気絶した美国さんを運ぶのは、なんでか知らないけれど僕だった。まぁ、影縫さんはこういうことしないよねうん、なんで美国さんよりも身長の低い僕が運んでいるのかって?尻尾があれば身長はカバーできるし、何より、今僕が背負っていれば、呉キリカは人質と感じて何もできないからだ。
「接ぎ接ぎのお兄ちゃん、変わろうか?」
「影縫さんの足場でしょ斧乃木ちゃんは」
「そうだね、」
「そうそう、それと、臥煙先輩から二人に渡しておけって言われたんがあったわ」
「?」
「佐倉ちゃんと美国ちゃんにな」
影縫さんがくれたのは、見滝原中学への編入手続き書の保護者欄、および保証人に名前が書かれたものだった。
もちろん名前は臥煙さんじゃない、のんで余正木家の定義なんですか、
「これは?」
「佐倉ちゃんは学校通ってへんやろ?で、織莉子ちゃんの方は、親の不祥事もあって肩身狭いやろうからって。佐倉ちゃんは家族心中で亡くなったことになっとったから、生存手続きもしたある。全部臥煙先輩なりのフォローや」
「なるほど、それで杏子の家族欄に僕の名前があるわけですか」
「せやで、ウチは学校には行ったほうがいい派やからな、忍野くもんも貝木くんも途中で大学やめてったさかい、まぁ、青春は楽しむもんやで」
「ありがとうございます」
「おはようございます、織莉子さん。ところで、呉さんの説得をしてくれませんか?さっきから殺気をぶつけてくるんですが」
「キリカ、大丈夫よ」
「……わかった」
美国さんのひとことで、呉さんは落ち着いたけど、暁美さんは駄目ですね、美国さんを警戒している気がします。まぁ影縫さんがいるので今は警戒を解いてもいいんですが、
「それで、今どこに向かってんねん」
「美樹さんのところですね、回復魔法が得意なので、というか、影縫さん、やりすぎですよ。魔法少女はソウルジェムが破壊されない限り死にませんけど、消して不死身ではないんですから」
「ちょっと撫でただけなんやけどな、ま、貝木くんはまだ来るのが遅れるからええとして。しれっと言っとったけどこの場におるんは魔法少女の事実について知っとるんやな」
「ええ、杏子には僕から、他の三人はどうやって知ったかわかりませんけど」
「私は未来視でそれを知って、キリカに教えたわ」
「……」
暁美さんは話してくれなかったが、まぁ臥煙さんなら知っているだろうし、アロハが対応するなら問題ないだろう。
「今から会いに行くんのはええけどその子たちは知っとるん?」
「知らないですよ、」
「ま、そうやろうな。ウチがはよに来れたんはひとえに美国ちゃんが知ってたからやし」
下手に真実を知らせてしまえば、絶望して魔女化や自殺に走るかもしれない。だから、いつも後手に後手にと遅れてしまうと、専門家は結論付けて、今までは監視というか、傍観していたのだ。
だから、魔法少女に近づける人間で、それでいて、ある程度自分で戦える強さが必要な、専門家が必要だったわけだ。
もちろん僕はセミプロどころか素人だ。知っていることは魔法少女のことだけ。ただし、個人個人については除く。
「じゃぁ、私達が今許されてるのも、貴方のおかげなんですか?」
「それと、美国さん、下手に出なくてもいいですよ」
「負けた人間が何か言う権利はないわよ」
「それでもです、それにしても、影縫さんから何処まで聞いたんですか?貴方のおかげって、美国さんに関しては僕は何もしてないですよ」
「忍接臥くん、今聞くこととちゃうで、本人にも考える時間は必要や。自分の正義がなくなったときは特にな、指針がなくなれば迷いやすくもなる。せやけどまぁ、お前さんがいなかったら、魔法少女の苦しみは増えてたかもな」
「増えてませんよ、きっと。それどころか、救おうとしている今だから苦しいくなっている人もいるお思いますよ。ところで、影縫さんは迷わないんですか?複数の選択肢にたいして、失敗して三人。そのあと自分から一人」
「迷うこと……無いよ大人やから。でも、スーサイドマスターが病気でポックリ逝ったときは、気分が乗らなかったで」
「万回死んも生きるからこそ、影縫さんが手加減する必要も、ないですからね」
「人間は化物になってしまえばおしまいだ。特にお前さんは人であろうとしないと、崩れてしまう。だから、どんな結末になっても胸を張れる選択肢を選ぶんやな」
「はい、」
魔法少女の訓練をやっていた、美樹さんとはあまり会話したくないけれど、美国さんの回復を頼む。
「そや、後二週間後にワルプルギスが来るのは知ってるな?」
「はい、」
「元ハートアンダーブレードが来るで、まぁ世界滅亡級の怪異が相手やから、元である必要性もない、どっちにしろ、魔法少女が戦う機会は少ないで」
「専門家が戦うんですか?」
「そや、ただ、倒すことが目的やあれへん。そこは覚えときや」
「はい、」