バカとテストとクロガネカチューシャ   作:おーり

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原作に若干忠実な第8話
しかし説明回
ストーリーラインはある程度沿って行いますが、キャラが原作とは若干の別物になりますので変更点があるというのは必須かと思われますがどうな以下略


『とある老婆の交換条件』

 

 きれいな消臭炭に変わった竹原教諭をメイド明久が優しく介抱したことで復活。

 その辺りは、若く女生徒から甘いマスクで人気だとかいう教頭でも男性だったということなのだろう。自身を消し炭にした犯人の片棒とは気づかずに、介抱した明久に紳士的な態度のまま、よろよろと足取り悪くも部屋を去っていった。

 多分、明久が男子だということにも気づいていないと思われる。若干気を好くしたようにも見えていたのだし。

 結局はメイドが好きなのだろう。男である。助平な。

 

 

「で、あんたらは結局何しに来たんだい」

 

 

 竹原が去ったことで、ようやく藤堂カヲルが口を開いた。

 そういえば、と思い出した雄二が前に立ち、答える。

 

 

「Fクラスの坂本と吉井です。学園祭の出店の際の許可をいただきにきました」

 

「ん? その辺りはほかの教師に一任してあるはずだけどねぇ」

 

「どうも学園長の許可をいただかないことには駄目だとか言われてしまいまして。お願いします」

 

 

 珍しく敬語をしっかりと扱う雄二に、明久は驚愕の視線でそれを見やる。

 そして、雄二から差し出されたサインを書き入れる必要のある許可証を流し読み、藤堂カヲルはばっさりと切り捨てた。

 

 

「――却下だね」

 

「ふざけんなこのババア」

 

 

 思わずそう切り返した雄二を見、ああやっぱりいつもの雄二ですね、と明久がつい安堵していたのは秘密である。

 

 

 

   『第8話

    とある老婆の交換条件』

 

 

 

「――失礼、どういった理由で許可をいただけないのか、ご説明いただきますでしょうか」

 

「あんたが吉井かい? うわさの観察処分者の? 女子とは聞いていなかったけどねぇ?」

 

「関係のある話なのですか?」

 

 

 すっ、と激昂した雄二に代わり前へ出てきた明久に、カヲルは訝しげな視線を向けた。

 それに臆することなく、明久の視線はカヲルを睥睨したまま、投げかけられた不躾な質問に質問で返した。対応は悪手と見て取れるのだが、カヲル自身無礼な態度であることを自覚しているのか、老婆からの叱咤はない。

 

 その質問には応えずに、視線を向けていたカヲルは鼻で笑うような仕草を見せ、

 

 

「――ま、それはともかく

 この許可証には、学祭で稼いだ資金を自分たちで使わせてくれと言ってるじゃあないか。学業の一環である学園祭で動いた資金とはいえ、金が流れることには変わりないんだよ?

 仮にも進学校であるここで、そんな真似が学生に許されるとでも?」

 

「明久、召喚獣を出せ。このババアを必殺技で千切りにしてやれ」

 

「雄二はちょっと黙っていてもらえますか

 しかし、その資金の用途はそこにも記されているはずですが。自分たちで教室の設備を整えることに問題でも?」

 

 

 確実に自分らを下に見ている発言で逆鱗を撫で回す老婆に、雄二が真っ先にプチ切れる。しかし、そこはメイド長の面目躍如。落ち着いて対話をこなそうと、明久が質問を重ねた。

 

 

「表記通りに使われるかなんて確実とは見えないねぇ

 あんたらは新学期早々に試召戦争を引き起こした問題児筆頭じゃないかい。口約束程度の効力しかない紙切れじゃあね」

 

 

 そこを突かれると確かに痛い。しかし、彼らもただで帰るわけには行かないのだ。空手で帰ればメイド長よりも恐ろしいキックの鬼に再び蹴り出されるのは必至である。

 なのでこの場にて話をつけるべく、明久は思考を働かせつつ、

 

 

「では、何か代わりになる約束では如何でしょうか?

 その許可証をいただく代わりにこちらから条件をクリアする、ということでも許可はいただけないものでしょうか?」

 

 

 と、交換条件を提案してみた。

 

 その瞬間、老婆の目がにやりと変わったのを、明久も雄二も見逃してはいなかった。

 しかし、それを口にはしない。

 

 

「そうだねぇ

 それじゃあ、一つこういうのはどうだい?」

 

 

 そんな二人の視線に気づくことなく、藤堂カヲルはとある条件を提示した。

 

 

 

     ◇   ◆   ◇   ◆   ◇

 

 

 

「おかしな条件だったな」

 

「そうですね。召喚大会、ですか」

 

 

 学園長室を出てFクラスの教室へと戻ってゆく、男子とメイドとロボが合わせて三人。

 結構人目を引くのであるが、どいつもこいつも既に慣れきってしまっているのか、そんなちらちらとした視線を物ともせずに歩みを止めずに会話を交わす。

 内容は、先ほどの学園長室内で行われた交渉のことだ。

 

 

「大会で俺たちが優勝すれば売り上げを設備購入資金として認める

 ……普通におかしいよなぁ」

 

「ええ、まったくおかしな話ですよ。念のためにレコーダーで記録しておいて正解でしたね

 いつかのときのために弱みの一つとして隠し持って置きますか」

 

「お前、いつの間に……」

 

 

 気づけばハナからMDを受け取っている明久に若干引いてしまいそうになる雄二。順調に腹黒く成長しているようで、そうなっている原因に心当たりが多すぎて同情を禁じ得ない。

 個人的には常識人という名の癒しでいて欲しいものだ、と内心思いつつ言葉を続ける。

 

 

「ま、それはともかく

 狙いは何だと思う?」

 

「如月ランドの優待券が表沙汰になるのを避けたい、とは言っていましたが、それも建前だと思いますね」

 

「だな。あのババアが生徒の将来がどうのこうのと言い出したときは何の冗談かと思ったぜ」

 

 

 わずか数分で人物像をつかんでしまった老婆の台詞回しを思い出し肩を竦め、

 

 

「何よりおかしいのが、

 ハナを出場させることをあっさりと認めたってことだ」

 

 

 そんな、別の世界線とは違った事情をさらりと語った。

 

 

 

     ◇   ◆   ◇   ◆   ◇

 

 

 

「召喚大会に出場する?

 却下よ」

 

「落ち着け島田。出るのは明久じゃなくて俺とハナだ。メイド長は出場させないように交渉したから店のほうは何とかなる」

 

 

 開口一番に却下される交換条件であったが、まそりゃそうだよなー、と雄二も自覚していた。

 

 何しろ件の召喚大会、要するにトーナメント形式のエキシビジョンマッチのようなものである。賞品こそ用意されているものの、その本質は学園に投資している企業らへの経営者側からのアピールのようなもので、その癖やることは試召戦争と変わらない。生徒らに召喚獣で競い合わせるのだから、勝ち上がってゆくのは常識的に考えて成績のいい生徒ばかりとなる。

 そこに学年最底辺のFクラスが関わること自体、普通ならば冷やかしかと思われても仕方のないことであった。

 

 如月ランドの優待券≪ペアチケット≫の事情は隠しておきたい、という建て前も聞いているので、不本意なのだが雄二としてもその事情は話すわけにはいかない。だから、予め想定しておいた事情を説明する。

 

 

「学園長の話だと、やっぱり俺らに自分たちで金を動かすのは認められないというらしい。

 まあ学生の身でもあるし、俺らは新学期早々戦争を起こした問題児らしいからな。設備購入資金だと説明しても信用してはもらえなかった。

 ま、仕方のない話だな」

 

「それがどうして大会につながるわけ?」

 

「ま、聞け。

 必要なのはルールを守る、という証拠だ。そこで学園長先生からのありがたーい御下致が、召喚大会で優勝して見せろ、という無茶振りだったわけだ」

 

「それこそ無茶じゃないの!

 そんなのを黙って承諾したわけ!?」

 

 

 当然の如く激昂する島田。だが雄二はそれも想定済みであったようだ。

 

 

「当然ながら俺たちも抗議した。

 しかも出場を促されたのは俺と明久だったからな。俺はともかく明久は仕事が山積みだろうから元より無理だと答えたわけだ」

 

 

 ちらりと見れば、既に働いている明久は男子らに指示を出し、教室の飾り付けを次々と組み上げてゆく。その様はまるで戦場に咲く花のように凛としていた。

 

 

「そこで代替案を出したんだ。

 そもそも独自の技術でもある召喚獣システムをお披露目するのに、それを『学生にしか扱えません』じゃアピールする意味がない。そこで明久の替わりとしてハナが出ることになったわけだ。

 学生以外の部外者にも扱えるのならばいいアピールになる、ってんで学園長も了承してくれたよ」

 

「でも、最終的に優勝しなくちゃ稼いだ資金をこっちで使えないのよ? 勝つ充てはあるの?」

 

「ま、なんとかなるさ。

 駄目でも稼いだ金を教師に渡してそれで設備に当ててくれ、っていう方法が使えないわけでもないしな。

 欲を言えば自分らで使い道は決めたいが」

 

 

 聞き耳を立てていた明久が、よくもまああそこまで口が回るものだ、と嘆息した。

 当然誰も気づいちゃいないが、雄二はまだ正式な『自分たち』の理由を語っていない。

 しかし、語り終えたそれに対して島田は文句を言うことなく納得しているようであった。

 

 

「ふぅ、まあ仕方ないのかしらね

 けど、やるからには絶対勝ちなさいよ? Aクラス戦のときみたいな無様を晒すなら、今度は私が引導を渡してやるわ」

 

 

 しかし怖い。

 現在の取締役を担っている島田に雄二は思わず身を竦めた。

 そのさまはとてもではないが、中学時代に悪鬼羅刹と呼ばれたようには見えなかったという。

 

 

 

     ◇   ◆   ◇   ◆   ◇

 

 

 

 ところで、件のペアチケットを入手するのはともかく、その使い道がどうにも浮かばない。

 なんせ学園長の話ではその優待券≪ペアチケット≫は結婚をプロデュースするものらしく、学生に賞品として渡すには過剰すぎるからこそ学園長は懸念した、というのが表向きの理由だからだ。

 そんなものを手にしても、自分で使うつもりも無ければ、まかり間違っても自身の幼なじみにも渡すつもりもない、と雄二は考える。

 

 いっそ明久に手渡して、姫路か島田でも焚き付けるのも面白いかもしれない。

 

 そう結論付けて、果たして本当の理由は何なのだろうか、と別の方向へと思考を走らせる。

 自身の死亡フラグを見事に打ち立てたことに気づかぬままに……。

 




勝っても負けても、雄二終了のお知らせ
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