「………………」
不味いな、睡眠時間が増えてる。
九時、もう学校は始まってるし、何なら食費も上がった。杏子は美国さんの家に行ってもらった。流石に、この家には置けない……性欲増強はされてない。
これはいいとも言えないし、悪いとも言えない。生きるのに必死だな。二日前に影縫さんとの会話で明確に死期が気付いたからかな。
睡眠欲、食欲、性欲。本来、死者に、怪異には必要ないものだ。まぁ伝承に食事があるなら積極的に、伝承どうりに食べるんだろうけど、僕の場合は、延命期間を増やすための行動だな。
性欲が増えてないのが謎だけど……遅刻か、今日は学校行けって巴さんに言われてたのに。
今日は杏子と美国さんの転入だ。だから、色と言われたけどさ、弁当は昨日の……食べきったんだった。
「行かないと……あ、メールだ……同時タイミングか……、正直ありがたいね、全員真実を知った状態なら僕も楽になる。詐欺師とアロハ。影縫さんより怪しさ満点だね」
臥煙さんから今日の夕刻に忍野さんと貝木さんが来るというメールが届いた。いくら使ったんだろう、現人神を騙す時は310万だったらしいけど。でもって忍野さんが担当した吸血鬼は500万……魔法少女ってどれくらいなんだろう。
「あ、来た」
「遅いぞ」
「すいません、寝坊しました」
ぐだぐだと考えていたら、すぐに学校に着いた。杏子はまぁすでに魔法少女同士で話しているから大丈夫ですよね。
「それと、詐欺師とアロハが来るので、明日開けておいてください」
「わかったわ、」
「……」
「なんで犯罪者なの?」
「犯罪者、確かに詐欺は犯罪ですが、詐欺師だから、救えるものと言うのがありますからね、それにその詐欺師。現人神ですら騙してみせますから」
ちょうど本一冊分になる詐欺師と現人神の物語。
さて、今日中に、話をつけますか。巴さんの方は、早くにやって損はない。
遅れた授業分は、鹿目さんにノートを借りて、何とか覚えて、昼休み。何と言うか、予想できてたわけだけど。巴さんと美国さんに捕まった。
「お昼食べるわよ」
「いきましょう」
「はい、」
呉さんはすでに屋上にいた。みんなでお昼を食べていると、そう言えば三年生の巴さん、美国さん、呉さんには、専門家がくること伝えてないことに気づく。
「暁美さんたちには言ったんですけど、明日アロハと詐欺師がくるから空けておいてください」
「そう、」
「詐欺師、ねぇ」
「ええ、専門家としての腕は確かですよ」
「それならいいけど……」
「では、美国さん、少し手伝ってください。暁美さんと杏子は、美樹さんを見ててください。鹿目さん、明日、というわけではないですが、多分専門家の誰かしらが貴方と話すと思います。覚悟をしておいてください」
放課後、美国さんの未来視を使いながら、巴さんに魔女化の事を伝える。
「まって、魔法少女が魔女になる?魔女は、魔法少女だった?」
「はい、」
「そうよ、」
「じゃぁ、じゃぁ……私達のやってきたことって」
手が震えている。穢れは肩代わりしてるけど、精神が安定していない。これ以上は……
「巴マミ、貴方にとって魔法少女とは何?人を救うこと?魔女を倒すこと?」
「わた、しは、魔女を倒すことで助けられって、だから……なのに、魔女が魔法少女なら……人殺しじゃない!」
「余正木くん!」
「わかってます!」
ソウルジェムの穢れが一際増えたところで、魔女纏を発動させる。穢れを使い、魔女化することで、穢れを消費する。問題は、改めて見せる、間近で見せる。もとに戻るとはいえ人の魔女化に耐えられるかどうか。
「う、あ、ああ!あァぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ!!!!」
獅子の顔のした、アイアン・メイデンのようなグローブに両手が変わる。魔女化はこれで防げる。あとは、あとは…
「まったく、元気いいなぁ。何かいことでもあったのかい?」
「あ…」
マミさんがふらりと倒れる。後ろには、忍野さんがいた。
くるのは明日って言ってなかったけ?
臥煙さんの送られてきた写真と同じ、アロハ金髪、胡散臭いおっさんが、巴さんを気絶させた。
「まったく、泣いている女の子に無理を言っても無駄だよ。ともかく、次起きても穢れはたまらないから、そこからは君の仕事だ」
「……なんで、専門家は、貴方達は、僕を軸にするんですか?」
「終わるまで必要な柱が、君しかいないからだね。君へ依存するように仕向けるのはバランスが悪いけど、もともと代償なしに蘇っているんだ、この程度差にもならない」
「代償が無いって…その分、延命も短いですよ」
気絶した巴さんを背中に預けて。忍野さんと話をする。
「悪いけど僕は寝るよ、さすがに徹夜での移動はキツイからね。それと、明日はそこの令嬢ちゃんと一緒にいるんだね」
令嬢ちゃん、美国さんのことかな?政治家の娘だし。
「僕は人の名前を覚えるのが苦手でね、まぁだからお休み、余正木くん」
「はい…」
去っていった忍野さん、あとは、巴さんが起きた後どうするかだ。
「ん、んん…」
「あ、起きた」
「余正木くん?」
「はい、」
「私は……」
「さっきの件ですが、あと一ヶ月と二週間待ってください。魔女化はそれで終わりです」
「え?でもそれって……」
「はい、僕の余命ですね」
「なんで…」
「もとより、魔法少女に助けられた命ですからね、恩を返そうと思っただけです。それよりも、話してくれませんか?」
抱きついたままの巴さんに、離れてもらうように促すと。
「忍接臥くん、」
「何ですか?美国さん」
「寂しいのよ、巴さんは、魔女になることを理由に離れていくんじゃないかって、」
「……離れませんよ、一ヶ月と二週間後までは」
「「…………」」
「壁、感じてたんでしょう?ええ、実際に貴方たちと関わるときは壁を作っています、僕の素は全然違いますから……でも決して嫌いなんじゃないんです。助けたいと思った人たちに傷をつけたくないから、僕がいなくてもいいように距離を離していたんですが……どうやら、それは難しいみたいなので。ねぇ、マミさん、織莉子さん。まだ無茶しますけど、手伝ってくれますか?」
「手伝うわよ、困っている人を助けるのが魔法少女だもの」
「私も賛成ね、世界は滅ばさせないわ」
「では、改めて、よろしくお願いします」