美樹さんの対処に失敗した。正確に言えば、美樹さんが契約する理由を大きくしてしまった。
これは嫉妬と怒りだ。無個性でありながら、天才バイオリニストと呼ばれる上条恭介。個性という才は持っていたが、それが評価されるのは、ヒーロー科に入り、個性の使用許可が降りた場合だ。
事故で失ったのが、腕一本、見た目なら五体満足、昨日は四体。だけど、心臓はともかくとして、髪を、足を、両手を、頭を、グリーフシードを利用しなければ、利用しても二か月の延命がやっとな僕。
この世は理不尽だ。時間がある分、待つという選択もあるのに、今はなくとも二年後には腕も治るかもしれないのに。なんで諦める考えになる。
諦めなかったから、フランスで拾ったグリーフシードが呼応したのかもしれない、ほぼ死者のゾンビに近い今の僕とじゃ、何もかもが違う。
「生きているだけ、十分だと思うんだけどな」
はぁ……一旦帰らないと、それに、杏子がホームレスだからその対応と、臥煙さん手続きしておいてよ、中学の編入とかさ、どうせ死ぬから保険金は少し無駄に使えるから、杏子に、スマホは買ってあげられる。編入手続きとかは後でくる専門家の誰かに聞こ……そういや真面目に大学卒業してたの一人だけだったな。終わってるだ専門家、まぁ、死者蘇生の禁術に手を出したんだから当たり前かな?
後は美国織莉子、政治家の汚職で自殺なら、美国織莉子がそのまま家にいる可能性は低い……いや、未成年ならそう簡単に家も借りれない、つまり、拠点は変わっていない。味方につけられるなら相当な利点だな。
未来視の魔法少女。未来視というのはどこまで視える。僕の動向も視れるのか?それなら交渉は早くなるだろうし。どっちにしろ杏子が返ってくるまでまつしかないのか。
「おい、」
「あ、早かったね」
病院からの帰り道、杏子が戻ってきた。
「早いも何も、家の確認だけだからな、そっちは?」
「失敗しました。本人にとっては大きな不幸でも、僕にとっては小さい不幸だったからね、少しキレて病院を出禁になりました」
「お前、大人っぽいと感じてたがそうでもないんだな」
「大人っぽくなったのは延命に使われた、魔法少女の精神でしょうね、同じ第二次性徴期でも、昔と今じゃ、成人年齢は違いますから」
「お前、事故で残ってた部分ってなんなんだ?」
「胴体だけですね、心臓はたまたまですが、手も足も頭も焼き溶けました」
心臓は多分補強だろう、それ以外は事故で溶けた。タンクローリーに引火して、木材が燃料となって、コンクリートに埋まらなかっただけました。
「なんで普通にしてんだよ」
「それは多分、心臓移植に使った魔法少女の精神ですね、ちょうどいい、インキュベータ、僕の延命に使われているグリーフシードはドンナ人達だったんですか?」
「君は感がいいからあまり近づきたくなかったんだけど……フランス、オルレアン、百年戦争、魔女狩り、後はわかるんじゃないんかな?」
「ジャンヌ・ダルクですか、」
「そう、当時はタルトと名乗っていたけどね」
「どうりで、炎は怖いと感じながら、痛いとは感じないわけです。では、他の部位は?」
「エリザ・ツェリスカ、メリッサ・ド・ヴィニョル、リズ・ホークウッド、ペレネル・フラメル」
「ホークウッドは知りませんが。ツェリスカ家、ヴィニョル家、フラメル家は旅行のときに見ましたね、まさかそんな大御所も魔法少女とは、」
どれも歴史に名を残す家じゃないですか、因果律が魔法少女の才能といいますが、流石ですね。
「知らなかったのかい?」
「僕は何でも知っているわけではないですよ?知っていることだけです」
「そうかい?にしては、随分とボク達の邪魔をしてるけど」
「それは上々、計画が進んでいることを実感します」
続きは明日からですね。