(大丈夫……まだここで一番なのは私のはず……悪目立ちしていた彼は裏方に回ってくれたし、ココくんとは夕方にコラボ配信で同じ画面に映る……ノアくんも…昨日の配信の分まだここでのアドバンテージはある……大丈夫、ここの皆が一番頼っているのは私……そうだ、アンアンくんのお見舞いに行こう。朝に食事をとっていたから部屋に戻っているはず……大丈夫、皆に頼られる皆のリーダーは、私……)
【エマさんについていきます!なんだか面白そうなので!】 【いけすかないんですわ】
【うっせえな!優等生は黙ってろ!】 【おじさんは、そういう派閥争いとかは、関わらずにいたいなーって】
(リーダーは、私……だから、皆を守らないと……)
【『バルーン』なんだって!】 【世界的に有名な?あの!?】
【部屋にまき散らされた城ケ崎さんのスプレーの刺激臭で倒れていた……】
【多分、レイアさんの配信を見ながら倒れてしまったんだと……思うんです……】【配信を楽しんでいて、苦しいのに気付かなかったんだと思います……】【アンアンさん……苦しそう……】
(……守ってみせる。どんな手段を使おうとも。)
【あの子がいると、一番になれませんよ?】
(私は一番だ、まだ。)
◇
夏目さんを運び終え、佐伯さんと午後からのコラボ配信について軽く話した後、
看病を佐伯さんに任せて監房に戻る。
その後昼の自由時間に食事をとり、蓮見さん、沢渡さんともコラボ配信について話す。
「レイアっちのマネージャー気取り、今日はあてぃしの配信なんだから、内容はこっちで決めるからな!口出しNGだから!」
「いや、私も内容は教えてほしいんだが…。」
「芸能人なんだから、アドリブも大丈夫っしょ?てか、決められた台本通りにやるのは配信じゃねーから!」
「えっ…」
「昨日のも配信ってよりライブだし…あてぃしの配信では!有名人が映ってアドリブでわちゃわちゃしてるのがやりたいんだっての!」
「……まあアイドルライブそのものではあったか」
「だから!内容は実際に配信始めるまで企業秘密!わかったかー?」
「うむむ…分かった!この私が!突然出された要求をいくらでもこなせるトップアイドルであることを証明しようじゃないか!」
「……なんでも安請け合いすると調子に乗られそうだが……」
夕方の集合を約束し、離れる。
蓮見さんが夏目さんの様子を見に行くと言うので、また倒れて今は医務室にいると伝える。
それを聞いた蓮見さんは悔しいような悲しいような顔を一瞬見せ、医務室に向かう。
(蓮見さんの様子が心配だ。全てを背負おうとしていた…少しでもこちらを頼ってくれていいのに……)
(いや、彼女は責任感の強い子なんだろう、弱みを見せまいとしてくれているのなら、こちらでこっそり問題を解決に動いて負担を減らしてあげた方がいいか)
(……夏目さんと城ケ崎さんの件のように勝手な判断はせず、話を聞くことを優先しよう)
(だが……まずはもう一度、図書室へ向かおう。読めない本たちでも、黒部さんの魔法なら重要な情報を見つけれるかもしれない)
◆
図書室には、宝生さんがいた。
「あら、また本を探しにきたの?」
「ああ。読めない本だらけでも、何かヒントになるものはないかと思ってね。」
「それなら、挿絵がある本を探すのはどうかしら?」
「絵本のようなものか…。」
「ええ。今私が持っているのと同じ様なものがあるといいのだけれど……」
「?もう見つけていたのか。その本はどの棚に?」
「手前から2つ目よ。でもその棚は大体みちゃったわ。」
「そうか……コーナー分けのようなものは無いのか」
「ここの管理は随分長いことされてないみたいね。」
「貴重な情報、ありがとう。そうか、挿絵…それならある程度の内容を予想できそうだ」
挿絵の入った本を探し始める。
(牢屋敷の黒幕がここの本を読めるのなら、本の中にヒントがあるとは思っていたが……内容が分かればこの牢屋敷について書いてある本がどれなのかアタリをつけられる)
(…それに、黒部さんの魔法で黒幕が書いた本の過去を見れれば、黒幕の姿そのものが見れるかもしれない。)
(……でもその場合、黒幕が書いた文字はここの本達と同じ言語で書かれているはず。結局は運…か)
「……解読できればいいんだけどな」
「……解読の手伝いをしてくれるのかしら?」
答えが返ってくると思わず、驚く。
見れば、宝生さんが手招きしているので、近づく。
「この本、見てもらえる?」
「さっきから開いていた本だな。…」
内容は相変わらず見たこともない言語で書かれていたが、宝生さんが指差す挿絵を見て、驚く。
「魔法について書いているのか?この本…」
「ええ。ここ、ハンナちゃんの魔法について書いてるんじゃないかと思うの。」
「……挿絵を見てその内容の魔法について書いてると予想しながら単語を当てはめれば…」
「何を書いているのか、その文字がどんな意味を持つのか。分かると思うの。」
「それを組み合わせていけば…書いている内容を全て読めるかもしれない。」
「だから、ここにいる皆の魔法を知って、探したいの。」
(!)
「少しでも書いている内容が分かれば解読が進みやすくなるはず。でも、皆の魔法を知るためには、私の魔法も教えないといけないでしょ?」
(……)
「噓や隠し事をしている人は、信用されないもの。」
(……やはり。)
「自分の魔法を言ってくれない人に、自分の
バレている。
お前の魔法が瞬間移動と言うのは噓だと。
本当にここを脱出したくて、皆を信じているのなら、魔法を隠したりしないと。
お前はここを脱出する気なんてないんだろう、と。
疑われている。
ここに私達を閉じ込めて、楽しんでいるのはお前なんじゃないか、と。
本当にこの本が読めないのか?読めないフリをしているだけなんじゃないか?、と。
ここにきて気付く。
黒部さんは魔法で知っているが、黒幕が俺ではないと証明できるものが、何一つない事に。
魔法を偽り、収監時間に監房にいないことがあり、看守の攻撃が当たらなかった。
自分の尊厳を守る為の噓が、黒幕探しの為にとった迂闊な行動が、咄嗟に人を守ろうと動いた行動が、全て疑念を呼んでいる。
(……今までの行動が、全て宝生さん視点だと、疑わしい要素しかない。)
(……どうする?魔法を言うべきか?俺の尊厳なんて今はどうでもいい。父さんが言ってたのは、時止めは女子にとって汚らわしい魔法だから隠しておく方がいいというだけ。噓をついていたことを謝り、真実を言うことで信頼してもらう方が大事……)
口を開く。
「……ごめん。俺の魔法は……時止め。でも、止まった時間の中を移動できるだけだ。殴ったり物を動かしたりはできない。」
「……」
「隠していたのは……女子にとって気分の良くない魔法だと思ったからで……」
(いや、魔法を偽っていた理由や本当の魔法なんて大事じゃない。結局のところ宝生さんに信じてもらうためには、噓偽りなく黒幕探しなど全てを言うべき……)
考え込んでいるこちらを一挙手一投足見逃さないよう見ている宝生さんに向かってさらに言葉を重ねようと口を開いたその時。
「!」
周囲を見渡し、ゴクチョーの姿を探す。
「……あら、もうこんな時間なのね。あなたも、監房に戻った方がいいんじゃないかしら?」
「……え?」
「……今のは、収監時間を知らせる通知音よ。」
「あ、そ、そうか……」
「……魔法を教えてくれて、ありがとう。じゃあ、また逢いましょう。」
そう言って去る宝生さん。
「……やば」
緊張の糸が切れる。
「監房に戻らないと……」
魔法を駆使して急いで戻る。
◆
監房に戻り、自分のベッドに座り込み、メッセージを送る。
『黒部さん、宝生さんと今いるか?』
すぐに返信がくる。
『ええ。』
『宝生さんに黒幕と疑われてる。』
『宝生マーゴに?』
『魔法を誤魔化してたのがバレたようだ。』
『それを……どうすればいいのかしら』
『宝生さんは黒幕じゃないのか?』
『ええ。もう黒幕の予想はついてる。』
初耳の情報に驚きつつ、宝生さんにどうしたいのか伝える。
『なら、黒幕を探していることと、俺の魔法を宝生さんに共有してくれないか?』
返信が返ってくるのに少し時間がかかる。
『分かった。』
返信を見て安堵する。
(同室の黒部さんに伝えてもらえば、魔法についてが噓じゃないことと、怪しい行動が黒幕探しの為のものだったと分かってもらえるはずだ)
(それに、黒幕に見当がついてる黒部さんなら、説得もできるはず……)
「どうしたんですか……?戻ってきてからずっと悩んでいる様子ですけど……」
「……いや、解決した……と思う。黒部さんのおかげでね。」
「……?そ、そうなんですか……良かったです……」
「心配してくれてありがとう。」
「いえ……皆さんが苦しんでいると、心が痛いですから……」
捕まっている少女達の中に黒幕がいて、その子に牢屋敷から皆を
できるかはともかく、黒部さんのおかげで一歩近づけた。
(……二階堂さん以外、まだ誰も殺されてない。黒幕の正体を暴いて皆をここから出すことができれば)
(……あとはここで罪人らしく野垂れ死ぬだけ。)
(贖罪としては足りないかもしれないが……誰にも迷惑をかけずに死んで、最期に誰かを助けられたなら)
(家族に誇れる俺に戻れるかなぁ)
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