求)時止め魔法持ちがアリバイを証明する方法   作:夕月紫苑

15 / 16
14話

 

 

 

倒れたという桜羽さんの様子を見に医務室に向かう。

 

「……関藤か。おめーも桜羽が心配で来たのか?」

 

中には看病する氷上さんと紫藤さんがいた。

 

「ああ。紫藤さんも?」

「ウチは……薬を取りに来ただけだ。すぐ帰る。」

 

紫藤さんがそっぽを向く。

だがその視線は桜羽さんを向いているように見えた。

 

(……素直じゃないだけ、か。)

 

心優しい一面を見て、やっぱりこの牢屋敷に悪い人はいないと再確認する。

 

(だが、前回同じようなことを言って怒らせてしまったからな……普段の態度から見ても、自身をいい人だとは認められない性格……なんだろうか。)

 

それ以上の会話はなく、視線を切り桜羽さんを見ていると、氷上さんがこちらを向く。

 

「ありがとうございます。アリサさんの採ってきてくれたハーブでエマさん、だいぶ顔色が良くなってきました。」

「ああ……別に、大したことじゃねえ。それより、桜羽は……目覚めそうか?」

「……分かりません。前回の時より悪化しているようなので……半日は目覚めないかもしれません……」

「……そうか。」

 

心配そうに桜羽さんを見る紫藤さん。

 

「……何か手伝うことを探しに来たんだが……紫藤さんがいてくれれば大丈夫そうだな。」

「は?なんだそれ……いや、桜羽の面倒を見るのが嫌なわけじゃねえが……」

 

なにやら言い訳する紫藤さんと手を振る氷上さんに別れを告げ、医務室を出る。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

図書室でいつものように解読作業の手伝いに向かうと、何やら話し声がする。

 

「え~?あてぃしヤなんだけど~。」

「あら、外に出るのを諦めるのかしら?」

「いや、そんな暗~い実験なんかに付き合えるかって話……」

「でも、何か起こるかもしれないわよ?」

「うげぇ~、そんなんに賭けるのコワすぎ!」

「宝生さん、沢渡さん。何の話をしてるんだ?」

 

声を掛ける。

 

「ぴゃぁ!出たぁ!」

「あら、ハヤトくん。丁度良かったわ。あなたにも聞いて欲しかったの。」

「……沢渡さんが怯えているが……」

「ちげ~よ!イキナリ出てきたお前にビックリしたんだっての!」

「……それは、すまない。」

「ハヤトくんも知ってるわよね?少女の魔法を強化する儀式。」

 

記憶を辿る。

 

「……あれは、生贄がいる……って話でやめたんじゃなかったか?」

「そう。少女を殺して、魔女にする……でも、よく聞くでしょ?呪いや儀式には、身代わりって。」

「……?何かを代わりにして、儀式を起こせるかも……ってことか?」

「ええ。だから、実験がしたいの。今夜火精の間で試すつもり。」

「……前に約束したからな。手伝わせてもらう。」

 

その言葉を受けて頷く宝生さんの後ろで、沢渡さんが言う。

 

「なら、あてぃしいなくてもい~よね?そこの二人でやっといて……」

「外に出られるかもしれないのに?」

「うぅ……ヤンキーも道連れにしてやる…」

 

結局押し切られる沢渡さん。

その後、宝生さんに誘われた紫藤さんも見守るために参加するという。

 

夜の集合を約束し解散する。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

夜に向けて監房で体を休める。

 

(……氷上さんは桜羽さんを見てくれてるから……一人、か。)

(……桜羽さんが、倒れた。また皆を思う希望が居なくなってしまうかもしれない。)

 

精神的に疲れているのを再確認する。

 

(……二階堂さん、蓮見さんに城ケ崎さん、夏目さんと佐伯さん……この牢屋敷に連れてこられてから、続けて死体を見続けている……だんだんと、精神があの時に退化している感覚がある……)

(死を視た直後でなくても、皆の役に立たないと。皆を助けないと。自分に価値は無い。そんな馬鹿な考えがずっと過ってる)

(誰かの役に立てなくても、価値はある。そう、ここに来る前には思えていたのに……)

 

ここに囚われてからの事を思い返す。

 

(国に捕らえられて。殺し合いが起きて。人がトラウマを抉られて異形にされる場面を目の当たりにして)

(だんだん、自分はあの時から進めていない。希望を見せてくれた人が次々と目の前で死んでいくのを見ているだけ。守れたことなんてない。そういった思いに押しつぶされそうだ)

 

少し考えた後、監房に転がっている石を掴む。

 

(……大丈夫なはず。まだ絶望はしていない。あの時より進めている。その確認だ。)

 

石の尖った箇所を使い、腕を少しだけ裂く。

 

「……よかった、塞がらない。」

 

傷が残り続けるのを見て安心する。

 

(魔法による停止時間も、あの頃より短い。まだ大丈夫。)

 

痛みを感じ、監房の水で軽く流す。

そして、軽い処置をしてから医務室に向かう。

 

(牢屋敷の解決に繋がる糸口が見えるまでは、この確認は二度とやらないでおこう)

 

 

◆

 

 

 

医務室では、変わらず氷上さんが桜羽さんを看病していた。

 

「氷上さん、すまない。傷薬の類は貰えるだろうか。」

「あ、ハヤトさん。それならそこの棚の引き出しにあります。」

「ありがとう。桜羽さんの様子はどうだ?」

「朝にハンナさんが連れてきてくれてから変わっていません……私の魔法も、ケガ以外には効かないので……」

「朝からずっと看てくれているのか……何か手伝えることや代わりにできることはないか?」

「えっと……さっき来てくれたアリサさんに中庭のハーブをもう一度摘んで来てもらってるんです。だからお気持ちだけ、受け取らせていただきますね……!」

(結構な頻度で来てるんだな……)

 

薬を見つけ、礼を言って医務室を出る。

 

少し歩き、考えを巡らせる。

 

(……桜羽さんが倒れて、牢屋敷全体が暗くなってる……もしかしたら、起こるかもしれない。なら……)

(今回からは先に手を打っておきたい。桜羽さんとの約束の為にも、全員が生きれる道を探すんだ。)

 

スマホを開く。

目的の人物を見つけ、メッセージを入れる。

 

『写真を送ってくれ。』

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

夜、火精の間に向かう。

 

「……来たな。」

「……本当なのかしら……」

「なんでまだあてぃしを疑ってんだよ!」

「いや、おめーの言い方が大袈裟すぎんだろ……」

 

なにやら騒がしいが、合流する。

 

「俺が最後か。遅れてすまない。」

「……あー、関藤?沢渡がうるせーんだ、おめーが自撮り要求したって……」

「突然すぎてキモイ。」

「……伝えたはずだが?魔女化のストレスを抑える為に、一人でいる時間を減らしたいって……」

「いや、それであてぃしの魔法利用しようとすんのが唐突すぎてキモイっての!」

 

思いついたはいいが急すぎた為かドン引きされてしまう。

 

「……急にそんなことを言い出すのは、エマちゃんが理由?」

「ああ。5人もいなくなり、桜羽さんまで倒れたとなれば、皆限界に近いと思ってな。」

「……桜羽はそんな柔じゃねぇよ……」

「俺も桜羽さんには頑張って欲しいと思ってる。だけど、桜羽さんが倒れたのを見て、ストレスを感じた人が殆どのはずだ。」

「あてぃしは……別に……」

「そうね。エマちゃんが倒れて私も心配。だからこそ今日の実験が希望なの。」

「……そうだ。儀式の為に呼ばれたんだろ?看守に見つからねーうちに、さっさと始めるぞ。」

「ええ。じゃあ、これを磨り潰してくれるかしら?」

 

そうして差し出された花を潰して塗料にし渡す。

 

「じゃ、始めましょうか。」

「……マジ?」

「……来るんじゃなかった……」

「……宝生さん、身代わりってのはもしかして……それか?」

 

手に持つものを指差す。

 

「ええ。身代わりによく使われているものよ。」

「……あー、聞いてもいいか」

「ええ。」

「……紫藤さんなのはなんでだ?それと、その人形はどこから?」

「ハンナちゃんが作ってくれたの。全員を縫おうとしていたわ。アリサちゃんなのは……偶然よ。」

「……ウチの人形使うのかよ……」

 

気まずくなりながらも、儀式を続ける。

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

成果は……無かった。

 

 

「は~、結局無駄足じゃん!」

「……代用はできない、か……」

「でも、そうなると……」

「……いいから、早くでるぞ。そろそろ戻らねーと……」

「……ああ、片付けよう。」

 

儀式の痕跡を消していく。

 

「はぁ~ぁ。明日は昼まで寝よっと。ってぇ……ひぃ!」

 

一足早く火精の間を出た沢渡さんが悲鳴をあげる。

 

「沢渡さん、どうかしたのか?」

 

続いて出ると、目の前に看守がいる。

 

(……黒部さんの、家族)

 

少しの間見つめていると、その手に鍵を構えていることに気づき、中の二人に伝える。

 

「宝生さん、ここの鍵を閉めるらしい。一旦出た方がいい。」

「っ。そうね。」

「ああ……」

 

出てきた二人と合流し、四人で牢屋敷への道を歩く。

 

「……失敗、か。」

「ええ……やっぱり、本物じゃないと駄目なのかも。」

「……だが、その場合この儀式は試せない。失敗でしたでは済まされない……」

「……また、解読を進めるしかないわね……」

「次あっても二度と呼ぶんじゃね~!暗いし儀式は悪趣味だし看守は怖いし……」

「……あら、ココちゃん。今日はごめんなさいね。でも、何も起きなかったんだから、許してね?」

「……こんなので恨んだりしね~し。」

 

少し後ろにいる紫藤さんに速度を合わせる。

 

「……紫藤さんも、今日はありがとう。」

「……別に期待してなかった。宝生がやらかさねーか見に来ただけだ。」

「なのに片付けまでしてくれた。ありがとう。」

「……おめーは……いや、なんでもねえ。」

 

話を切られ、その後は会話をすることなく別れる。

 

 

 

 

◆

 

翌日。

 

早朝、橘さんからメッセージが来る。

 

『エマさんが目を覚ましました!」

 

(良かった……桜羽さんが元気になれば、皆も元気を取り戻すはずだ。)

 

元気になった桜羽さんの様子を見に行こうとした所で、メッセージがもう一つ来ていることに気づく。

 

(……黒部さんから?夜中に来ていたのか……嫌な予感が……)

 

開いて内容を読む。

 

 

『襲撃にあった。何者か見れなかったわ、注意して。』

 

 

(……このタイミングで、か。)

 

 

一先ず先に黒部さんの様子を見に行くことにする。

そうして牢屋敷の外に出た時。

 

 

フ(・)ク(・)ロ(・)ウ(・)の(・)鳴(・)き(・)声(・)が(・)響(・)く(・)。

 

(……約束した。もう一度信じると決めた。だから……夢であってくれ……)

 

 

スマホのメッセージを見る。

 

そこには……

 

 

 

 

『殺人事件が発生しました。』

 

 

 

 

 

(……)

 

ラウンジへと向かう。

 

 

 

頭の中で、何かが壊れる音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






感想、評価をしていただけると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。