サ終を知らなかった俺は聖王様に恋をする   作:アイザナ大使

8 / 8

更新遅いうえにヒロイン登場せずで申し訳ないです
お詫びのカルカ様イラスト↓

【挿絵表示】



【挿絵表示】



【挿絵表示】




正義の味方は草を食む

 

初めての依頼を達成した翌日、俺は市場に行く。

集合の約束をした訳ではないのでただそこら辺をぶらりと歩く。

「遅かったな!」

人混みの中でもはっきりとした声。

振り向くと、男の子が仁王立ちしていた。赤茶のツンツン頭に自分で切りましたみたいな短い前髪、破天荒そうな顔つき。

ニコだ。

「場所も時間も決めてないじゃん」

「俺三時間待ったぜ」

何故か自慢げに笑ってグーサインするニコ。

「そりゃご苦労」

人混みの中で忙しない足音が俺達に近付いてくる。

「わーん!」

エマの声だ。

薄灰茶色のボブを揺らして、彼女は走っている。

黄緑の丸い瞳が俺達を映すと、見開いた。

「あれっ!? 二人とも、もう来てたの!?」

そばに来て息を整えるエマ。

「僕はそこら辺歩いてただけだけど。ニコは何か三時間前から待ってたみたい」

ニコを指すと本人は歯を見せて笑う。

ふう、と最後に息を吐いたエマは一言。

「馬鹿なの?」

俺は吹き出すのを我慢して腹を押さえた。

彼女のことはよく知らないが、昨日の様子でその言葉が出てくるのがどうにもギャップで不意をつかれた。

「まぁ……お前らが先に来て寂しい思いをしないように? 俺が先回りしたってわけ」

ニコは顎に指を当てて遠くを見つめながら言った。

都合の悪いことは聞こえない仕様の耳だったらしい。

「いや、私も楽しみだったけどさ……そこまで体張らなくていいから」

そばかすを散らした頬を染め、エマは呆れながら頭を掻く。

「……で、今日の予定は?」

俺が聞くとニコが首を傾げる。

「予定、か?」

何時まで何をするのか教えて欲しい。

って仕事じゃないんだから、細かい予定とか時刻は流石に決めてないか。

「そうだな、今日は鬼ごっこ!」

「鬼ごっこ……」

(何年、何十年ぶりだろ)

 

街から外れた近くの草原。

「じゃあ〜、レンが鬼な」

ニヤニヤとニコが俺を指す。

なんの笑みだ。怪しい。

「分かった、じゃあ──」

風のようにニコは走って行ってしまう。

「あっ……えっと、ばいばいレン」

エマも後を追う。

二人とも、幼児にしては足が速い。

「……普通に走ったらどうなんだろ。まあ、体四歳児だし……」

身を低くして、走り出した。

草が揺れて大きく風が巻き起こったところで俺は足を止めた。落ち葉や木の枝が舞って俺の頭に乗る。

「こりゃ駄目だな。調整が必要だ」

最初は歩く、ゆっくりゆっくり速度を上げていく。

「このくらいかな」

二人は別方向で逃げている。

まずはニコから。

背後に回り、背中に触れた。

「はい、捕まえた」

「うわっ、え!?」

エマも追いかける。彼女はニコより少し足が速い。

木を三本蛇行して避ける。まるで忍者だ。

「へぇ……」

エマの軽い身のこなしに思わず感嘆が漏れた。

それを追いかける。

もう少しで届きそうなのに離れる。

指先を伸ばす。そして背中につん。

「エマも捕まえた」

「ええっ! あんなに離れてたのに!?」

エマは目を見開く。

「レン、鈍臭いと思ってたのに!」

悔しそうにするニコ。

(しまった……次はもっと遅くするか)

 

もう一回俺が鬼をすることになった。

今度は手加減しないと。あくまで子供の遊びなんだから。

さっきより二段階程緩く走る。

「おいおい、俺のじいちゃんより遅いぜ〜?」

と、笑いながら逃げるニコ。

「お前のじいちゃん元気だな!」

俺は手を伸ばす。ひょいと避けられる。

「ふへへ!」

ニコは気分が良さそうだ。

「ニコ、レンをいじめるのやめなよ……」

エマも前を走っている。

そうだそうだ。一応年下なんだからな俺は。

それから数分走って、追いかけっこというより三人でジョギングしてるみたいになってきた。

「なぁー、このままじゃ埒が明かない。他の遊びしよう」

「いいね!」

エマが振り返る。

「ええっ……俺まだまだいけるのに」

「私たちはニコみたいに体力ないんだから」

三人で立ち止まり、木陰で休む。

ニコが大の字になる。

「疲れたー!」

エマと俺はニコを挟むように座った。

大の字になったニコは虫みたいに手足を動かす。

「何してんの気持ち悪い」

エマがニコの額をぺちんと叩いた。

「お前いつも思うけど言葉がチクチクしてるな!」

ニコは起き上がってあぐらをかく。

(俺、何してんだろ……こんな子供に混ざって……)

ふと、ニコを見る。

泥のついた頬。心底楽しそうな笑顔。

「レン、楽しかった?」

「うん」

「次はままごとしよう?」

「じゃあ俺は正義の味方──をうち倒すべくアンデッドを従える悪の騎士!」

ニコが足を開いて手を広げ立ち上がった。

「悪役好きだねー」

エマがいつものことのように目を細める。

「じゃあ、僕は正義の味方──のピンチの時にだけ助けに入る謎の魔法詠唱者で」

腕を組んで片手を額に当て、俺も仁王立ちした。

「誰が正義の味方やるの?」

「それは……」

ニコがピュー、と口笛を吹く。

草むらから白い山羊がトコトコ歩いてくる。

「ミロ連れてきてたの?」

エマが驚く。

「ねえ、なんでエマはミロの名前知ってたの?」

俺が聞くと、エマは苦笑いする。

「飼い主のおじちゃんがお父さんの知り合いの人でね、赤ちゃんの頃から農場に入れてもらってて」

「ほら、赤マフラーしてて、完全に正義の味方だろ!」

ニコは離れた木に括り付けていた紐を、木陰で休んでいた木の幹に縛り直す。

「っと、聖剣も持たせないとな」

ニコはどう見ても適当な木の棒をミロの首元、背中側の赤い布に差している。

木の棒を背負った赤マフラーの山羊爆誕。

「じゃあ私は正義の味方──聖騎士ミロの仲間の信仰系魔法詠唱者で」

葉っぱのついた木の枝を手に持ち、満面の笑みでエマは言った。

「聖騎士か! かっこいいなあ、ミロ!」

わしゃわしゃとミロを撫で回すニコ。

ミロは地面の草を食べている。

こほん、と咳払いするエマ。そして、手を広げて大きく声を出した。

「じゃあ、みんな配置について!」

 

夕方頃、俺は礼拝堂へと帰宅していた。

泥のついた服を綺麗にする。

「清潔(クリーン)」

ままごとは途中から熱が入り過ぎた。

そして、最後は暴れ回る聖騎士を皆で追いかけ回し、さんざんだった。

本当に大変だった。

あんなに馬鹿みたいにはしゃいで遊んだのはいつぶりだろうか。そもそもないような気がする。

後半はなんかもう役とか関係なくしっちゃかめっちゃかで何の遊びだったのかそもそも遊びと意識していたのか分からなかった。

なのに、楽しかったと思うのは、やはり体に精神が引っ張られているのだろうか。

 





Xの相互のフォロワーさんがカルカ様最推しで、この方になら需要あるかなと書き始め、今ではほぼ自己満の小説なのに、こんなに見てくれる方がいるとは思いませんでした。とても嬉しいです°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
感想やここ好き大歓迎です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(必須:5文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

オーバーロードはダークエルフになりました(作者:トドロ)(原作:オーバーロード)

シャルティアとかアルベドはあったけどアウラってないなと思って作った妄想の産物▼モモンガ様が成長したアウラの姿で冒険するだけの話▼※モモンガ様強化要素があります


総合評価:491/評価:7.69/連載:11話/更新日時:2026年10月18日(日) 17:01 小説情報

至高の四十二人目 "クウラ"(作者:とっとこDIO)(原作:オーバーロード)

世界を熱狂させたDMMO-RPG【Yggdrasil】▼そのYggdrasilにあるワールドエネミーが現れる。▼宇宙最強の帝王『クウラ』▼ゲーム内に存在するどのワールドエネミーよりも強力で使われているAIも優秀ととてもプレイヤーが倒す事を想定されていない程ど怪物。▼だがある時そのクウラを倒し、自らが新たなクウラとなったプレイヤーがいた。彼はギルド《アインズ・…


総合評価:18/評価:-.--/連載:1話/更新日時:2026年10月17日(土) 21:24 小説情報

オーバーロード シャルティアになった一般人、洗脳ルートだけは全力で回避する(作者:あかちゅきぼちゃん)(原作:オーバーロード)

ナザリック地下大墳墓が新世界へ転移したその瞬間、ひとりの一般人は目を覚ました。▼しかもその身体は、第一〜第三階層守護者シャルティア・ブラッドフォールン。▼アニメ版の流れを知る主人公は、自分がいずれ世界級アイテムによって洗脳され、主であるアインズと殺し合う未来を思い出して絶望する。▼中身が一般人だとバレれば終わり。けれど、残虐な吸血鬼を自然に演じられるほど肝も…


総合評価:1224/評価:7.4/連載:7話/更新日時:2026年07月04日(土) 21:17 小説情報

選択内容全部S(作者:青林)(原作:オーバーロード)

「あなたの分身がオーバーロード世界にいたら」の六つの選択内容が全部Sの主人公を妄想した二次創作。▼作中の設定や諸々に妄想が入ってるので苦手な方はブラウザバック推奨です。▼「あなたの分身がオーバーロード世界にいたら」▼https://overlord-anime.com/_season4/10th-anniv/▼タグ追加 9/5


総合評価:3914/評価:8.65/連載:3話/更新日時:2026年09月07日(月) 06:36 小説情報

オーバーロード〜約束の指輪〜(作者:愛飢夫)(原作:オーバーロード)

プロゲーマー兼ゲームプレイ動画配信者として活躍していたオリ主が色々あって転生。▼なんやかんやあって当時の恋人も同じ世界に転生していることを知って再び出会うためにあれやこれやと大騒ぎするお話。▼去年?一昨年?書いてたやつです。▼リメイクではなくリバイバルなので基本ほとんど変わりません。誤字は減ればいいな。


総合評価:636/評価:8.3/連載:53話/更新日時:2026年10月22日(木) 16:10 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>