オリ主最強ものなんていまどき流行らない
──その男
───音すらも置き去り 戦場を縦横無尽に駆け 敵を狩る姿は
───まさにイカズチ───
銀魂 紅きイカズチ
「ハァ・・・ハァ・・・」
足を引きずりながら、男は何処を目指すとも分からずただ歩いていた。
「ハァ・・・ハァ・・・オレも・・・ここで終わっちまうのか・・・」
十数年にもわたって続けられた攘夷戦争も・・・つい先日終わったばかりだ。
・・・と言っても、この男が参加していたのは、最後の、ほんの数年のことだが・・・
天人VS侍の闘いは、天人側の勝利という形で幕を下した。
この男は、勿論天人などではなくて、敗残兵・・・国のために戦った侍だ。
いや、国のために戦ったというには語弊がある。
───この男は いつだって・・・
守りたい者のために戦ってきたのだから───
──恩師の言葉の通りに──
『己の為に剣を振るうのではない・・・己の魂を護るために剣を振るいなさい・・・』
いつだって・・・この男は魂を・・・仲間を・・・共に学んだ同郷の仲間を守る為だけに剣を振るってきた。
(そんなこと言ったって・・・オレは半分も護れァしなかったが・・・)
最後まで生き残ったのはオレ以外で3人・・・晋にヅラに・・・銀・・・他はみんな・・・取りこぼしちまった・・・
のうのうと・・・オレは生き残っちまった。
(つっても・・・これで死ななきゃの話だがな・・・)
そう思って、男は自嘲気味に笑みを浮かべる。
戦争は生き残ったが・・・オレはこれから幕府から追われることになるのだろう・・・
一騎当千の活躍を見せたオレを・・・幕府が見逃すとは思えない。
(まあ・・・死んでもいいか・・・)
男はそう思った。
晋もヅラも・・・先生の忘れ形見ともいえる銀も・・・死なせずに済んだのだ、人生に・・・悔いはない。
そう思いながらも・・・男は変わらずに歩を進めた。
何があるでもない、無意識のうちに進んでいた。
まるで・・・街灯に集る蛾のように、光に導かれて・・・
「ここァ・・・?」
血を流しすぎたせいか、男の視界はぼやけている。
それでも飛び込んでくる灯りは、暗い道を歩いていた男にとっては刺激が強すぎた。
そして鼻腔をくすぐる香の香りに、男はここが何処であるかを自覚した。
(吉原か・・・)
上を見上げれば、噂の通り鉄の天井が広がっている。
いつの間にこんなところに迷い込んだのだろう。
まあ、気にしても仕方がない事だ。
そう思って、男は思考を打ち切った。
グラリ
視界が揺れる。
どうやら本格的にヤバくなってきたらしい。
まあ、別嬪さんに囲まれて終わる人生も悪くないか・・・
そんな戯言が頭に掠り、男は自分の馬鹿さ加減に思わず苦笑した。
地面がゆっくりと近づいてくる。
どうやら自分は倒れていってるらしい。
そんなことが重たくなった頭の中で過ぎる。
「せん・・・せぇ・・・・・」
『 生きなさい 』
薄れゆく意識の中、今は亡き師が・・・そういった気がした。
「師匠ッ!」
金髪の美髪を小さな苦無の様なもので結わえ、顔に2筋の傷を持つ少女が、先ほどの男のもとに駆けより、そういった。
「血の香りがすると思ったら・・・こんなガキが紛れ込んでいたか・・・」
闇の中からゆらりと男が姿を現し、そんな事をいった。
顔を包帯で覆い、何かを恨むように見開かれたその眼で先ほど師匠と呼んだ少女の方を見た。
「どうするんだ・・・月詠よォ・・・止めを刺すか?」
「そういう訳にはいかないでありんす。」
月詠と呼ばれた少女は、その眼で見つめられても怯むことなく言った。
男はちらりと怪我人・・・の腰にささった刀を見た。
大方攘夷戦争で戦った侍の1人であろう。
興味が薄れるのを感じながら、男は弟子が抱き起こした男の顔を見た。
「・・・ッ!」
最初は血で染まったのだろうと思った男の髪が、男に再び興味をもたせた。
赤い・・・いや紅い・・・
こいつは・・・
「紅きイカズチ・・・紅上 夢道。」
ふと漏れた言葉に、どうやら少女は気づかなかったようで、少女は男を、肩を組むように起こしていた。
「なら・・・早く部屋に運ぶぞ・・・」
「ここァ・・・」
夢道は不意に眼を覚ました。
「お前さん・・・起きたかい・・・」
「・・・っ!!!」
その瞬間、目に飛び込んできたものは顔中に包帯を巻き付け、思いっきり見開いた眼でこちらをみる男の姿だった。
「なんだァ・・・最近の地獄じゃあ傷の手当でもしてくれんのかい。」
よく見れば自分の体も包帯が巻かれている。
「馬鹿なことを言うな、ぬしは助かったんじゃ。」
ふと声のした方を見れば、ぬれた手拭いを持った少女がこちらを半目で見ていた。
「まったく失礼な怪我人もいたもんだァ・・・」
包帯を巻いた男はふと立ち上がり、窓の方へと向かっていく。
いつまでも世話になる訳にもいくまい・・・
そう思ってオレは自分の上半身を起こした。
ズキッ
「うっ・・・」
傷が痛む、視界も揺れる・・・どうやら万全の状態とは言い難いようだ。
「ぬしっ!まだ寝てなんし!!」
自分を寝かそうとする少女に大丈夫だといい、オレは男の方を見る。
「あんたが・・・助けてくれたのか?」
男はこちらを向き首を横に振った。
「いや・・・お前さんを助けたのはオレじゃない・・・そいつだァ。」
そして顎で先ほどの少女を指した。
「お前さんを此処に連れてきたのも・・・その傷の手当てをしたのも・・・全部そこの月詠だァ。」
その言葉を聞いて、オレは先ほどの少女の振り向いた。
「お前が・・・っ!?」
「あ・・・ああ、師匠の言うとおりぬしの世話をしたのはわっちじゃ。」
ガバァっ
オレは自分の寝ていた布団を飛びだした。
そして、目の前の少女に片膝をつき、頭を垂れる。
「月詠ちゃんっ!オレァこの恩は絶対に忘れねェ・・・一生をかけてでもこの恩・・・報いてみせる・・・っ!護ってみせるっ!!」
「ククク・・・彼の 紅きイカズチ に、んなこたぁ言わせるとは オレの弟子も偉くなったもんだ・・・」
「知っていたのか・・・」
「ああ・・・だがなぁ・・・
───オレの美しい月を汚すなよ───
シュッ
後ろから恐ろしいさっきと共に何かが飛んでくるのを感じる。
オレは振り向かずにその攻撃を指に挟むことで回避する。
ギンッ
右側から切りつけてくる男を先ほど手にした苦無で迎え撃つ。
「オレの一撃を此処まで回避するたァ・・・さすが白夜叉等と肩を並べただけはある・・・」
「それをわかっててここまでやってくれるたァ・・・あんた何モンだァ・・・」
「ただの・・・蜘蛛さ・・・」
シュシュッ
「チィイイイイイッ!」
飛んでくる苦無を回転しながら避け、部屋の片隅に立てかけられた自身の愛刀に手を伸ばす。
男がそれはさせぬと苦無を手にしようと懐に手を伸ばすが・・・
「──遅い──」
高速の脚 神速の剣と恐れられた・・・
・・・このイカズチの力を魅せてやろう・・・・・
「っぬ・・・ぬしッ!止めぬかっ!!!師匠もっ!!
わっちはもう女は捨てた・・・護ってなどもらわんともよいっ!!」
少女の言葉に剣呑とした場の空気が和らぐのを感じた。
「ああ、すまねえな。ありがとよ・・・またな。」
クシャっと少女の髪を撫で、オレは窓から飛び出した。
少女の真摯に師を慕う姿・・・幼き頃の自分らを思い出したものだが・・・どうやら師の方は似ても似つかんらしい・・・
ふと・・・空を見上げた。鉄の空が広がっている。
そういえば・・・宙に行った友は元気にしているだろうか?頭は抜けているが・・・剣の腕は素晴らしかった。あいつなら大丈夫だろう。
オレは・・・護りぬいてみせるよ・・・先生・・・
己の魂も 友も 恩人も
───この手で───
~開幕~
いかがだったでしょうか?
しばらくは原作前のエピソードを書いて行こうと思います。