッションが与えられて、それをクリアするとレベルアップするらしいんです。これは、知性ある魔物を拷問して得た情報なので、確かだと思いますよ』

 

『なるほど・・・・・・うーん、まあそれなら、あり・・・・・・なのか?』

 

 むむむ・・・・・・と唸るシュロを見ながら、職員はぼそっと呟いた。

 

『まあ、そのミッションって全部エッチなやつらしいですけどね・・・・・・』

 

『? 何か言いました?』

 

『なんでもないです』

 

 で、まあそのあとそのセンターでそういうことが起こった時用に常備されている服をもらって、今ここにいるというわけだ。

 

「まあ、それは良かった。とりあえずは良かったけど・・・・・・スカートとか恥ずかしすぎる!」

 

 シュロ。当然のことながら、人生初スカートである。

 

「スースーするし、恥ずかしい・・・・・・!」

 

 二十代成人済み男性なのに、こうして公然とスカートを穿くことになるなんて、流石に恥ずかしすぎる。恥ずかしすぎるのだ。女の子の体になったわけだし、別に変ではないとわかっていても普通に恥ずかしい。男としての自覚がぐらぐら揺らいでいく感覚がする。普段より視点が低いのも変な感じだし、今までに股間にあったものがなくなっている感触もかなり変な感じだ。

 

 センターではいつもはさらっとした対応をする職員が、わざわざしゃがみ込んでシュロに目線を合わせてくれた挙句、やたらと優しい口調になっていたのも、すごく奇妙な感じがして気味が悪かった。

 

「しかし、ミッションか・・・・・・レベルアップするっていうのはありがたいことだけど・・・・・・」

 

 シュロはレベルが上がりにくい体質なのだ。レベルという概念が発生してから今までに、比較的上がりやすい体質と上がりにくい体質があることがわかっている。

 

 だから、それはありがたいのだが・・・・・・

 

「でも、怪しいな・・・・・・何か裏があるんじゃないのか? そのミッションがめちゃくちゃ難しいとか・・・・・・」

 

 そんなふうに考えていた時だった。

 

 急に頭の中にピコーン、という音が鳴って目の前に文字が浮かんできた。そこに書かれていたのは──

 

『ミッション スカートをたくし上げろ。ただし十秒間はたくし上げたままでいること』

 

「・・・・・・は?」

 

◇

 

「は、スカートたくし上げ・・・・・・?」

 

 突然ミッションとやらが生えてきて、シュロは困惑していた。シュロは特殊ミッション付き性転換の魔道具で性転換したわけだし、ミッションがあるっていうのはわかってたけど、なんだこのミッション・・・・・・?

 

「いや、たくし上げろってだけでパンツを見せろとは書いて──」

 

 ミッションはステータスと同じように透明な板のようなもの──ウインドウに書かれている。ミッションの下に『※ちゃんとパンツが見えるようにたくし上げること』と書いてあった。逃げ道がない。

 

「なんなんだよ・・・・・・ちょっと特殊な性癖のヤツとかが決めてんのか? このミッション・・・・・・」

 

 実は、この魔道具で出るミッションはセンシティブなものしかないのだが、残念ながらシュロはそれを知らないのだ。まあ、知ってても防ぎようのないことだが・・・・・・

 

「いや、こんなミッションなんかやるわけないでしょ。やるわけなんて・・・・・・」

 

『このミッションをクリアすると、レベルアップするらしいです』

 

 思い出されるのはそんな職員さんの言葉だ。

 

「い、いやそうは言っても職員さんも実際に経験したわけじゃないんだろ? 間違った情報かもしれないし、そんなことのために──」

 

(でも、これでちゃんとレベルが上がればもっと強い魔物を倒せて、もっと宝箱をゲット出来る。お金を稼げて、妹に色々な物を買ってやることが出来る・・・・・・!)

 

 シュロは逡巡した。しばらくどうしようかと逡巡したが・・・・・・答えは決まった。

 

(うん、とりあえず、物は試しだ・・・・・・! とりあえずやってみなきゃわからないんだから!)

 

 とりあえず、やってみることにした。幸いにも辺りに人影はない。

 

(とりあえずやってみよう! 恥ずかしいけど、スカートを十秒たくし上げるくらいなんでもないことだ!)

 

 もしレベルが上がったら、はっきり言ってそんな羞恥なんて補って余りあるほどな見返りが得られる。そう、得られるのだ。得られるというのに・・・・・・

 

(え? やばい。めちゃくちゃに恥ずかしいぞ・・・・・・?)

 

 シュロは躊躇してしまう。すっごく恥ずかしい。顔は真っ赤だし、目はぐるぐるになってしまっている。

 

(あ、あれ? 自分でスカートを捲るのって、思ったよりも恥ずかしいな・・・・・・)

 

 初めての感覚だ。男子だった頃はもちろん味わったことのない感覚だし、女子でもこんなことする経験はなかなかないだろう。公の道路でスカートをたくし上げるなんて・・・・・・

 

(やばい、ドキドキする。へんたいだって思われちゃったらどうしよう・・・・・・)

 

 けっこう逡巡していたが、やがて意を決した。

 

(ええい男だろ! スカートの一つや二つ、すっとたくし上げてみせろ!)

 

 シュロは痛いほどに高鳴る心臓を抑えつけながら、スカートをたくし上げてそのパンツを外気に晒した。パンツも、ちゃんと女の子のものになっている。顔を真っ赤にして、目をぐるぐるにしながらスカートをたくし上げて十秒を待つ。十秒がとてつもなく長く感じられた。

 

(なんだか、こうやって自分でスカートを、こんなところでたくし上げるなんて、本当にへんたいになった気分になる・・・・・・それに、なんだか恥ずかしいだけじゃなくて──)

 

 ピコーンという音がした。見ると、ウインドウにミッションクリアという文字が出ている。いつの間にか十秒経っていたようだ。シュロは慌ててスカートを元に戻した。

 

(あ、危ない危ない。これ以上やったら未知の扉を開くところ・・・・・・い、いや違う! 未知の扉とか開くわけないから!)

 

 シュロはスカートを直して、それから辺りを見た。

 

(良かった。周りに人はいないみたいだ。目撃されなかったのが不幸中の幸いと言ったところ──)

 

 ほっと胸を撫で下ろそうとした、その時だった。

 

 シュロは道路の向かい側の歩道に、男の子がいるのを発見した。どうやら見落としてしまったみたいである。

 

 その男の子は、顔を真っ赤にしていて、その様は明らかにさっきまでシュロがやっていたことを目撃していた証で──

 

「・・・・・・っ!」

 

 シュロは同じように顔を真っ赤にすると、何か言われる前にせかせかと早足で帰っていった。

 

 そして、シュロが未知の扉を開くことはなかったのだが、この男の子は未知の扉を開いてしまい、露出羞恥モノでしか興奮できない体になってしまったのであった・・・・・・罪なTSっ娘である。

 

 ◇

 

 多少恥ずかしいことはあったものの、シュロは無事(?)に妹と暮らすアパートへと帰ってきていた。

 

「一応レベルはちゃんと上がっているっぽいから恥のかき損にはならずに済んだものの・・・・・・はあ」

 

 シュロは肩を落としながらアパートの自分の部屋のドアを開ける。

 

「ただいまー」

 

 そう言って部屋の中に入っていくとバタバタと足音がして、慌てた様子の妹のルラが走ってきた。

 

「お兄ちゃん大丈夫!? 大変なことになったって──」

 

 ルラは心配そうな顔をしていたが、シュロの姿を見るなり固まった。ポカンとした顔をしていたが、やがて口を開いて言った。

 

「もしかして・・・・・・お兄ちゃん?」

 

「うん。お兄ちゃんだよー」

 

 ルラは驚き、そのシュロの姿を上から下までしげしげと眺めていたが、やがてぱあっと表情を輝かせると

 

「かわいいー!!」

 

 そう言って抱きついてきた。

 

「うおっ! ちょ、ルラ!」

 

「えー、なになに!? お兄ちゃんすっごく可愛くなってるじゃん! なーんだ、心配して損したよ! 姿が変わって大変なことになったって聞いてたからさ!」

 

「いや、大変なことにはなってるんだよ・・・・・・」

 

「えー、でもかわいいから良くない?」

 

「良くないよ・・・・・・」

 

 ルラにとってはこのシュロの姿は琴線に触れたらしい。普段からスキンシップ多めだが、今日は特にスキンシップが激しくて、髪の毛を触って「わーすごい! さらさらだ!」とか言ったり、シュロのほっぺたを両手で持って、「すごい・・・・・・すべすべもちもちだ・・・・・・」とか言ってきたりした。

 

(全く、ルラは・・・・・・)

 

 やれやれ、とシュロは少し辟易しながらも、ルラが喜んでいる姿を見るのはやっぱり嬉しい。今までの苦労が全て消えていくようだ。パンツを見られるという苦労が・・・・・・

 

「私と同じくらいの背丈になったね!」

 

 ルラはシュロを見て、そう言って笑った。確かに、今のシュロは小学校高学年のルラと同じくらいの背丈になっている。しゃがんだりすることなしに、同じ目線っていうのはなんだか変な感じがする。

 

「なんか、兄妹だけあってけっこう私に似た感じだね!」

 

「そう?」

 

「これなら、私の服とか着れるんじゃない?」

 

「え?」

 

 言われて、シュロは気がついた。そういえば、この服はセンターからもらったやつだ。レンタルとかじゃなくて普通にくれた物だけれども、くれたのはこの一着だけだ。男の時の服はサイズが合わないから、今着れる服はこれしかないということになる。  

 

 服の問題・・・・・・それを全然考えてなかった。買うお金はないとなると、やっぱり・・・・・・

 

「あとで試着会しようね、お兄ちゃん!」

 

「・・・・・・うん」

 

 妹の服を着るしかない。兄として、かなり抵抗感はあるものの、仕方ないとシュロは渋々頷くのであった。兄としての威厳を失うことになるかもしれないと、覚悟しながら・・・・・・

 

 ・・・・・・さて。シュロは居間へと入っていく。目線がいつもより下がっているからだろう。景色がいつもとちょっと違っていて、変な感覚がした。

 

 居間のテーブルの上にノートが広げてある。どうやら、ルラは宿題をしていたようだ。

 

「お、宿題をしていたのか偉いな」

 

「えへへ・・・・・・」

 

 褒められて、ルラは嬉しそうに笑う。

 

 いつものように頭を撫でようとしたけど、小さくなっているから、いつもと違いちょっとだけ背伸びをして撫でた。

 

 ふと、シュロはルラの宿題のノートの隣に置いてある筆箱を見た。ルラの筆箱はけっこう年季が入って、ボロボロになっていた。

 

 前に、もう買い替えようと提案したことがあるのだが

 

『えー? まだ使えるし、もったいないよ!』

 

 そう言われて断られてしまった。

 

『でも、お前だってもっと新しい、かわいいやつ欲しいだろ?』

 

 シュロは食い下がったのだが

 

『もー、そんなの別にいらないよ! 今ので十分なんだから!』

 

 ルラはそう言った。けど、シュロは前にルラが最近流行りのキャラクターが描かれた筆箱を喉から手が出るほど欲しい、と言わんばかりの表情で見つめていたのを見たことがある。前に用事があって雑貨屋に寄った時にそういうふうに見ていたのを見たのだ。

 

 ルラはきっと、遠慮しているのだと思う。その筆箱は高かったし、それに筆箱を新調する余裕なんかないと思って、大丈夫だと言っているのだ。

 

(ルラ・・・・・・)

 

 ルラは相手のことを気遣えるいい子だ。シュロは、妹だからというのもあるけどただそれだけではなくて、相手のことを気遣って自分の欲しいという気持ちを押し殺してしまうようないい子でもあるから色んな物を買ってあげたいと思うのだ。だから、シュロはそんなルラのために──

 

 ピコーン

 

『ミッション ルラの耳を舐めろ』

 

 耳を舐めようと思う。

 

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