「交通事故で死にかけたってのに、生きそこねのたと言うにふさわしいのに、こうやって戦いに身を投じている。矛盾していると思わないかい?時渡りの魔法少女、暁美ほむら」
「貴女は、何者なの?」
急に、こんな会話があっても入ってこれない人間もいることだろう。こんなことになるまでに、夕暮れの黄昏時に、死臭のする薔薇園での会話をする数時間前。朝のHome Roomまで遡る。
「皆さん、目玉焼きは堅焼きですか?それとも半熟ですか?はい!中沢くん!」
「えぇ!?えっと...どっちでもいいんじゃ」
「そう!その通り!どっちでもいいんです!」
現在僕が住んでいる街、見滝原市にある見滝原中学校のHome Room。たまに、というか大きな確率で、担任の早乙女和子の失恋愚痴につきあわされる。どちらでもいい、ささいな喧嘩で、分かれているのだから、もうあきらめろとも言いたい。
「女子の皆さんは目玉焼きの焼き加減にケチをつける男性を選ばないように!そして男子の皆さんは決して目玉焼きの焼き加減にケチをつけないように!」
ケチをつける人間には、皿を出す必要すらないと思う。働かざる者食うべからず、少し違うな。まぁ文句を言うなら自分で作ればいいだろう。
「あと転校生を紹介します」
そっちが本命だろ、なんでついでみたいにに言ってるんだ。転校生も理不尽だな、こんな茶番に巻き込まれるんだから。
「暁美さん、」
黒髪ロングこ少女、中学校なのだから少女でいいはずだ。僕の周りの人間は、8歳はまでは幼女、十一歳までは少女、十二歳からは童女と呼ぶ。中学校二年生の春頃なので、童女でもいい。まぁ少女は未成年で統括できるから、最初に出した少女でも間違いはない。
だが、心臓が、髪が、足が、両手が、頭が、彼女の正体を伝える。希望を運び、いずれ呪いを振りまくものであると。
「魔法少女、ね。怪異よりもたちが悪いな、ましてや、インキュベータ、孵卵器だなんて」
この時はすでに、魔法少女も魔女も知っていた。事情聴取から解放されたあとに、怪奇的な事柄の専門家が来たのだ。その人から僕の余命宣言もなされた。だから、少しは自分なりに、自分の思う道を歩いてみようと思う。
そうして僕は、その日の授業を普通に受けたわけだけれども、転校生はこのクラスの保健委員、鹿目まどかさんにご執心のようであるというのは噂だ。そして、転校生と話すことになったのは放課後の繁華街でのことだ。
今の僕の体は呪いに敏感だ。それこそ魔女の気配を遠目に感じれるくらいには。
「よし、言ってみよう」
好奇心というのは抑えるのが難しい、だから本能のままに、魔女の気配を辿って、辿り着いた、魔女のいる結界で魔女を殴り飛ばしていたら、転校生と出会ったというわけだ。
「貴女は、何者なの?」
「僕の名前は余正木忍接臥。余弦正弦の余と正に枯木の木。刃のもとに心ありと接ぎ接ぎにして忍と接ぎ、臥薪嘗胆の臥で、余正木忍接臥。魔法少女を知っているのはたまたまだ。たまたま、何でも知っているおねーさんと名乗る人に、教わっただけだ」
「……個性では魔女は倒せないわよ」
「確かに個性では倒せないけれど、なにも個性だけが戦うすべじゃないだろう。君達が魔法を使うように、魔に連なる技を持っていれば、魔女は十分に倒せるんだよ。
「それに、ここにいるのは少し不味いと僕は思うよ。何せ、この結界に入ったのは僕達だけじゃないだろう。
「早く行かないと手遅れになるよ」
「そうね、邪魔しないでね」
「邪魔はしないよ、」
そうして、背中の三対六翼を広げて、飛び上がる。
個性という超常の力。僕はとりわけ珍しい、接ぎ接ぎな個性だ。ここで、個性についての説明をしておこう。
中国で光る赤子が見つかったことが発端の、生物細胞に根付く超常の力、もちろん、持っていない人間も世界には二割いる。無個性と言われる、いわゆる落ちこぼれとしてイジメの対象にもなる。
魔法少女は基本的に無個性とのことだ。何でも知っているおねーさんはそう言っていた。おねーさんは無個性で、何でも知っているのは呪いの力らしい、詳しく教えてくれることはなかった。それでも魔女を知り、魔女に対して有効な対抗手段を持っているというのだから驚きだ。
さて、少し魔が開いたわけだけど、僕の個性を説明しておこうか。
個性名、|継ぎ接ぎだらけの例外の方が多い規則《パチッチング・アンリミテッド・ルールブック》。この効果は、死体人形に通じ、死体人形に与えられた願いのように、無関係で、バラバラな複数の個性系譜をその身に宿す、まさしく継ぎ接ぎ、ばらばらな内容の個性。
まずは、異形系として、龍の角を思わせる、枝のような角が額に二本。白毛の狐耳が頭に生えて、 腰からは白い龍の尾と白毛の九尾、 背中からは三対六翼の黒い羽根が生える。
だが、これはあくまでも異形系としての力だ。
強化系に分類されるのは、不死身を殴り殺せる怪力である。おねーさんの知り合いに、似た力を持つ暴力陰陽師がいるとのことで、会えるのならばあってみたいものだ。
そして発動系、体の一部を巨大化させる、死体人形の人形童女に一番近い能力だ。
他にもまだあるが、今そのような説明をしている暇はない。だから、解説をしている間に、この結界に迷い込んだ少女達の前に降り立とう。
「急がなくてもよかったかな、」
黄色いリボンが格子状に、柵のように張り巡らされ、それを作り出した魔法少女はマスケット銃の生成と乱射を繰り返している。とはいえ、1人だけに任せるのも忍びない。だから、影を集めて、苦無を作る。
さっきの個性説明に入ってなかったって?当たり前だ、これは個性じゃない。魔法少女の成れの果て、魔法少女の残り香、魔女の一部、魔女の落としたもの。まぁ表現の仕方は色々あるけれど、魔女を倒せることにはかわりない。
その苦無を、自分の影に投げ落とす、影に入った苦無は魔女の使い魔の影に繋がって出てくる。影を繋げる能力だ。
「!貴女……いえ、手伝ってくれるならそのままそこの二人を守ってくれるかしら?!」
「いえ、その必要はないと思いますよ」
「え?」
「さんざん暴れ回れば、魔女とて逃げていきますから」
魔女が逃げていけば、結界もそれに追従して逃げていく。そうすれば、生き残った人間は異物として、外敵として、外に残される。
「さっきはありがとう、それで、貴女、魔法少女よね?変身してないけれど」
「魔法少女ではないですよ。僕の名前は余正木忍接臥。余弦正弦の余と正に枯木の木。刃のもとに心ありと接ぎ接ぎにして忍と接ぎ、臥薪嘗胆の臥で、余正木忍接臥だ」
「余弦?正弦?臥薪嘗胆?」
おっと、どうやら三角比は知らないらしい。まぁ実際に習うのは高校生からだし、新学校でも中3からだろう。自己紹介としては失敗したけれど、鹿目まどかさんと、美樹さやかさんは助けることができた。
名前を知っているのは同じクラスだからだ。
「余正木さんはいいとして、キュゥべえを傷つけた貴女は別よ、でもまぁ、魔女はまだ近くにいるはずよ」
「私の用があるのは...」
「飲み込みが悪いのね?見逃してあげるって言ってるの」
「…」
「もう少し話せばいいのに」
去っていく暁美ほむらさんを、見ながら、黄色い髪の、魔法少女に質問する。
「私の名前は巴マミ、キュゥべえを傷つけるのだから、あまり譲歩はできないわよ」
「なるほど、でも、無駄に命をかけるようになるよりかはマシだと思うけどね」
「確かに、そういう考えもあるわね、だったら監督すれいいのよ。にしても、個性持ちの魔法少女なんて珍しいわね」
「僕は男だよ、そして僕が使えるものは魔法ですらない、魔法とも呼べない、そんな残りカスだよ」
「残りカス?」
「キュプッ」
「インキュベータ、余計なことは言わないでね、僕だって、舞台が早々に動くのは避けたいからね」
「わかったよ、余正木忍接臥」
そのまま、繁華街の裏側、廃ビルのなかに入り浸るのもいいけど、話し合いを続けるなら場所を動かそうと言うことで、巴マミさんの家にお邪魔することになりました。ご存知の通り、インキュベータの沈黙に寄って生まれた誤解だらけの説明がなされ、魔法少女の勧誘を受ける鹿目まどかさんと美樹さやかさん、戦力は十分であるうえに、グリーフシードの争奪戦も考えて、引き止めはしたけど、どんな願いでも叶うという釣り針は、極上の餌ですから、気を抜けば契約しているかもしれないですね。