「ちょっといいですか?」
「このゲームが終わったらにしてくれないか?」
「分かりました」
ゲームセンターで、音ゲーをしていた佐倉杏子、プレイが終わるまで待っていると、横から暁美さんが質問をしてくる。
「メールに、美国織莉子の名前があったけれど」
「はい、先日に、政治家の美国久臣の自殺が報道されていました。覚えていることを鑑みるに、現実改変はされていない可能性があります」
「違うわよ、美国織莉子は鹿目まどかを殺そうとしているの」
「そうですか、なら守るだけです。今見るべきところは違います」
「……そう、」
「終わったよ。何のようだ?マミもいるし」
「協力要請です、三ヶ月後に見滝原にワルプルギスの夜が来ますので、その撃退を手伝ってくれないかなと」
「へぇ、本当にいたんだ、で?私のメリットは?」
「そうですね、ワルプルギス戦で、鹿目まどかという、魔法少女候補の契約を阻止できれば、更に一ヶ月後にグリーフシードの供給がなくとも生活できるようになります。もちろん、魔法少女としての力が無くなるわけではありません。ワルプルギス戦前には、参加者にグリーフシードをそれぞれ五つ配布する予定です」
「へぇ、ずいぶんと気前がいいな、それで、具体的な方法は?どうやってグリーフシードの供給がなくとも生活できるようにするんだい?」
「話に乗ってくれそうですね、場所を変えましょうか」
「アンタとは気が合いそうだ、食うかい?」
「では、遠慮なく」
佐倉さんが放ってきた林檎を受け取り齧る、うん、甘いですね。
「それでは……これは…」
「どうかしたかい?」
「一度見滝原に向かいます。三人とも付いてきてください。魔法少女狩りが行われました」
「「「?!」」」
オールマイトと臥煙さんから、新しく魔法少女の犠牲になったとの報告がなされた。場所は見滝原と風見野の間、面倒くさい場所ですね。
「少しキツイですが、飛んでいきます、認識阻害魔法をお願いします」
「わかったわ」
三人を尻尾で掴み、空を飛ぶ。女の子とはいえ三人分はキツイですね。今回は、現場急行ですか、オールマイトに夕飯代をたかりますかね。エネルギーが足りません。
「オールマイト、」
「あ、来たかい、余正木少年……そっちの子達はもしかして……」
「はい、魔法少女ですね。もしかしてそちらにいる方達も?」
「ああ、人見リナさん。朱音舞さん。佐木京さん。の三人だ」
「初めまして、余正木忍接臥言います。余弦正弦の余と正に枯木の木。刃のもとに心ありと接ぎ接ぎにして忍と接ぎ、臥薪嘗胆の臥で、で余正木忍接臥です。オールマイト、パトロール中に見つけたと言った感じですかね?」
「ああ、魔法少女って多いのかい?」
「多いですよ。いろいろと説明したいこともありますので、一旦僕の家に来てください、人見さん、朱音さん、佐木さんもいいですか?」
「私は構わないよ」
「私もだ」
「リナちゃんが言うなら」
「では、いきましょうか」
人見さん、朱音さん、佐木さん。三人とも、連絡になかった。つまりはそういった覚悟をしておけという話だ。助けられる命は助ける人だったはず無んだけどな。臥煙さん。いや、姉に会いたいと言うだけで、死者蘇生という禁術に手を出す人だ。一概にそうも言えないか。
「あれ、なんでいるの?斧乃木さん」
「ちゃん付けでもいいよ、お兄ちゃん」
家に着くと、無表情な童女が玄関前で待っていた。
名前は斧乃木余接。臥煙さんが、姉に会いたいという理由で蘇生した。勘違いで蘇生した、臥煙遠江になるはずだった存在である。
そう、斧乃木余接は人形である。別の言い方をするなら人間ではない。人ではなく、生き物ではなく、尋常ではない―――それが斧乃木余接、式神としての憑喪神である。
見た目は可愛らしい童女であれど。
エキセントリックな言動で周囲を楽しませてくれる無表情な子供であれど、その本質は怪異であり、妖怪であり、化物であり、魑魅魍魎の類なのだ。
「臥煙さんからの伝言だ。助けるのは構わないけれど、無茶をし続けると二ヶ月も持たなくなるよ。それに、割り切るところは割り切るべきだ。専門家としての合理的な判断を期待しているよ」
「そっか……ねぇ、斧乃木ちゃん、詐欺師は出禁にならないのかな?」
「ちゃんと金を払った専門家としての詐欺師だから、魔法少女達を騙すようなことはないよ」
「なら良かった、それ以外は素行があれなだけで、子供には優しいからね。それじゃぁ全員中に入って。斧乃木ちゃんも説明に参加する?」
「いや、僕はお姉ちゃんを迎えに行かないといけないから、早くても一週間後にまた会おう」
「わかった」
脚を瞬間的に巨大化させて、その勢いで跳ぶ、例外の方が多い規則―離脱版で、上空へ消えていった斧乃木ちゃん。その後に、連れてきていた人たちを家に上げる。
さてと、何から話そうか。
「まぁ、簡単に言えば、魔法少女を救って、魔女への対処をしようという計画です。もちろん世界中にいる魔法少女全体の問題解決なので、犠牲覚悟というやつです。今回、臥煙さんからの連絡が来ていない、人見さん、朱音さん、佐木さんは、命の保証ができかねるということです。
「具体的な方法としては、現在、世界改変が行えるほどの因果律をもつ、魔法少女候補、鹿目まどかに願ってもらうという、他人任せな方法に近いですが、彼女に、魔法少女の力を怪異と個性の二つに再分配してもらうという計画です」
一通り、説明すると、一番最初に発言したのは以外にもオールマイトだった。
「私は、ヒーローとして発言させてもらうが、もう、放っておくことはできない。私が知らないところで、未成年の子供が死んでいることも問題だし、その問題に対して、子供が主軸に動いているのも問題だ。なにより、なぜ、大人が動かない、子供の未来を守るのが大人だろう。臥煙伊豆湖という人も、余正木少年の言う専門家たちも、大人なんだろう。なぜ率先して動かない」
「動かないわけじゃないんですよ、動けないんです。魔法少女は主に第二次性徴期の少女達が成ります。その問題に対して、大人に相談なんかできるわけがないでしょう。ましてや、魔法少女という肩書は人によっては、子供向けとして、離れて行くような期間です。プリキュアとかを見るのは幼稚園とか、小学生低学年でしょう?つまり、同級生にも相談できない問題です。大人が割ってはいるにはデリケートすぎるんです」
「それでも、死人が出ているんだぞ!」
「その数を減らそうという考えを……暁美さん、貴方は最後まで知ってますよね?今ここで喋るべきですか?僕にも、オールマイトにもデメリットはない、魔法少女で知っている貴方はどう判断をしますか?」
「そもそも、オールマイトに協力を仰ぐのが間違い、そう言いたいわよ、でも、貴方が、集団自殺を留められる自信があるなら、話してもいいんじゃないかしら?」
「そう、なりますか、なら、オールマイト。昨日説明した、インキュベータ、インキュバスのヒントは理解できましたか?」
ああ、本当にインキュベータは厄介なところを契約の主軸にしたものだ。専門家達が後手に回っている理由。それは真実を知った魔法少女が絶望して魔女になるかもしれないということだ。
専門家として、プロとしての責任が、不安定な、第二次性徴期の魔法少女達への対策を難しくしている。