「元気いいなぁ、暁美ちゃんは、何かいいことでもあったのかい?」
「……何が言いたいんですか?」
「いや、なに。ちょっとね、臥煙先輩から頼まれたから君の説得をしようってことだよ」
「説得ですって?」
「ああ、時渡りの魔法少女、暁美ほむら。君は一つ大きな勘違いをしている」
「勘違い……」
「本題にはいる前に、一応聞こうか、君は何を願って魔法少女になったんだい?」
貝木さんを、美樹さんのところへ送り届けた後、急いで戻ってこれば、忍野さんの説得が始まった。
「私は……」
「言いたくないのかい?なら、他の人は外したほうがいいかい?」
「鹿目まどか、佐倉杏子、巴マミ、呉キリカは聞かないで」
「だそうだよ、四人は別のところへ行ってくれ」
鹿目さん、杏子、マミさん、呉さんがこの場を離れる。暁美さんが魔法少女になった理由。時を渡り続ける理由が、明かされる。
「私は『鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守る私になりたい』そうやって魔法少女になった。鹿目まどかを助けるために、時を超えた、やりなおしてきた!」
「なるほど、わかった。それじゃぁ一つ目だ。君は鹿目ちゃんを助けられない、当たり前だ。だって君は守ることを願ったからね。やり直すたびに守る。守り切ることはできず、助けることもできない。それがそういう願いだからだ。
それとね、ひとは一人で勝手に助かるだけ。 誰かが、誰かを助けるなんてことはできないんだよ」
「それでも私は!」
人は一人で勝手に助かるだけ。忍野さんなりの、考えなんだろう。忍野さんは中立だ。善も悪も全くない。たとえ世界が滅びるレベルの力を持っていたとしても、害がなければ放って置くし、手助けもする。でも、助けてはくれない。
暁美さんは、自分のやってきたことを否定されたと感じて、叫んだが、本題はそこではなかった。
「じゃぁ、二つ目だ。君は時間旅行について大きな間違いをしていると思う。
時間旅行によって運命を変えることは絶対にできないという、はっきりした現実だ。
君が他の魔法少女と良好な関係を築いて、鹿目ちゃんを救おうと決心した。契約した世界をルートAとして、この魔法少女だけじゃなく、個性や君の知らない専門家達が関わってきた世界をルートXとしようか。
君はルートAの過去へ、一ヶ月前の過去に飛ぶつもりでワープしたのだろう。
しかし、君がワープした先は、ルートAの一ヶ月前ではなく、ルートXの一ヶ月前だった。
もちろん、組が繰り返してきたのは、ルートAから、ルートXという直接的なものではなくて、間にいくつかの世界を挟んだうえで、たどり着いたことなんだろうけどね」
タイムパラドックス。タイムトラベル、時間移動などによって過去や未来へ干渉した結果、原因と結果のつながり、因果関係に矛盾が生じる現象のことを指す。
「じゃぁ、私のやってきたことは無駄だったの?!」
「そうは言ってないさ。君が繰り返してきた時間が、飛び越えてきた世界が。鹿目ちゃんを起点にしていたおかげで、莫大な因果律、世界を書き換えられるだけの願いを叶えられる量になったんだ。
言い方悪く利用だね。結局、僕等専門家は、魔法少女救う方法に対して、専門家内で完結することはできなかった。それこそ、今回の計画だって君が世界を飛び越えてなきゃできなかった方法だ」
「……」
「たった一人いないだけで、世界は滅ぶことだってある。逆に十人いなきゃ世界は滅ばないかもしれない。けど、その十人だって、たった一人欠けたら、残りの九人すら集まらなかったという可能性だってある」
「違う!私はまどかを……」
「ま、君がどんな考え持とうが僕の責任じゃない、君が僕達のことを信用しなくてもいい、攻撃すれば対処するだけだ。既にお金は頂いているからね、」
直接的に救うなんてことは絶対にしない。だから、暁美さんは事実を知っただけ。そこに、鹿目さんを殺そうとしていた織莉子さんが声をかける。
「暁美さん…」
「黙りなさい!」
振り向きざまに、発砲をする暁美さん。僕はそれを、最近使わなかった、龍の方の力でとめる。
「霊峰・雨降」
白い枝角と、同じく白い龍尾。異形系個性の三分の一を担う。高龗神が元ネタの。雨を操る個性。
銃弾は、水中を突破できない。
雨を呼んでおいて正解だった。
「おいおい。余正木くん、雨の操作はあまりやらないでくれよ?神頼みとかじゃなくて、無理くりに人間のエゴで変えるなんて、他の空が大変なことになるよ」
「なるほど、忍野さんありがとうございます」
「ん?なんでだい?」
「こっちが有利だということが分かりました」
「バランサーであることが裏目に出たね」
僕の雨乞いと水操作を止めに入るということは、それを使うと、暁美さんは確実に勝てないということを指す。まぁ、もともと引き込んでいたのは結構あるから、雨乞いは解除していいけどね。
「なんで、守るの?」
「必要だからですよ。誰もが幸せになんて、ばかげたことはいいませんけど、幸せになる人間は多いほうがいいでしょう」
「余正木くん、私も戦うわ」
「臨界・籠目」
「っ!」
「織莉子さんは下がってください。時止めは防げないので」
火柱を作り、織莉子さんの周りを囲む。
暁美さんが持つ魔法の一番厄介な部分は時止めだ。光と音は止められない可能性が高いが、これも予想だし。残念なことに、その手の技は持っていない。
「紙手裏剣」
「あなた、どれだけ能力を持っているの?」
「どれだけ、ですか、七種類でしたかね、まぁ今は使えない技もありますけど。それに、忍野さんは他人を救えないって言いますけどね、それは忍野さんの理念で、僕は救えると思いますよ。たとえ、どれだけ惨めでも、愚かでも。それを背負う覚悟がある人間は、称賛しますよ。その傷を、想いを背負う覚悟があるのなら、協力します」
「それを信用すると思ってるの?美国織莉子をかばうあなたを、まどかを殺そうとした人をかばうあなたを」
「鹿目さんを守って、織莉子さんも守って、貴方も救います。傲慢だろうと、それが僕にできる恩返しです」
「恩返しなのは私も同じよ!」
「そうですか。互いの思いに、互いが納得しないなら、あとはエゴの押しつけ合いだ。魔法少女はソウルジェムが砕けなければ死なないん。腕もらいます」
狐の尾で四肢を縛り。不死殺しの怪力で。左腕の肩関節を叩く。
「手加減したので外れても、ちぎれることはないですけど、これで時止めは使えませんよね」
「これでどうやって私を救うのよ」
「僕が救うのは魔法少女です。暁美ほむらを救うのは、鹿目さんです」
「え?」
「ほむらちゃん!」
「なんで、話は聞いてないはずじゃ」
「忍野さんが伝えたようですね。バランサーと言いながら、御人好しですからねあの人。噂ではロリコンとか……まぁそのへんはいいですけど」
「嫌だ、もう、助けられるつもりなんてない!」
無理やりに、脱臼した左肩を治して、その場から消えた。
時止めで逃げられましたか。
「ほむらちゃんは…」
「逃げたんでしょうね、ただ、別世界に行かれるのは困ります、鹿目さんの因果律は暁美さんが絡めているものですから、暁美さんがこの世界をされば、計画そのものが頓挫します」
「……まどか、鹿目さんじゃなくて、まどか」
「余命、わかってるんですか?」
「知ってるよ、でも、今はほむらちゃんが優先。ほむらちゃんに酷いことしたんだから、私のお願いも聞いて」
「分かりました。なら、まどかさん、暁美さんをお願いします」
「わかった」