サ終を知らなかった俺は聖王様に恋をする   作:アイザナ大使

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レン・クゼくん四歳。誰にも内緒ではじめてのお使い。そして架空のおじいちゃん。
作者が阿呆だと自ずと主人公も阿呆になる。



はじめての街、はじめての嘘

 

四歳の誕生日を迎えた俺は、深夜にローブル聖王国の街の上空を飛んでいた。

(誕生日おめでとう! 俺!)

街の明かりが今ははっきり見える。

あまり近付いてはバレるのである程度距離は取る。

誕生日プレゼントとして街歩きでもしてみたいものだが、こんな肌寒い夜に幼児が一人でとなると怪しすぎる。

初めての街歩きは明日からにすることにした。

「く〜……早く行きてぇなあ」

干された洗濯物みたいな体勢をして飛んだまま、街を後にした。

 

翌朝。

礼拝堂の中に姿見を置く。

「む、むむ……よし」

鏡の中の自分を見る。顎に指を当て、体をひねった。

「イケメン……ではないな。幼児だし」

ただ、以前より背丈が伸びた。歩行も問題なし。発音もほぼ普通。

「どう見ても四歳児だな」

俺は頷いた。

今日は街へ行く。

ただ服装が問題だった。何か装備していきたいが……

アイテムボックスにあるNOX用装備はサイズ調整されたとしてもどう見ても冒険者用の高級装備。

(こんなん着て行ったら絶対目立つ)

そこで、比較的地味な茶色のローブ装備を選んだ。

そしてまだ上等さが隠しきれないので、土で少し汚す。

ぺんぺんとちっさな手で叩く。

「よし!」

あとは金。

ユグドラシル金貨には余裕がある。

この世界はユグドラシルの魔法が使えたりする。

(まぁ、カネはカネだろ)

 

ローブは羽織ったら俺に合わせて小さくなった。

俺は礼拝堂からフライで森を越え、街道から見えないところまで着陸した。

ここから徒歩だ。

(俺は普通の四歳児。普通の四歳児)

「よし」

 

門へ到着する。

簡素な検問所。

門番の男が俺を見て片眉を上げた。

「……坊主?」

(第一関門、来た)

「お使いか?」

男は笑いかける。

(その設定、いただきます!!)

「うん!」

俺は無邪気に笑った。全力の愛嬌。

「じゃあ、気を付けるんだぞ」

手を振って中へ。

(通れた通れた通れた! よっしゃあ緩すぎ!)

 

俺は顔を上げた。

初めて見る異世界の街並み。

パンの匂い、沢山の人の声、馬車に石畳に市場。

情報量が多すぎる。

人混みをスルスルと通り抜けながら、俺は市場の中へ。

売り物の魚の鱗がぴかぴかと光っている。

最近なんだかキラキラしたものに目が奪われる気がするのは気のせいであって欲しい。

俺が欲しいのは情報。

肉や野菜、果物の他に雑貨等も売られている。

市場は簡易テントのようなものがどこまでも連なっていた。

肉も魚も野菜も全部本物だ。こうまともに食料を見る機会なんてなかった。すげー。

興奮してキョロキョロしているのが目に留まったのか、パン屋らしきおばちゃんに声をかけられる。

「坊や、一人?」

「……はい」

余計なことは絶対喋るな。

「お使い?」

「はい!」

(便利だなお使い設定)

「何買いに来たんだい?」

(特に今回は何も買う予定はなくてとにかく散策したかったんだが……)

「ええと……パン?」

「疑問形じゃないか」

おばちゃんは笑った。

俺は流れでパンを買うことに。

おばちゃんの横にはたぶん、旦那さんがいた。

「これください」

柔らかそうなミルクパンを選んだ。

これなら四歳児でも食べやすい。

ユグドラシル金貨を手に乗せ、店主に差し出した。

「…………坊や」

「はい」

「これ、どこから持ってきた……? 見たことない金貨だな」

え? え? 使えないの?

てかやべーじゃん。たぶん。隠さなきゃ。

「えっ……と、……お、……おじい、ちゃんに……貰った」

視線が泳ぎまくる。必死に考えた結果。

架空のおじいちゃんを誕生させる。

「あんたのおじいちゃん何者だい?」

「……おじいちゃんは……おじいちゃん」

(知らん!! 今作ったからな!!)

(くそ、詰めが甘いぞ俺)

店主は怪しむ素振りを見せたものの、金貨は受け取らず、

「今日はいいよ」

パンを一個無償で貰った。

(何!?)

「坊や細いねえ、これも持ってきな」

二個。菓子を貰った。飴とチョコレート。

「あ、ありがとうございます」

「まぁ……いい子ね!」

瞬きして見上げると、おばちゃんはとろけたような笑顔で頭を撫でてきた。

(うっ、恥ずかしい)

「坊や、名前は? 私はマルタ。次もお菓子用意してるからおいでね」

「はい、おr……ぼ、ぼくは……久世、蓮」

「クゼ・レン? クゼって名前なの? 珍しい」

「あ、いや、ああっ……レンが名前です、間違えました」

「そう、レンくん! またね」

 

マルタおばちゃんと別れたあと、路地裏で俺はチョコレートを頬張りながら壁にもたれる。パンは懐にしまうフリをしてアイテムボックスに入れた。

「チョコ、うめぇ……じゃなくて……色々この世界の常識が分からんなぁ……なんで魔法使えるのに金貨はダメなんだ?」

自分の手のひらを見つめる。

小さい。

握って開く。

「もっと魔法も試してみたいし、街の中心にも行ってみたいな」

(透明化して色んな所へ忍び込むのも楽しそうだ。みんな幼児には優しいはずだし大人から情報収集するのもよし)

(全くちょろいぜ、大人)

最後の一口のチョコを口に押し込み、口の中で溶かしながら踵を返す。

(チョコうめぇ)

 





一年前にカルカ様御誕生してます。
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