納得はせず、すべてに頷くこともなくオールマイトは帰っていった。だが、素人が手を出せることの危険性は知っているからこそ、飲み込めたんだと思う。じゃなきゃ、無理を言ってでも協力しただろう。
「さてと、どうしましょうかね、」
「取り敢えずはその、美樹ってやつの対処じゃないのか?」
「確かにそうなんですが、巴さんの精神面も見ないといけないのと、美国織莉子という魔法少女への対処です。あとは優木沙々という魔女を操る魔法少女です」
「いま、暁美ほむらってやつは、マミのところにいて、優木沙々とやらは風見野の三人が追っている。残りは美樹さやかってやつと、美国織莉子か?」
「そうですね、佐倉さん」
「杏子でいいよ、よそよそしい」
「確実に別れるというのに?」
二カ月経てば永眠だ。その時には魔女化とかも無くなってるだろうけど、悲壮感は少なくしたい。まぁ関わってしまったら、悲壮感がなくなるということはないんだけど、それでも少ない方がいい。
「だからかな、別れが決まってるから今を楽しまないと」
「そうですね、貴方みたいな価値観の魔法少女ばかりなら、もう少し動きやすかったと思います……僕は美樹さんのところに行きます、美国家は政治家の家系です場所は割れてますからね、確認した後帰ってきてください。これ、前払いのグリーフシードです」
「まいど」
この時間帯なら、病院ですかね。はぁ、二カ月後に死ぬとは言え、すっかりと素行不良になりましたね。まぁ、もともとない二カ月頑張らないと。
見滝原病院にいきますか。一応クラスメイトだしね、顔パスで行けないかな。
何とか病院の上条恭介という、天才バイオリニストと呼ばれる事故で怪我をした人間のもとに行く。
「……あるよ!奇跡も、魔法も、あるんだよ!」
「奇跡も魔法もあるがそれに頼るんじゃねぇよ」
「うぐっ!?」
タイミング悪いなぁ、まぁ、何も聞いてないし、反射的に殴ってしまったけどさ。どうしよう。
「急に入ってきて、何なのさ!」
「美樹さん、席外してくれる?この度し難い、自分が、自分だけが不幸だって勘違いしている馬鹿をぶん殴る」
「ちょっと!何言って!京介は腕が使えなくてバイオリンが」
「だから?死ぬわけでもないのに贅沢だね。治癒系統の個性でもな治らない?現代医療でも治らない?悲観しすぎでしょ、現代医療ってなんだよ、一年まったら?二年三年待ってみたら?ああ、そう言えば、まだ方法があったね。機械義肢、主にヒーローが使うやつだけどさ。神経を繋いで機械を本物の腕のようにする技術。腕が使えない程度で、不幸を語るな」
「お前に、何がわかる!」
「わからないよ、わからない。事故で失ったのが利き手を動かす権利だけって、世の中理不尽だよね」
「なにが言いたいんだよ!」
「不幸自慢でもしてみるか?腕が使えない程度のお前と、余命二か月の僕、負けるつもりはないよ。
「不幸でい続けることは怠慢だし、幸せになろうとしないことは卑怯だよ。
言い訳にも聞こえるけどね。
幸せにならないから勘弁してください。
幸せになろうとなんかしないからどうか許してください、どうか見逃してくださいと言っているようにも、僕たちはこんなに不幸なんだから責めるなよ、可哀想だろって主張しているようにも。
不幸や不遇に甘んじていることを頑張っていると思っているんじゃないの?
そういうのを世間ではなにもしていないって言うんだよ。
不幸なくらいで許されると思うな。ハッピーエンドを目指すべきだ。
不幸でい続けることは怠慢だし幸せになろうとしないことは卑怯だよ」
「腕一本、事故一回で諦める夢なんざ捨てちまえ。お前にバイオリンは合っていない」
「いい加減にしてよ!」
「なに?美樹さん」
「急に来て……ひどすぎるよ!」
「どっちがひどいんだが、レコードプレイヤーが壊れてるし、上条さんの腕から血が垂れてる、怒りで叩きでもした?お見舞いに来てくれる人間がいるだけ幸せものだよ、アンタ。腕一本、命が助かった対価と思えば十分でしょ」
はぁ…やっちゃった。病院に出禁を食らった。まさか面会禁止じゃなくて、見舞いという行動すら禁止とか、うん、あんな奴の何がいいんだか、僕には恋愛は分からないね。
そう言えば、誰が美樹さんの対応するんだろ、アロハは駄目だよね、あの人は多分暁美さんだから、詐欺師か陰陽師……そう言えば、専門家のなかで恋愛問題解決してるのって、詐欺師じゃん。え?本当に大丈夫なの?
「他人のこと気にしてる暇じゃないな、自分のことやらないと」