あと月詠さん、誕生日おめでとう。
──なァ・・・知ってるか?
──んァ?どーした?
いきなり んなこと言われても分かりゃあしねーよ。
──ああ、そーいやそうだな、あれだよ『鬼』の話。
──うーん・・・知らねーなァ。なんだそりゃ?
──なんでも、ここ吉原で問題を起こした奴が連れてかれるらしいぜ。あの世に。
──オイオイ、そりゃ百華じゃねーのか?
──違う違う・・・いや、違く・・・はねェ・・・のか?とにかくそいつと百華は全然違うんだよ。
──何が違うんだ?
──傷痕だよ・・・百華は忍びの技を使う。『鬼』の傷は・・・ありゃ刀傷だ。
忍びっちゅうのは一撃で殺すために急所を狙うんだ。百華の傷とは違う。
──へぇ~、そんな奴もいんなら・・・ここで悪さできる奴なんてもいねーだろうな。
──夜王のもとで悪さできる奴なんてもっといねーだろ?
──ハハッ!それもそうだな!!!
「なぁ・・・月詠ちゃん・・・。」
「どうしたんじゃ、いきなり。」
地雷後初めてやりあって4年、戦争が終わってから約5年がたった。
あれから何回かやりあってはいるが・・・正直めんどくさい。何が嬉しくて命のやり取りをしょっちゅうやりたいもんか・・・。
あいつの過去は調べようとしてんだが・・・ちっともわからねェ。
最初の時だけ見せた・・・あいつの顔・・・何かしらあんだろーとは思ってんだがねェ・・・。
今、オレは月詠と吉原の茶屋で話している。
「イヤァ・・・月詠ちゃん・・・あんたエライ別嬪さんになったもんだなァ・・・」
もう二十歳くらいだろうか?おっぱいもケツも・・・こうプリッとしててたまにこうして会うと・・・こう・・・何と言うか・・・ムラってくるときもある。
「わっちはもう女は捨てんした。そんな戯言2度と申すな。」
月詠ちゃんは心底呆れたように、煙管をふかした。
「・・・そりゃ何回も聞いてるんだがよォ・・・まあいいや、とりあえず今夜あたり一発しけこまね・・・」
オレの言葉は最後まで紡がれることなく、月詠ちゃんの無言の・・・苦無という名の抗議が額に突き刺さった。
キュポンッチュー
そんなマヌケな音をたてながらオレは苦無を引き抜く。
「・・・戯言はいうなと言ったでありんしょうッ!次そんなことを言ったらわっちが牙をむくぞッ!!!」
顔を真っ赤にして、月詠ちゃんが声を荒らげた。
「・・・え・・・もう出てるよね!?もうむいちゃってるよね!?命刈り取る気ィマンマンだよねェェエエエエッ!!!」
「うるさい。そんなに女を抱きたいなら買えばいいじゃろう。」
それだけ告げると、月詠ちゃんは足早に店から去って行った。
「・・・って、自分の分の金くらい置いてけェェエエエエっ!!!」
「ちっ・・・財布がすっからかんだ、あいつどんだけ喰いやがったんだ・・・」
ただでさえ仕事の方が順調じゃないというのに・・・
オレは今、浪人からかっぱらったもん売ったりして、商いの真似事みたいなもんをしている。ノーリスク低リターンこそ最上だね。
「ったく、オレァさながらうしとらのとらが如く、あいつのことを護ってやってるちゅうのに・・・ちと厳しすぎやしないかね。」
そんな文句を垂れながら、オレは吉原の町を歩く。
「喰っちまうぞ、コラァ。」
そう呟き、オレはふと上を見上げた。そこには一人の女がいた。
吉原の太陽、日輪
月詠もあの夜王も・・・あいつにどうも入れ込んでるらしい。
3年ほど前にいろいろあったらしいが、生憎オレはその場にいなかった。
太陽ねェ・・・
「オレァ月見酒の方が好みだがね。」
きっと地雷亜もそういうだろう。そう思ったらなんかイラッとして、オレは目の前の小石を蹴飛ばす。
コロンコロン・・・カランッ
石が飛んだ先、そこには一人の男がいた。
──蝶をあしらった派手な着物、片目を包帯で隠し、残ったもう一方の眼で何を視るのか・・・?火を付けてない煙管を咥えた馴染みがそこに立っていた。
「随分なぬるま湯につかってるじゃね―か・・・」
「晋・・・っ!!!」
我が愛すべき友人が・・・妖しく笑った。
「お前・・・今何してんだ?」
晋に連れられ入った宿の一室で、オレはあいつが口を開く前に単刀直入に切り出した。
「昔と変わりゃしねーよ。」
「そうか・・・」
晋がぶっきらぼうに答えた言葉に、オレは短く返す。
そうは言ったものの、オレは気付いている。こいつはどーしようもなく変わっちまってる。・・・あの時から・・・先生が死んだその日から・・・
「なァ夢道・・・オレと共に来ねェか?オレと共に・・・この腐った世界を壊さねェか・・・?」
「鬼兵隊に・・・入れ、夢道。」
「なァ・・・晋。オレァ昔からなんも変わっちゃあいねーよ。」
「あァ?」
胸ポケットからタバコを取り出し火を付ける。
「鬼兵隊作るったって・・・どうせてめーは動きやしねェんだろ?
確かに先生を奪ったこの国は憎い、仲間を奪った天人は憎い・・・それでもオレがやることは何一つ変わりゃしねーよ。」
「それで?」
「お前が再び剣を振るうなら・・・その時なら力を貸すぜ・・・再びお前の背中を護ろう。
・・・それじゃだめか?」
「ククッ、それだけ聞けりゃあ満足さ。」
そう笑って、晋はピッと一枚の紙をこちらに投げつけた。
「オレの番号だ。必要になったら呼ぶ。」
それだけ言い残して、晋は宿を後にした。
「ったく・・・人生ままならないもんだねェ・・・」
ほとんどフィルターだけになったタバコを、オレは憎々しげに手のひらでもみ消した。
「ほう・・・この夜王の庭に『鬼』が出ると申すか・・・」
「はい・・・鳳仙様・・・」
遊郭の一室、遊女を侍らかし酒を呷りながら、ここ吉原を統べる男 夜王 鳳仙がそういった。
機嫌がいいのだろう、良くない知らせを笑みを浮かべながら聞いている。
そんな鳳仙を前にして戸惑わずにいられないのは、その知らせを報告した百華の1人だ。
ここの主には報告しておいた方がいいという頭の判断でここまで来たが、はっきりいって居心地が悪い。
気分次第で自分など、虫のように踏みつぶすこともできるお方だ、そんな人を前に心を休めることができるだろうか、イヤできない。
「ねぇ・・・そいつって強いの?」
眠そうな眼をこすりながら先ほどまで部屋の奥で寝ていた少年が声を発した。
「い・・・いや・・・それは・・・」
「オレは強いかって聞いたんだヨ、オネーサン。」
「お・・・おそらくは!!」
「そっか。」
そう言って少年は立ち上がる。
「ヒッ・・・」
「ひどいなー、そんなに怖がらなくたって殺したりしないよ、女はいずれ強い子を産むかもしれないからネ。」
「という訳で師匠、いってきていい?」
少年は無邪気な、年相応な可愛らしい笑みを浮かべながら鳳仙に問った。
「神威・・・貴様の好きにしろ。」
ニッとその笑みを深めて窓の外へ飛び出した。
「フンフンフ~ン♪」
鼻歌交じりに紫煙をふかしながら、夢道は吉原の町を歩いていた。
「ったくどーしたもんかねェ、作者がオレのキャラづけに迷ってやがるよ。かなりやばいからね、マヨやあんこみたいなおかしいもんメシにかけるキャラにしようか、とか迷走してやがんだよ。」
夢道はそんなことを呟き、上を見上げた。
「・・・いつみても殺風景な空だねェ。全く嫌になる。
ってなんだありゃ?」
何かが降ってくる・・・人・・・か?
それと共に身にまとわりつく久しい感じ・・・
これは・・・殺気!!!
夢道は仕込み杖を抜き、いずれ襲い来る衝撃に身を構えた。
ゾクッ
嫌な予感がして、オレはなりふり構わずその場を飛び退いた。
「ねェ・・・オニーサンが・・・『鬼』?」
ズガァ──z__ンッ
衝撃と共にあたりにコンクリートの破片が飛び散る。
あれをまともに受けようと思ったらちと骨が折れるな・・・やはり避けておいて正解だった。
今ので落ちてしまったタバコを踏み消し、もう一本取り出し火を付ける。
「うん、間違っていないヨ。オレたち夜兎の攻撃は生半可なモンじゃないからネ。」
砂煙の中から若い男の声が聞こえる。
「チィッ!!」
刀の先を男の方に向ける。
「でもあれを避けるってことは・・・オニーサンが『鬼』ってことでいいんだよネ??」
砂煙の中から現れたのは、まだ元服して間もないくらいの齢の少年だった。
「オイオイ、なんの冗談だァ?ガキが色街でこんな夜遅くに・・・
お母さんが心配してるよ?早く帰りなさい、今なら許して上げるから。」
「そんな心配いらないさ、オレ達の家は戦場だ。」
「オレと殺りあおうって言うのか?これはおかしい。」
「オレは本気だヨ。」
ハッハッハ、とお互い笑いあいながら距離を詰める。
ガキン
刀と傘がぶつかり合う。
火花が飛び交う衝撃の中、2人は口を歪めていた。
(・・・チッ、やっぱ力は負けるか・・・?流石は夜兎だな・・・ったくオレが何をしたっちゅうんじゃ・・・)
夢道は右足を上げ、夜兎の少年に蹴りを入れ、後ろに飛ぶ。
「うん、悪くない。」
しかし少年はそんなものはものともせず、離れる夢道との距離を詰め、傘を振り上げた。
「・・・んなっ!!」
マズイっ!体勢が悪い、受けきれない!!
・・・だが・・・
「避けれねぇ訳じゃねェ・・・。」
地面に足がつくと同時にオレは奴の後ろに回る。
まさか避けられるとは思わなかったのだろう、細かった眼を見開いて驚いている。
「なんだァ・・・ゴリラの手抜きだと思ってたが・・・ちゃんとパッチリ開くじゃねぇか。」
オレは袈裟懸けに男を切り裂いた。
しかし男は身をよじらせて、致命傷を回避する。
「諦めな、テメェ程度のガキにやられてやるほどオレァ弱くはないぜ。」
「何言ってんの?こんな楽しい事止められるはずないじゃん。」
「楽しいねェ・・・これだから戦闘民族は・・・ジャンプはもうそーゆーキャラは腹いっぱいなの、そんなキャラ作ったってドラゴンボールには勝てないの、勝ててもヤムチャくらいだから。」
「オニーサンは楽しくないの?」
ギンッ
男は傷を気にせず傘を振るう。
「ああ、楽しくないね。」
「嘘つかないでよ、オニーサン・・・笑ってるよ。」
「・・・・ニヤッ。」
ギンッ
「あんたはオレと同じにおいがする・・・人を殺すことが・・・楽しいと思うやつだ・・・。」
ギンッ
「楽しくなんかねぇよ・・・ただ・・・そーゆー風に育てられただけさ。」
「・・・オニーサン、壊れてるネ。」
「・・・・・ああ。」
グァギンッ
さっきと同じつばぜり合いのような形になる。
「それでも・・・ボロボロに壊れたオレが・・・。」
こいつら夜兎は実に分かりやすい。
オレは咥えたタバコを男の顔に吐き捨てる。
「必死に建てたこの一本の柱ァ・・・」
普通は避ける、そして体勢が崩れたところを切りつける。こいつはオレがそれを狙ったと思っているだろう。
・・・だから、こいつは向かってくる。
男は頭突きをしようと、火の付いたタバコをもろともせず向かってくる。
「テメェに折らせてやるほど・・・・・
・・・・・やわなもんじゃねぇんだッ!!!」
刀を横にずらした、傘が当たり、体が軋むがそれを気にせずオレはこいつを切りつける。
バキッズシン
不意に、目の前に何かが通った。
「おいおい、旦那のお弟子さんよぉ。あんた、こんなところで何をやってんだ。」
通ったのは傘だった。
「・・・阿伏兎・・・。」
「さて、浪人さんよぉ。人生ってなァ重要な選択肢のなんていうが・・・あんたどっちを選ぶ?
・・・退くか・・・それとも夜兎二匹を相手取るか・・・だ。」
阿伏兎と呼ばれた男は、少年の言葉を無視して話を続ける。
「何言ってんの、阿伏兎。これはオレのモンだヨ。お前は引っ込んどいて。」
「うるせーやい、ガキ。お前さんみたいなのでも・・・いずれはオレ達を背負って立つ若モンだ。こんなとこで散らすわきゃいかねーんだ。」
「オレは無視ですか、コノヤロー。」
「・・・ああ、そうだったな。んで、どっちにすんだい?こっちも勝負に水差しちまったなァわり―と思ってんだ。」
「・・・退かせてもらうよ。多対一は苦手でね。」
「・・・まあいいや、興もそがれちゃったし。オレの名前は神威・・・オニーサンはいずれオレが殺すから・・・覚えといてね。」
そう言って2人は屋根の上を跳ね、吉原の夜に消えていった。
「なんというか・・・まぁ、厄介な事になったもんだ・・・」
オレには平穏というものはないのかねェ・・・?
そんなことを呟きながら、オレはタバコに火を付けた。
尻切れトンボ感が隠し切れない・・・
とりあえず決めた主人公の設定
サンデー派でヘビスモ、空気は読めない。