「佐倉杏子」
「!」
「知ってるんですね、二人とも。教えてくれませんか?彼女の事を」
翌日、巴さんと暁美さんを呼び出して、一つ質問をした。
「何のために?」
「別に対立をしようだなんて思ってませんよ、巴さん。僕がやりたいことは戦力強化です。三週間後にワルプルギスが来ますからね」
「ワルプルギス……」
「超弩級の災害、呪いの集約、舞台装置の魔女、ワルプルギスの夜。舞台に上がれる人間は多いに越したことはありませんから、もちろんただでとはいいません。過去数百年にわたって倒されていない魔女ですからね、戦わなくてもいいです。ただ、ワルプルギスを押しのけたあかつきには、約二か月後、正確に言えば一ヶ月後と三週間後の魔法少女の代償が大幅に減ると断言しましょう。ワルプルギス戦での前払いはグリーフシードそれぞれ五つです」
つらつらと、反論を許さぬ形で、今後の説明をしていく。
「協力することは構わないわ。ワルプルギスを放って置く理由もないもの」
「それに関しては賛成よ、でも、貴方がなぜ佐倉杏子を知っているの?」
「ああ、見せていいんですかね、あのメール……まぁ、見せてもいいでしょう。駄目なら止めに入るだろうし」
昨日、オールマイトとの検視が終わったあとに送られてきたメールを見せる。
「美国、織莉子」
「いや、そっちじゃないでしょう?余正木くん、貴方の後ろには何がいるの?」
「境都大学の卒業生です。ともかく、これが理由で佐倉杏子のところにいきたいんですが案内してくれますか?」
「……わかったわ、でも、私と違って自分勝手だから上手く話が通るとは思えないけど」
「十分です、必要なことはどうこうの確認です。いざというときに邪魔されては困るので」
というわけで、佐倉杏子がいるという風見野市に来た。
「ゲームセンターか、銀行、もしくは教会にいると思うわ」
「教会ですか、魔女が寄り付かなそうな場所ですね」
「いえ、廃教会だから寄り付く可能性もあるわ。すぐに倒されるでしょうけど」
「聞いてないの?佐倉さんの過去」
「聞いてませんよ、何でも知っているからといって、何でも教えてくれるわけではありませんから」
「そうなのね、厳しいの?」
「専門家ですからね、合理的な判断もしますよ。今朝、ヴィランに中学生二人が襲われた事件があったでしょう?あれ片方は魔法少女です。彼女達が死ぬことを知っていたんですよ、臥煙さん。でも、僕だって全員をカバーできるわけじゃないです。臥煙さんだって同じ。知っていることに対して、行動できる手数は限られます。それこそ魔法少女なんてハードな件、簡単に対応できませんよ。なにせ、存在自体がアウトローですからね、大人に相談することもさ難しい内容です。でさから、救えないことも沢山あります」
「……なら、なんで、貴方はそれに納得するの?」
「契約に近いからですかね?まぁ、同情というのもあるかもしれません。魔法少女という、魔性と悲壮にあふれた魔物語にね」
少なくとも、そう割り切らないと行けないこともある。人を呪わば穴二つ、契約破局というのは、それ相応の代償がありますからね。
こういう、達観した思考も無理な延命方法が理由なんですかね。延命に使われた五人分、五つのグリーフシード。
グリーフシードが代替になった部位は、心臓、髪、足、両手、頭。はっ、頭って人間を構築するなかで一番重要なものじゃないですか。そりゃ感性もズレてきますよね。
「見つけたわよ」
「では、交渉といきましょうか」