カルカ様登場までなるべく投稿間隔を短めにしようかと思ってます
俺は酒場で冷たいジュースをちびちび飲んでいた。
そこへ、一人の農夫がやってくる。
「おい、白い山羊を見なかったか?」
「また逃げられたのかよ」
何回か同じことがあったようで酒場の男達は笑う。
「今度は首に赤い布を巻いておいたんだが……」
そこで俺はグラスから口を離す。
どこかで聞き覚えのある山羊だ。
(あれ、掲示板にあった迷い山羊じゃね?)
酒場の客達が口々に目撃情報を話すが、誰も場所は知らない。
「そうか……次を当たってくる」
農夫は諦めて別の店へ聞きに行く。
それを見届けた俺はジュースを飲み干す。
「ごちそうさま!」
「おう、気を付けて帰れよ」
(迷い山羊、か。見つけるだけでも報酬出るんだっけ)
(よし。俺が連れ帰ってきてみせよう!)
俺は北側の市場近くで山羊を探す。
「おーい、ヤギくーん」
前は市場の陰で見つけたらしいが。今回はもっと遠くにいるかもしれない。
「おい、お前!」
突然背後からそんなふうに声をかけられ、俺はゆっくりと振り返った。
五歳くらいの男の子。その後ろには少しおとなしそうな女の子。
「お前、レンだろ! マルタばあちゃんがいつも話してる!」
「そうだけど」
マルタおばちゃんの孫か?
「偏屈なじいさんと森で暮らしてるんだろ?」
「うん、まあね」
(俺のじいちゃんに失礼じゃないか。いないけど)
「俺、ニコ! こっちはエマ!」
「……よろしく?」
「山羊探してんの?」
「あー、うん……でも一人で探して報酬もらう予定だから、じゃ」
肩を掴まれる。
「俺たちも探す!」
「いや一人で」
「三人なら早いだろ! 手伝ってやるよ!」
穢れなき笑顔だった。
(ちょっと初対面にしてはディスコミュニケーション過ぎないか? 初対面だからか? 子供だからか?)
ニコは先頭を走る。
エマは道端や家の裏を覗く。
山羊の声を探そうとするが、市場は騒がしい。
(聞こえる……けど、他の動物の声も混ざってる)
それから市場から離れて住宅街、路地裏などを探し歩く。
「いないなー」
「ニコは雑なんだよ」
二人は後ろでついて歩いている。飽きてきていた。
「あ、猫」
俺が指さした方向は路地を抜けたところ。茶と白の猫と目が合う。
ふい、と横を向いて行ってしまう。
「猫行っちゃう!」
エマがそろりそろりと追いかける。
俺もそれについて行く。
「!」
猫を追いかけていたエマが突然声にならない悲鳴を上げる。
「……あそこ」
エマが見てる方向へ視線を移すと、向かいの路地に白い毛の山羊がいた。首元には赤い布。
間違いない、あれが迷い山羊だ。
「いたぁ!!」
ニコが真横で叫ぶ。
俺は耳を塞ぐ。
エマも嫌そうな顔。
山羊はその声にびっくりしたようで逃げる。
「うわっ、待て!!!」
「ニコ、走ったら余計逃げる!」
エマの声も届かずニコは大騒ぎ。
二人はぎゃー、わー、と言い合いながら山羊を追いかける。
残された俺は小さくなる二人の背中を見ながら頬を掻く。
「さて、どうしたものか」
(見つけられたのは二人のおかげでもあるけどこのままだと……)
「
二人と山羊が点に見えるまで上空へ飛ぶ。そのまま二人と一匹の追いかけっこを追跡する。
山羊の進行方向を予測し、
「
建物の角に転移し、走って来る山羊の逃げ道をゆっくり歩いて塞ぐ。
(来い!)
助走をつけた山羊は飛んだ。
一瞬だけ。
そして俺に乗っかってくる。
メェェェと鳴き声を上げ、俺の顔を舐めてべちょべちょにする。
「ぐあわあああああ」
「しっぽ振ってるよ!」
エマの声。
「助けてくれよ!」
「よかったなモテモテで」
ニコが後ろでニヤついている。
「おいで、ミロ!」
エマが両手を広げる。
メェ!と鳴き、山羊は俺の頬をもう一度舐めた。
「……」
「そうだ!」
エマはポケットからビスケットを取り出す。
「ほら、かじっていいよ!」
山羊に差し出した。
じっと見つめる山羊。メェ、と鳴く。
がぶっ、と山羊は俺の頬を甘噛みする。
「そっちじゃねえよ!」
俺は素で叫んだ。
そして飼い主である農夫の居場所を聞き、俺達は山羊を引き渡した。
農夫は喜んで銅貨を俺達に渡してくれた。
お互い礼を言い、別れたあと、俺は袋に銅貨を分けて二人に渡した。
「はい、二人の分だよ」
「俺たち何もしてないぞ!」
「一緒に探したじゃん」
「……いいの?」
エマが小さく聞いた。
「うん」
ニコが笑顔で俺の肩を叩く。
「レンはいいやつだな!」
(だって少なくとも手伝ってもらったし、ここで山分けしなかったら大人気ないでしょ)
帰り道、三人で小さい菓子を沢山買って食べる。
「ねえニコ、こっちも美味しいよ」
「どれ……おお、美味しい!」
前を歩く二人。
「明日も遊ぼうぜ! レン!」
「……明日?」
「うん!」
(いや、俺、明日も情報収集する予定なんだけど)
黙っていたせいかエマが不安げに眉を下げた。
「嫌だった?」
様子をうかがうような二人を見る。
「……嫌じゃないよ」
「じゃあ決まり!」
二人が元気よく走っていく。俺の返事ひとつで、キャッキャとはしゃいでいた。
取り残された俺は少なくなった銅貨を袋に詰めた。
そして、手元の小さな菓子を見詰める。
山羊一頭を探して銅貨少し──全てお菓子に変わった──か。
まぁ、楽しかったので許すとしよう。