尸魂界(ソウル・ソサエティ)地下牢獄最下層「無間(むけん)」。
2万年の禁錮刑を言い渡された男がいた。
――藍染惣右介。尸魂界史上、最悪の罪人とされている男だ。
ユーハバッハとの決戦から10年間、彼は大人しく捕らわれていた。
一方その頃、尸魂界の隊長三人は、ユーハバッハの力の残滓(ざんし)が残っているという報告を受け、とある場所に集まっていた。
藍染は、ユーハバッハの力が完全に消滅していないことなど最初から知っていた。
10年の時を経て、いまその力の残滓が大きくなっている。放っておけば、再び尸魂界にとって大きな脅威になりうるだろう。
だが、尸魂界の地下でその霊圧を追っていた藍染の感覚の中で、徐々に肥大化していた力が、一瞬にして消滅した。
「ユーハバッハの最後の力が、漸く消えたか……」
「だが、妙だな。ユーハバッハの力の残滓を消したのは死神のはず。……しかし一瞬だが、霊王の霊圧を感じた」
「黒崎一護――いや、違う。似ているが、また別の霊圧だ」
そう、ユーハバッハの最後の力を消し去ったのは黒崎一護ではない。その息子、「黒崎一勇(かずい)」。
彼もまた一護と同様、いやそれ以上に異質な存在――黒崎一勇は、霊王の生まれ変わりだったのだ。
生まれ変わりとはいえ前世の記憶はない。だが、その魂魄は霊王そのものである。
生まれながらにして「死神、滅却師(クインシー)、完現術(フルブリング)、虚(ホロウ)」。そのすべての力を宿している。
この事実を知っているのは兵主部一兵衛(ひょうすべいちべえ)だけである。誰にも言っていないし、言う必要もない。なぜなら同じ魂魄でも二人は別人。井上織姫と黒崎一護の息子、黒崎一勇なのだから。
*
ユーハバッハが完全消滅してから、半年が経った。
藍染の力は以前よりも増している。崩玉(ほうぎょく)との融合がさらに進み、魂に馴染んでいく。
だからといって、この霊圧拘束具を破壊するのは不可能だろう。なぜならこの拘束具は、対象の霊圧が増えれば増えるほど、それをさらに吸収していく性質を持つからだ。
「涅マユリめ。忌々しいものを作ったものだ」
――パキッ、パキッ。
突如、藍染の目の前の空間にヒビが入った。誰かが空間をねじ曲げて、こちら側へ来ようとしている。
「珍しいな。私に客が来るとは」
京楽春水か、あるいは生き残りの十刃(エスパーダ)の誰かに違いない。誰にせよ、今の藍染にとっては上質な退屈しのぎになるはずだった。
空間のヒビが広がり、小さな門のようになる。
「あれ? ここ、なんか暗いな」
声と同時に門から入ってきたのは、京楽でも十刃でもなく、幼い少年だった。
オレンジ色の髪の少年は、藍染に近づくと、無邪気な笑顔で言った。
「どうも、ぼく黒崎一勇。おじさんは?」
藍染は、茫然と一勇を見つめた。
「私は藍染惣右介。この世界の頂点に立っている男だ」
「はは、おじさん面白いこと言うね。ここは世界の一番下だよ?」
「……そんなことより。何故、黒崎一護の子がこんなところにいるんだい?」
「おじさん、お父さんの知り合いだったんだ! ここに来たのはね、ここからすっごく大きな霊圧を感じたからだよ」
一勇の言っていることは、めちゃくちゃだった。
尸魂界の最下層である「無間」で、外の者が霊圧を感じ取れるはずがない。百歩譲って感じ取れたとしても、わずか8歳の子供が時空を越えてここへ来られるはずがないのだ。
だが――藍染には、これが面白くてたまらなかった。
(まさか、私の世界(たいくつ)を破壊する(こわす)のが、黒崎一護の息子だったとはね)
「黒崎一勇。私は君に、ひどく興味が湧いた。どうだい――少し話をしないかい?」
暇な時に書いていくので是非たいくつしのぎていどに長い目で読んでください