元魔法騎士の伝説 作:投稿TEST
「おのれ!セフィーロの者共!おのれ!マジックナイトッ!」
紅き魔神が持つ光の剣がデボネアへと突き刺さる
セフィーロの人々が生み出した恐怖の化身は、その身を光に変え空へと還っていく。
「やったわね!光!」
「やりましたね!光さん!」
「うん!これでやっと! やっと……」
3人の視線が紅き魔神の右手に輝く剣へと移る。
「……やっぱり光が柱だったのね」
「光さん、その柱の証は」
「解ってるよ、風ちゃん」
柱の証たる光の剣を空へと掲げる。
「クレフと約束したんだ。もし私に柱の資格があるなら、私の望んでいるセフィーロにしたいと願って良いって」
「でも、それじゃあ!」
「良いんだ、海ちゃん」
少女の脳裏に浮かぶのは、居なくなった人。
この手に輝く光は『セフィーロの柱の証』という枠から解放された力そのもの。
セフィーロを元の世界に戻す事も、死者すら呼び戻す事も出来る力だ。
しかし、全ては叶わない。叶えられない。
叶えられる願いは一つだけ。だから、
「『このセフィーロから柱を無くす!』そしてこれからもセフィーロはこの国を愛するみんなと作っていって欲しい!」
光が収束する。あとはこれを解放する事で少女の願いは叶えられる。
マジックナイトの使命も終わる。もう誰かが涙を流す事がなくなる。みんなが望んだ平和な明日がやってくる。
そう、油断してしまった。
「【魂の■■】」
紅き魔神の胸から腕が生える。
背後から貫かれたと理解するまでそう時間はかからなかった。
「うわぁああああ!」
「きゃあああああ!」
「な、何が!」
その衝撃は凄まじく、紅き魔神はその融合が解け3体の魔神へと分離してしまう。
「ありがとう。本当にありがとうマジックナイト。これでようやく、俺の目的を果たす事ができる」
現れたのは土色の魔神。その右手には柱の証だった輝きが握られていた。
男は奪った輝きを掲げ高らかに叫ぶ。
「聞け!セフィーロの者共よ!そして全ての悲劇の元凶たるこの世界の創造主よ!俺の、俺達の怒りを知るがいい!」
光が漆黒へと染まる。
「セフィーロの崩壊なぞ生ぬるい!俺の願いは『セフィーロに連なる全ての世界の崩壊』だ!さぁ叶えろ『柱の証』よ!」
光が純粋な破壊のためのエネルギーへと変換されていく。
「そんな!」
青い少女が嘆く。
「なぜ!」
緑の少女が問う。
「どうして!」
赤い少女の叫びは空へと消える。
「お前らには悪いが、これが俺の譲れぬ願いだ。阻めるものなら阻むが良い!」
4機の魔神はそれぞれ武器を取る。
今、最後の戦いの火蓋が切られた。
東京タワー。その役目をスカイツリーに移してからはラジオ送信施設兼観光地となった電波塔。
そのメインデッキまで続く600段の階段、そのゴール手前あたりで滝のような汗を流す男が居た。
俺だった。
「なんでっ、今日に限ってっ、故障っ、するんだっ……!」
8月中旬は正午前の炎天下、お天道様は人の気も知らず燦燦と輝いている。
何故俺はこんなクッソ暑い日に150mもある外階段を上るという選択肢をとったのか、理由は単純、メインデッキへの直通エレベーターが全て故障したからだ。
女性スタッフ曰く今朝の段階でメインデッキへのエレベーターがうんともすんとも言わず、また発覚して間もないため復旧の目途も立っていないとの事。
別に絶対今日でなければならないという理由は無いので、日を改めようと踵を返した所で赤い階段が目に入った。入ってしまった。
数分前の俺は何を思ったのか『行ける』と判断し、気付けばスタッフから昇り階段認定証(非売品)を受け取り階段を上り始めていた。
その結果がこの様である。
体力的には問題ないが如何せん日差しがキツい。それ以上に太陽光で熱された階段から照り返す熱がヤバい。深く息を吸えば熱の籠った空気が肺を満たして暑さが跳ね上がる。死ねる。
「つ、着いた……ッ」
汗で肌に吸い付くシャツの不快感に耐えつつ1歩1歩足を進め、ようやくメインデッキに到達した。
「大丈夫?よければコレ、飲んで」
膝に手を付いて息を整えていると水の入った紙コップが目の前に現れた。
どうやらメインデッキにあるカフェの女性店員さんが気を使い持って来てくれたようだ。優しい。好きになりそう。
貰った水は驚くほど冷たく、一口飲めば食道を通って胃に到達する間に体の隅々まで冷気が行き渡る様だ。
「ぷはぁっ! ありがとうございます! 生き返りました!」
「……どういたし、まして?」
お水のお礼を言ったら、どうも歯切りの悪い返事が返ってきた。
店員さんは背が低く帽子を被っており身長差もあって目元が見えないが、じっとこちらの顔を見ている事は解る
「私の顔に何か付いてますか?」
「いや、その……ホラ!こんな日にどうして登って来たのかと気になって!」
「あー、それもそうですね」
周囲を見渡せば人っ子一人居ない。
早朝や夕方からならまだしも、夏場の日中に階段上ってまで来るバカは早々居ないだろう。ここに一人居るけど。
よって目の前の店員さんが気にするのは当然の話だ。
かと言って説明も難しいので、適当な事を言ってごまかそう
「特に理由と言える理由は無いんですけどね、変な話毎年この時期になるとついつい足を運んでしまうんです」
「……この時期限定と言われると、なんだかお盆のお墓参りみたいだね」
「そんな所です。もっとも、地方に就職が決まったので来るのは今年で最後になりますが」
「あら残念。お兄さんカッコいいからお近づきになれるかなって少し期待してたんだけどなー……そうだ!」
お姉さんはポケットから小さく白い袋を取り出した。
袋の表面にはひらがなで『えんむすび』と書かれている。
「この先お兄さんに良いご縁がありますように、ありがたいタワー大神宮のお守り! 効果は保証するよ!」
帽子を深くかぶっており口元しか見えないが、おねえさんは笑顔で新品のお守りを突き出した
お断りしようとしたが「いいからいいから」と無理やり俺の手に収める。
どうやらかなり押しの強い人の様だ。
「実は同じの持ってるんだ。2つも要らないから、就職祝いも兼ねてあげるよ」
そういうと彼女は同じ縁結びのお守りを見せた。
先の物と比べると大分色あせており、使いこまれている事が一目で解る。
何故同じものを2つも持っているのかという疑問はあれど、くれると言うのだからありがたく頂いておこう。
「ありがとうござい」
「それじゃ私は仕事に戻るね! よければ帰る前にお店寄ってって!」
じゃーねー!と、言うやいなや彼女はそそくさとカフェの方へ走っていく。
なんというか、少々騒がs……うるs……にぎやかな人だった。
でもまぁ、うん、悪い人じゃ無いな。身長は低いけどその胸部は豊満だったし。
貰ったお守りを懐にしまい、メインデッキの2階へ。
東京タワーと言えば東京の街並みを一望できる景色が売りだが、今日の目的はそこじゃない。
お守りをくれたお姉さんも言っていたが、この東京タワー内にはタワー大神宮という小さな神社が存在する。
主なご利益は恋愛成就と合格祈願。東京で一番高い所にある神社という事もあり、神様にお願いが届きやすいとかなんとか。
かつて俺が、俺たちがここに訪れたのもそれが目当てだった。
以降毎年ここに来るのはその日を忘れないため、要は感傷に浸るためだ。
「小銭は……」
『……て』
財布の中にはラーメン1杯分に数枚の1円玉。
1円玉を1枚取り出そうとした所で、お姉さんの『良いご縁がありますように』という言葉脳裏を過った。
残念ながら5円玉は無いので、1円玉を5枚出して賽銭箱へ放り投げる。
『……けて』
ゲン担ぎは嫌いじゃない。もしかしたら何かしらの縁を引き寄せるかもしれない。
5枚全て賽銭箱に入った事を確認したら2礼2拍1礼。本来ならこのタイミングで何か願う所だが、今の所恋愛やら合格云々で願いはない。
強いて願うならば、
「日々を健康で過ごせますように。あとは」
『助けて!』
「そう助けて……は?」
頭に響く若い女、いや少女の声。
『助けて!伝説のマジックナイト!』
その瞬間俺は光に包まれた。
TIPS
・スタッフ
帽子を深くかぶっており、身長差もあって顔は見ていない
・「お兄さんカッコいいから~」
社交辞令
・タワー大神宮って?
東京タワー内に実際にある神社
初投稿です。地の文を膨らますの難しい。