人見さん、朱音さん、佐木さん、優木沙々の四人が死んだ夜、鹿目さんを殺そうとする、美国織莉子と呉キリカと対峙していた。
僕一人ではなく、暁美さんと杏子に協力を仰いで。
巴さんは美樹さんに戦い方を教えている。
一番最初に動いたのは呉キリカだった。速度に関係する魔法らしい。でもその攻撃は誰にも届かなかった。それどころか僕達は間に合わなかった。呉キリカに向かって一直線に落ちる、膝蹴りを防ぐことに。
「始めましてやな、忍接臥くん。影縫余弦や、よろしゅうな」
「え、あ、はい」
「ところでこの辺に手頃な廃墟ってあるか?できればそっちで戦いたいんやけど」
「アッチ側に……」
「ほな、美国織莉子、ちゅたか?一緒に来てもらうで。それと、半分不死身みたいなもんだから無事だと思うけど、この子のこと頼んだで」
そう言って、影縫さんは、美国織莉子を連れて廃ビルに入っていった。足蹴にされていた呉キリカは気絶している。なお、この中に回復が得意な人間は一人だけで、今後使えなくなる可能性が高い僕の、九尾と狐耳が該当する、稲荷の豊穣の力である。
対して、影縫さんのほうはと言うと。
「なぁ、おどれなんで鹿目まどかを狙ったん?まぁ、ウチも敵と決めれば速攻で潰しに行くから人のこと言えないけど」
「鹿目まどかが魔女になれば、世界を滅ぼす厄災になる。だからそうなる前に、契約する前に殺す」
「ふ〜ん、ま、言いたいことはわかったわ。でもな、それは受け入れんわ。殴るで」
ビルの天井二つ分を貫いて美国織莉子を殴り飛ばした影縫余弦。これで無個性と言うのだから末恐ろしい。
「少なくとも、あの子は自分の意志で魔法少女にならない選択肢を取っている、それが今後変わるかもしれん言うのは納得できるで、でもな、それに周りの大人は納得するんか?」
殴り飛ばし、蹴り飛ばし。魔法少女でなければすでに死んでるような攻撃を繰り返す。血だらけになりながら、既に抵抗する余力もない美国織莉子を蹴飛ばして、転がして、畳み掛ける。
「あの娘を育てた親にとっては、理不尽に奪われた宝とちゃうんか?世界を天秤にかけても、子供を愛するのが親やろ、それに納得できんくても、そんな考えを持つ人間は居るんやで」
「で、でも!」
今度は踵落としで一階下に叩き落とされる。
「おどれのゆうとることは、自分の意見と自分の気持ちだけやないか!誰もがおどれみたいな合理的な人間や思うなよ!」
「おどれがどんな価値観持とうと、どんな正義感持とうと勝手やけれど——そんな未来を他人に押し付けんなや!」
還付なきまでに、ボコボコに、やり過ぎなくらいに、美国織莉子は惨敗した。魔法少女でも、ましてや個性すらも持っていない人間に、魔法少女は敗北した。
「終わったで」
「貴方は、何者なんですか?」
「ん?君が忍野くんの担当かいな、ま、うちらは専門家や。怪異の専門家。やりすぎがないように死なない不死身を相手取ってるけど、今日はやりすぎたわ。それと、忍接臥くん、ちょっといいか?」
「まぁ、はい」
影縫さんは、暁美さんを、一瞥した後に僕に二人きりで話をしたいと、場所を変えた。
「さて、殺したんやって?魔法少女を、魔法少女を魔女を使って殺していた魔法少女を、責へんで、殺人鬼殺したら褒められるやろ、それに近い。それでいまどこまで使えるん?」
「炎はほとんど使えません、魔女纏を使えばなんとか」
「やっぱりやな、本当は正弦くんのほうが合ってるんやけれど、もう個性はつかうなよ?もともと、燃え尽きたどころやない、焚き火を横合いから蹴飛ばされて、書き換えされそうになった灯火にグリーフシードっちゅう薪を無理くりにくべてるんや、もともと忍接臥くんが持っていた物は使えなくなっても可笑しくない。それどころか、くべた薪も魔法少女の残滓みたいなちっこいもんや、魔女纏なんて多用したらそれこそ一月で死ぬで」
「はい、」
「それと、うちはあんまり納得してないけれど、魔法少女達の拠り所に忍接臥くんが抜擢された」
「でも、」
「二カ月も持たないかもしれないは、なしや。誘導はうち等専門家がやる、だから、必ず破局する恋物語を続けるんや。織莉子ちゃんは、父を失ったことから魔法少女になった。その代わりが必要や、世界を救うなんてもんは大人が背負うべきや、子供は恋でもしてればいい」
「なら、なおさら」
「終わると分かっている恋やから、必要なんや。諦めがつく、踏ん切りがつくやろ?そうすれば、前にも進めるようになる」
「はい、」
「そんじゃあ、キリカちゃんのほうも手伝わんとな」