21話
夢を見ている。
自身を放っておけないと話しかけてくれた、中学の同級生。
行く高校がバラバラになってしまった彼との思い出。
そんな記憶を夢で思い出す。
『お前、考えすぎだと思う。ず~っと難しい顔してたと思ったら、変な結論を急に言い出すしさ。』
『いや、考える事が悪いってわけじゃねえよ?ただ……お前、結論がネガティブ過ぎ。』
『え~と、なんだっけ……あそうそう、下手な考え休むに似たり……ってやつだ。……いや、悪口かこれ?』
『とにかく、余裕を持って考え過ぎずに暮らせば、もっと楽に生きられると思う。』
『それがしんどいってんなら……俺に連絡くれれば、一緒に考えてやるよ。文殊の知恵には足りなくても、なんかいい考えでるだろ。』
『ま、お互い頑張ろうぜ?』
◆
目が覚める。
「ん……あれ……?」
周りを見渡す。
「どこだ……ここ……?」
牢獄のような部屋に少女と共に閉じ込められていることに考えを巡らせる。
「ねえ!ここどこなのかな!」
途中他の少女の声で起きてきた少女に自身が犯人でないことを弁明していると、壁掛けモニターからゴクチョーを名乗るフクロウにラウンジに呼び出されたり、人とは思えぬ看守に急かされたり、状況が目まぐるしく変わり、ついていけなくなった時点で夢での友人の言葉を思い出す。
(今の何も情報が無い状態で考えてもあいつの言うように変な結論を出すだけだろう……説明を聞いて。その情報を基に考えないと……。)
◆
ラウンジに着く。
(……もう少し待たないといけないのか?)
フクロウを待つ間、周囲を観察していると。
「皆初対面だし、自己紹介をしていこう!」
部屋の中央で宣言する少女。
二階堂ヒロを名乗るその少女が他の少女達へと規律正しい自己紹介をさせられていく。
「次!」
自分の番が回ってくる。
「……関藤ハヤトだ。」
「次!」
そのまま次々と自己紹介をさせていき、詰まった少女や無視する少女の名前を当てていく。
その後、蓮見さんが二階堂さんが名前を当てれた理由として魔女図鑑を見せる。
(……ポケットのスマホ……情報がここにある……。)
アプリの魔女図鑑を開き、情報を見ているとゴクチョーを名乗るフクロウが通気口から部屋に入ってくる。
そのまま説明を聞く途中、
(……家族を助けられず絶望していたあの時。俺は……魔女になりかけていたのか。……だから自傷しても、傷が治りやすかった……)
(あと少しで完全に魔女になっていたのを救ってくれていた……。あの人に感謝する事が増えたな。)
(……だけど。国の検査で引っ掛かってしまったのなら、俺はまだ危険域……。殺人を起こす前に隔離した方がいいと国に判断されてしまった以上、今後の身の振り方を考えるべき……か。)
思案していると、規則に従い監房に戻るよう促される。
◆
監房で氷上さんと話した後、自身の行動の指針を考える。
(俺自身は……ここが国によって作られたものなら、従うべきだとは思う……が、他の少女達がそうとは限らない……昨日まで普通の生活を送っていたのにこんな劣悪な環境に連れてこられて、ここで暮らせ。はい分かりました……とはならないだろう。)
(……脱走。それを考え行動する人もいるだろう。……ただ、情報が無い。ここが元いた街からどれだけ離れているのか。そういったことを調べたり……そういった方向で皆を手伝う。結局のところ情報を集めてから行動を起こす……それでも大丈夫だろう。今の所、誰も魔女化による殺意に吞まれていそうな人はいないようだし……)
一先ず、情報を探す。それを第一優先とする。
◆
食堂に着くと、二階堂さんが入り口で点呼をしており、食堂についての説明もしてくれる。
(……二階堂さんが素早く行動してくれているお陰で不便に感じることがあまりないかもしれない……。)
(……この食事の味と食感は除いて。)
あまり食べたいと思わない食事を終え、食堂を出る。
(……情報を集めるのなら……。)
マップを見ながら、図書室に向かう。
だが、図書室の前で一人の少女から話しかけられる。
「あ~、ストップストップ。」
「……?君は……沢渡さんか。何か用か?」
「アンタはここに入んないで~。回れ右してどっか行け。」
「……?理由を教えてくれるか?」
「あてぃしがアンタを信用できないから。わかったらどっか行けっての。」
「……。」
何やら理不尽な言い掛かりを付けられている。
(……男だから……か?他の少女達と俺の違い……まだここに来て数時間しか経っていないのにパーソナリティを把握しているとは思えない……身体的特徴以外の理由が見当たらない……)
(……しかし……これに従うと、この牢屋敷について調べれる箇所が殆ど無いな……。)
(……だけど、こちらを心底不快そうに見ている彼女を無視して押し通るのもな……。)
「……わかった。」
「お、理解が早くて助かる~。じゃ、さっさとどっか行け。」
何やら適当にあしらわれる。
(……この場合、どこを探索しようか……)
一先ず二階にある他の部屋を見るが、選択肢は一つしかない。
(……何かあると良いんだが……。)
◆
娯楽室の中を調べる。
他の少女達も数人いたが、特に会話も無くすれ違う。
(……遊びの幅は少しある。退屈のストレスで死ぬのはまだまだ大丈夫そうか。)
何も見つからず、監房に戻る途中。
「君は……関藤ハヤトだな。少し話したいことがある。」
城ケ崎さんと夏目さんの監房から出てきた二階堂さんに話しかけられる。
「……どうかしたか?」
「この牢屋敷の規則を確認したが、シャワールームが男女で分けられていない上、時間で決めてもいない不完全な規則だということが判っている。風紀が乱れるのは正しくない。君と相談して時間の取り決めをしておくべきだと判断した。」
「それは……気づいてなかった。すまない。……俺は特に要望はない。シャワーにかかる時間も多くないと思っているから……そちらが決めた時間に従わせてもらう。」
「分かった。話したいことは以上だ。そちらからは何かあるか?」
「……いや、特にはない。」
「そうか。なら君も自分の監房に戻ると良い。」
そう言って二階堂さん自身が監房に戻るのを見て、自身の監房に戻る。
◆
監房で考える。
(……図書室は探索できず、娯楽室は収穫ナシ……。なら、ゴクチョーを探して聞くしかない……か。)
(この牢屋敷。看守とゴクチョーだけで管理しているのなら、ゴクチョーしか会話の答えが帰ってくる存在がいない……。)
(……まだ一日目だ。焦ってストレスを溜めるのも良くない。収穫が無くても、今日解決しないといけないわけでもない。ゆっくり、進めていこう。)
◆
翌日の食事の途中、二階堂さんからの提案で全員と連絡できるよう繋がることを提案される。
(……二階堂さんのお陰で情報が伝達されやすくなった。図書室に入れなくても、図書室に入った人に情報を聞くことができれば問題はない。)
そう思っていた矢先。
「ぎゃああああああ!」
悲鳴が聞こえる。
悲鳴のした方に駆けつけると、看守が宝生さんへと鎌を振るう瞬間を見つける。
(間に合わない……っ。)
魔法を使い近付くも、すぐに時が動き出してしまう。
(……ああ……)
人が斬られる瞬間を目の当たりにする。
看守は追撃せず去っていくが、一連の光景を見ていた少女達が恐怖に怯えている。
(……ここが国の管轄だとしても。少女達を傷つけ、捕らえ、閉じ込める。それが正しいとは思えない……。)
二階堂さんが指示を出し、宝生さんの救護、看守が暴れた原因究明に動くのを見る。
「……二階堂さん、何か手伝えることはあるか?」
「なら、そこで腰を抜かしている彼女達に手を貸してやってくれ。朝の自由時間はまだ少しあるが、あの状態では監房に戻るのも時間がかかるだろう。」
「分かった。」
沢渡さんに声を掛ける。
「……沢渡さん、大丈夫か?」
「……大丈夫なわけね~じゃん。あいつ……また……。」
(……また?)
比較的マシな佐伯さんと共に夏目さんを運びながら沢渡さんと会話する。
「……てか、さっきの……。」
「……?」
「アンタの魔法。マーゴを助けられたんじゃねーの?」
「……いや、俺の魔法はそこまで距離が長く移動できなくて……。あれが限界だった。」
「……ふーん?」
何か……勘ぐられている。
(……何が怪しかった?俺の魔法に何か不審な点でもあったのか?)
「あ、あの、ココちゃん。どうしてそんなにハヤトくんを……その、なんていうか、警戒?してるの?今回の件は、別にハヤトくんのせいじゃ……。」
「……。ミリアには、わかんないだろ~けど……。」
沢渡さんが俺を指差す。
「コイツ、信用ならね~ヤツだから。」
そう言って、先に自分の監房へと歩いていく。
「あ、あはは……ハヤトくん、気にしないで。お、おじさんはハヤトくんの事、信じてるからね。」
「……」『喋ってないで早く吾輩を部屋に運べ。』
「ああ!ごめんね、アンアンちゃん。」
夏目さんを監房まで送りながら、思案する。
(……俺は沢渡さんの琴線に触れる何かをしてしまったのか?)
考えても答えは出なかった。
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