仕事やら何やらで『嫁魂』に手がつけられなくなって2026年になってしまいました。そしてようやっとひと段落したら………
『何をどう書きたかったんだっけ?』この有様で……
その間によう実を見たら見事にどハマり。設定は総介たちをそのまま持ってきて仕事中頭の中で妄想し続けて……1年くらいが経ってようやく執筆できるタイミングができました。
『嫁魂』の方も、並行するのは難しいですが、なんとか続きを投稿出来るよう頑張ります。
この作品に出てくる総介、海斗、アイナを始めとした【大門寺】の勢力は『嫁魂』とは違う世界の設定です。この世界には五つ子や上杉風太郎は存在しないのでご理解の程よろしくお願いします。
そして物語は基本一人称視点で進めていきます。
第1話『"異形者"ども、例の教室に行くってよ』
人間の運命なんてもんは、初めから決まっているのかどうか……
あの場所で起きた様々な出来事……
あの時出会ったアイツ……
そいつや、色んな奴らと過ごした時間……
あの時即興で思いついたギャグ………ん?
ニッチ過ぎて誰も理解できず滑ったあの空気………ん??
唯一理解してた女生徒からは鼻で笑われたあの屈辱………んんん???
……コホン、少々脱線しちまったが、何よりも1番は……
あの場所へ行かなければ、俺は『あの子』に出会うことはたぶん一生無かった……
だがそれすらも、運命とやらの悪戯だったのかどうか………
全ては『神様』とやらが仕組んだものなのか……
だとしたら、俺たちは永遠に"自由"を得られない『運命の奴隷』なのだろうか………
…………………………
ー大門寺邸ー
「コードE?……高校?……なんて?」
「"高度育成高等学校"、だよ。3ヶ月後、僕たちが入学する、全寮制の国立高校さ」
「父からそこに入学して3年間潜入調査するように、との御達しよ。あんたと若様、私の3人でね」
「たかだが高校の潜入調査ごときに【
「丁度僕らが全員同い年だから、行くなら全員の方が良いだろう?それに、今までに比べればだいぶやり易い。3年間いち高校生として普通に過ごすだけで終わりなんだから」
「……まあな」
思えばこの3年間、色々あったもんだ。
俺こと『
しかしこれがまた特大じゃあすまねぇくらいのアドベンチャーだったんですわ………
ある時は東アジアのとある大国に行って人身売買してやがるマフィアどもとの抗争に巻き込まれて死にかけたり、
ある時は東南アジアの犯罪街でそこでも各国マフィアとの抗争みてぇのに巻き込まれて死にかけたり、
ある時はフットボール発祥の国の貴族同士の権力抗争のドタバタに介入して死にかけたり、
ある時はでっけぇピラミッドとかスフィンクスが建ってある砂漠の地で古代遺跡の宝を独り占めしようとする輩どもとの争いになって死にかけたり、
本国にやっと戻ってきたと思ったらとある街で起こってる連続殺人鬼を解明、犯人をしょっ引くor始末しようとして死にかけたり、
上から見たらブーツの形をした半島とピザが有名なあの国で、麻薬を売買するギャングを打倒するために死にかけたり、
世界一経済力のある自由の国で意味不明なことをほざきまくる宗教家を相手に死にかけたり、
とにかくもうほんっっっっっとに死にかけまくった……たぶん普通の人間が一生で死にかける100倍は死にかけた自信はある。
まぁその下衆どもも最終的には全員もれなくブチ殺してやったor勝手に死んだが……
しかし、その幾多もの死線を潜り抜けた結果が、今の地位と平穏であるわけで……
最後に死にかけた中学3年の春から、今の1月始まりぐらいまでは、特に何もなく、このまま海斗の実家で働くことは決まっているとしても少なくとも高校は出とかねぇといけねぇなぁ〜と、漠然とした感じで受験勉強に励んでいた。
そんなところにいきなり俺たちの若様からの『進路決定』の通達だ。寝耳に水にも程がある。
「つってもそこは国立で、しかも名前的にいかにもエリート校だぜって字面から考えるに、相当レベルが高そうなんだが?お前やアイナはともかく、俺がそこでついていける気がしないんだが?っていうか、そもそも入試で合格できる気がしないんだが??」
「その辺りは心配いらないよ。これは学校側、もといそこの『理事長』の個人的の依頼でね。その理事長は、『
「おい待て。この学校の理事長直々の依頼だぁ?何で学校のトップが、テメーの学校の調査を依頼してくんだよ?」
「それについては、剛蔵さんも一切教えてもらえなかった……いや、“教えられなかった''、が正解だろうね。何せ政府が管轄している学校だ。埃なんて叩けば出てくるさ」
「………そりゃあまた随分と、きな臭ぇもんで」
政府が直接運営してる学校って時点で、怪しい匂いがプンプンしやがる。一体何が隠されてんだか……
「てか、アイナも来るのかよ?剛蔵さんがよく許可出したなオイ」
「私は若様のお付きなのよ?同行するに決まってるでしょ。あと、パパはもれなく『ヤダヤダ期』に入って書斎に引き篭もったわ」
「だろうな」
あの人の超親バカは何とかならないものだろうか……この前も『アイナちゃあ〜ん!久しぶりにパパと一緒にお風呂にry』の後にオッサンの断末魔の叫び聴こえてきてたし。まぁ、子離れする良い機会なんじゃあねぇか?シランケド。
すると、海斗がそういえばと何かを思い出したかのように口にした。
「今回の件を依頼してきた理事長なんだけど、"娘さん"がいるらしくてね。僕達と同学年で、同じ年に"高育"に入学するらしいよ」
「あっちにも娘さんいんのか……んで俺らと同じ裏口かよ。理事長も大概な親バカだな」
「そうでも無いよ。その子はとても頭が良くてね。学力もそうだけど知性もあって、受け答えも大人びているから、普通に正規の方法で入学出来る実力は持ってるよ。
もしかしたら、僕より頭がいいかもね」
「お前より頭良いってんなら、たぶんその娘は【アカシックレコード】にでも辿り着いたんだろうな』
星のように輝く銀髪を揺らして笑いながら何を世迷言をぬかしてんだこの超絶イケメン野郎(腹立つ)は。海斗のような『ノイマン』とか『ラマヌジャン』とか『サイディス』に勝るとも劣らねぇバケモノ脳みそを持った奴がこの世の中にポコポコ現れてたまるかってんだ。
「彼女とは何回か会食の機会に話すことがあったんだけど、中々面白い子だったよ。でも最近は会ってないかな……
あ、そういえば総介も、僕の護衛の名目でついてきたときに見たことあるんじゃないかな?身体が弱いから杖をついてる子なんだけど」
「俺らと同じ歳で杖、か……気の毒だな。だがすまねぇ。悪いがまったく覚えてねぇ。遠くから見えたり、すれ違ったことあるのかも知れねぇが、その程度じゃ知り合いの内って勘定にも入らねぇだろうよ……」
……まさかこの時に海斗の言葉を何一つ気にも留めておかなかったことが、後々の俺にとってもあんなことになっちまうとはな……
世の中わからねえってなもんだ。
「まぁアレだ。お前が言うなら優秀な子に違いなさそうだし、しばらく会ってねぇんだろ?お前と知り合いなら向こうから声かけて来るんじゃあねぇか?」
「かもね」
「それで総介、あんたにも一応この任務を選ぶ『自由』はあるけど、どうするの?」
話の間にアイナが割って入る。
「そうさなぁ……お前らと3年離れるのは別に構わねぇが、その間に1人で
しゃあねぇ。俺も行くとするか。今までの『旅』よりもだいぶ楽そうだしな」
「清々しいまでに不純な動機ね。せっかく【懐刀】に昇格出来たんだから、少しは自覚持ったらどうなの?」
「固ぇこと言うんじゃねぇよ。こっちだってせっかく手に入れた平穏を3年分捨てちまうことになるんだ。これぐらいのモチベになっちまうことぐれぇ許してくれや」
俺の言葉に軽く呆れたようで、ハァ〜、とため息をついて肩を落とすアイナ。お前は石頭過ぎるんだよ。海斗や家への忠誠も立派なことだが、もうちょい力抜けっての。
「まあまあ、いいじゃないか。今回は期間は長いけど、高校生活の中での調査を主体とした任務だ。重ねて言うけど、僕達が今までこなしてきたものより、幾分も難易度は下がっている。3人全員が昇格出来たお祝いだと思ってゆっくりするとしようよ」
「だな」
「……承知致しました」
海斗の提言には、アイナも黙って従うしかないようだ。いいのかそれで?思考停止になっちゃあいねぇか?
「ああそれと、流石に"得物"は学校には持っていけないし、僕らの端末やパソコンもあっちには持ち込めないから、2人とも注意しておくようにね」
「っ!?な、何ですって!?若様、そのような事、私も初耳です!銃はともかく、端末もNGなのですか!?」
「生徒には外部との連絡手段は一切遮断されるらしくてね。だからこそ学内で何が起こっているかは知ることは出来ないし、もちろん大型連休の際の帰省も禁じられている。一度入ったら最後、退学か卒業するまでは敷地外には出られないとのことだよ。よって、アイナご自慢のオリジナルノートパソコンともしばらくはお別れすることになるね」
「そ、そんなぁ……」
あまりにも残酷な(アイナにとって)海斗の宣告にアイナは肩を落として落ち込む。3度の飯よりもハッキング、クラッキングが好きな彼女には事実上の禁錮刑と同じようなものだろう。行く場所が監獄みてぇなもんだし……
っていうか、この前世界一小さな宗教国家の極秘サーバーに遊び半分で侵入して最高機密の情報掻っ攫ってたのには凄い通り越して引いた。連邦捜査局に雇われてる化け物ハッカーどもをお子ちゃま扱いするアイナがやるといくら防御壁やトラップを仕掛けていようといとも簡単に突破して一切跡を残さずに元の状態に戻してサーバーから脱出できるのは知ってるとはいえ、マジでいい趣味してやがるわこの女。【総帥】の威光の下でやってなかったら今ごろ世界中の諜報機関から狙われてたぞお前ほんま……
「安心して。刀や銃は物が物だからさすがに難しいけど、パソコンや端末は後日別の物資に紛れ込ませて運んでもらうよう理事長に掛け合ってみるよ。アイナの技術は今回の任務には欠かせないからね」
「わ、若様……」
メシアでも見つけたかのような目で海斗を見上げるアイナ。親バカならぬ侍女バカしてんじゃねーっての、ったく。
「だが得物無しの丸腰じゃ、不足の事態があった時はどうすりゃ良いんだよ?」
「“僕ら"なら、一般の人間はもちろん、特殊部隊程度までなら何も持たなくても対応出来るだろう?学校の敷地を血の池にでもする趣味でもあったのかい?」
「"俺らと同じ奴ら"がいたらどうする?」
「理事長に確認したところ、今在学中の1.2年生にそのような生徒は在学していないし、教員やその他スタッフにもいないとのことだった。それに新入生で入ってくるとしても、入学試験の日に気配は感じ取れる。特に君はそういった感覚が僕達の中で一番鋭い。そこで見つけたのであれば、また別の方法で物資を運んでもらう段取りになっている」
「……いねぇことを祈るしかねぇ、か」
「こればかりは僕達でもどうしようもない。もし見つけたとしても、向こうが動こうとしなければそのままにするしかないからね」
「了解しましたよ、『若様』」
その後は面接の日や試験の段取りの話、入学した際のクラスの配属について話し合った。出来れば3人同じクラスの方が連携や情報共有はとりやすい。俺ら以外に知り合いがいるわけでもないんだし……あ、さっき言ってた理事長の娘の杖っ子は海斗と面識あったのか……まぁもしかしたらその子にも協力してもらうことになるかもしれねぇな。身体が弱いってことだから、無理には言えねぇが、クラス分け次第だろうな。
とりあえず、まずは受験で最低限合格できるくらいの体裁は整えておかないと格好つかねぇ。海斗は『最低限の学力があっても合格できるケースもあるみたいだよ』と言ってたが……本当に国立の名門校なのかそこ?
まぁそれでも変に低過ぎて裏とかで入ってしまえば教師にも警戒されちまうし、あくまで学力で突破できましたって風にしとかねぇとな。
ったく、学べるってのは本当尊いもんだな………
それからは受験勉強に重きを置いてあいつらとの稽古もこなして、あっという間に試験の日がやってきた。面接や筆記試験も滞りなく終わり、怪しい奴も探してみた感じ全く現れなかった。
そして、それなりの点数で合格した俺と、推定全教科満点で合格しやがった海斗とアイナ。お前ら【擬態】って知ってる?
まぁ名家の御曹司(チート)とその侍女(ハイスペ)なんだからこんくらいは当たり前か……
そんなこんなで入学の準備にとりかかろうとしていると、海斗から声をかけられる。
「すまない。事情が変わってしまってね」
「どうした?合格取り消しでもされんのか?」
「いや、そうではないんだ。クラスの配属の件なんだけど……」
「クラス?ああ、俺ら全員同じクラスにしてもらう予定ってやつか」
「そのことでなんだけど……総介には、別のクラスに配属してもらうようになったよ」
「……はいぃ?」
いきなりのことで頭がこんがらがる。何をまたそんな面倒なことを……
「級で悪いんだけど、君には追加で任務が与えられることになった」
「追加だと?どんな?」
「ある"男子生徒"の動向を監視してもらいたいんだ。そのために君には別クラスに行ってもらうことになった」
「監視ねぇ……つまり、その監視する男子生徒とやらも、俺が行くことになるそのクラスにいるってことか?」
「その通りだ。その男子生徒の名は……
「綾小路きみまろ?」
「それは漫談家の方だね。『清隆』だよ」
「あれから40年?」
「経ってないし、僕らは来月ようやく高校生だよ」
「わぁってるよ。んで、その『彦摩呂』に何があるってんだよ?」
「グルメリポーターのことでもないよ。というか原型がなくなってるじゃないか」
「ハイスペックの宝石箱やぁ〜!」
「真似しなくていいし、あまり似てない。それに君まだ彼のことを知らないはずだよね?」
「うるせぇ。お前が監視しろってんだから、ただの男子生徒じゃあねぇんだろ?」
「察しがいいね。その通りだよ」
海斗はそう答えると、その綾小路とやらのことを話し始めた。
「彼は出自が特殊でね。産まれてすぐに『ある施設』へと預けられ、そこで育てられたんだ……いや、この言葉は語弊があるかな」
「ある施設?」
「………【ホワイトルーム】。それが彼が育った…いや、“造られた"施設の名前だよ」
「ホワイトベース?」
「連邦軍のペガサス級の新造艦じゃなくてだね……『
「白い部屋ねぇ……んで、そこがなんかあんのかよ?」
「簡単に言えば、『乳幼児の段階から人権の一切を無視して、徹底的な英才教育を強制的に施し、"天才"を人工的に作り出すことを目的とされた施設、かな……」
「………」
吐き気がしてきた。この国にもまた、そんなことしやがる
「もちろんこの施設、プロジェクトのことは世間には秘密裏に行われているものだ。だがこのプロジェクト自体は、一旦は凍結させられた筈なんだけど、最近になって施設が再び稼働していることが、【
「再稼働、か……それは分かった。んで、そこで育った綾小路清隆って奴が、俺らと同じ学校に、来る……その目的は何だ?」
「それは目下調査中でね。正確ではないけど、ホワイトルームから離反、脱走したとの情報も入っている」
「脱走……」
「高度育成高等学校ならば、外部とのやり取りは全て遮断される。それは外からも学校へは干渉できないことと同義だ。恐らく理事長はそれを武器に、彼を匿ったのだろう」
「おいちょっと待て。理事長が匿った?ホワイトなんたらって施設のことを理事長も知ってんのかよ?」
「ああ。数年前に、娘を連れて施設の見学にも行ったみたいだよ」
「どんな所に娘連れてってんだよ……」
その理事長頭は大丈夫なのか?と考えていると、海斗からとんでもない言葉が飛び出した。
「……実は僕も、幼少の頃に見学に行ったことがある」
「……は?」
おいコイツなんて言いやがった?
「施設を運営しているのは政府の人間だ。僕らに媚びているのかそれとも自慢したいのか、目論見はわからないが、一度施設を見てみないかと、剛蔵さん達と8年前に見にいったよ」
8年前………まだ俺には『家族』がいた時だ……
「……それで、そこでお前は何を見たんだ?」
「………言葉に言い表すなら………
あれほど欲望に塗れた白を見たことは、今まで一度も無いよ」
「………」
「白い部屋……白い机……白い椅子……白い扉……白い床……白い壁……白い天井……何もかもが『白』で覆われた、歪な世界だ。子ども達も白い服を着させられ、洗脳されているのか、感情の起伏どころか、人によっては生気も全く感じられなかった。ただ淡々と与えられたことをこなしていくだけの、この上なく歪みに満ちた白い世界だ。人間ではなく、ロボットの製造過程を見せられてるようだったよ……」
「………どうして当時の【刀傑】は動かなかった?お前の話を聴く限り、そこは明らかに俺たちの……自由の敵そのものじゃあねぇか」
「剛蔵さんは本家に帰ってから直ちに情報を集め、全ての物証を得た上で動こうとしたんだけどね……彼らは逃げ足だけは速かった。用心深さだけは本当に僕ら並みようだったと言ってたよ。そして去年漸く尻尾を掴んだそのタイミングで、何らかの理由でプロジェクトは一度凍結されてしまったんだ」
「つまり……まんまと逃げられちまったたわけか」
「……見方を変えればそうなるね」
「……言いてえことはあるが、今のそれはただの八つ当たりになっちまう。それに当時の俺はまだ、お前達とはただの道場仲間なだけだったからな。その時の剛蔵さんやお前には何も言えねぇ立場だ」
「………」
「それに、お前もそん時に思うところがあったんだろ?俺は聞いただけだが、お前は直接見ちまったんだ。この国の歪みそのものをな……それで何も思わない『大門寺海斗』なわけがねぇだろ?」
「……助けたいと思った。彼らを、一刻も早く。でも、あの洗脳されたような子ども達のことを考えたら、宿り木を失うわけだ。歪な形とはいえ、彼らの生きる糧は既に、ホワイトルームそのものになっているのだから……しかし、」
「『そんなものは、【自由】でもなんでもない』、だろ」
「………」
「俺らのやることは変わらねぇよ、海斗。生きとし生けるものに与えられた権利……それが【自由】だ。うちの総帥がそれを謳い、今の大門寺はある……この俺もな……人が持つそれぞれの【自由】は、どんな他人からも侵される謂れは一切ねぇんだ。
しかし、ホワイトルームはそれを平気で侵してやがる。子ども達に与えられる【自由】を奪い取り、テメェらの欲望を満たす糧にしてな……そんな奴らに与えてやる慈悲なんざねぇよ」
「……ちなみに、今のホワイトルームの運営者は『綾小路篤臣』……今は野党である『共栄党』の国会議員であり、先に言った綾小路清隆の実の父だ」
綾小路篤臣……小せえころにテレビのニュースで見たような見なかったような……んでもって綾小路清隆の父親って……息子を実験動物扱いかよ、クソが……
「テメェの欲望のためなら自分の息子すらも道具扱いか……ますますクソの溜まった棺桶に漬け入れたくなっちまったぜ……そんなカスが政治の世界の重鎮だとは、世も末だな」
「ああいう連中は薄っぺらいハリボテの売り文句を宣うことだけは他の追随を許さないからね。彼はどうやら過去に一度失墜はしたみたいだけど、無駄に強靭な精神力でまた政界の表舞台に戻りつつあるみたいだ。昔"父さん"を前にした時は怯え散らかしていたというのに……」
「そりゃあの『最強生物』前にすりゃ誰でもビビり散らかすとは思うがな……それにクソみたいな政治家モドキってのはな、ゴキブリ並みの生命力や危機察知能力があるんだなコレが。しかもタチの悪いことに、そいつに餌を与えやがるアホもいる。嫌になってくるぜ、ったくよぉ」
「……さて、いつまでも終わりそうにない愚痴という名の政治談義はここで終わるとしよう。これからどうするかだ」
「……だな。とりあえず俺はどうすればいい?」
「綾小路君の動向を注視しておいてくれないか。彼はどうやらホワイトルームでは厳しいカリキュラムを全て完了させた『最高傑作』と呼ばれているらしい。頭脳はもちろん、身体能力や格闘術も人間のそれとは一線を画すものかもしれない」
「俺らと同じ可能性は?」
「無いとは言えない……だが、そうだとしたらすぐに分かるはずだ。すぐに僕に伝えにきて欲しい。もしも敵対姿勢を見せるのであれば、3人で対処しよう」
「りょーかい」
「しかし、あくまで『人間として』の範疇で収まっている可能性の方が高い。下手にこちらも力を示すのもまずいから慎重にいこう。それと、仮に彼が本当にホワイトルームから脱走してきたのであれば、自らが目立つことは良しとしないはずだ。動くつもりが無いのならそれに越したことはないさ」
「そうだったとして……問題は外の方だな」
「それについては剛蔵さんや刀次さんに任せよう。学校の方は僕に全指揮を一任してもらった。僕たちは僕たちで出来ることをしよう」
「……そうだな」
「最悪、理事長を通して剛蔵さんに僕たちの刀とアイナの銃を送ってもらうことにするよ」
「頼む」
ただの国立高校の調査のはずが、まさかめんどくせぇ陰謀じみたことに関わることになるとはな……まぁ、この3年間よくあったことだ。
どんな人間でも、それぞれの【自由】を奪われる謂れは無いし、奪う権利もない。
にもかかわらず、それを他人から奪い、壊そうとしてくる輩が、この世界にはごまんといる。
そんな奴らに与える【自由】なんざねぇ。与えられるもの、それは……
そいつら積み上げてきた罪が乗っかった刃、それだけだ。
そして……
「……綾小路清隆、か」
一体どんな奴なのだろうか。『ホワイトルーム』から出てきた(推定脱走)【最高傑作】と呼ばれる男。ほんの少し気になった。
その男は敵か、味方か。
俺たちのの敵ならまだしも、『自由の敵』となるのであれば、心苦しいが、斬る覚悟は出来ている。
俺自身の上から目線のエゴでしかないが、本気で脱走してきたのであれば救ってやりたい気持ちもある。海斗曰く、ほとんど洗脳に近い形の教育をしている場所だ。そこから逃げ出したのであれば、一定の自我は持ち合わせてはいるのだろう。そこが付け目かもしれない。それを望むかどうかは、あいつの【自由】だがな………
高度育成高等学校、そこで繰り広げられる3年間の物語。
孤高を貫く者………
恐怖で支配する者………
皆と団結する者………
裏から手を回す者………
その中に飛び込んでいく、3人の『異物』。彼らが一体、何をもたらすのだろうか……
そして、彼らと関わることとなる白い部屋で生きてきた無色透明の少年の行く末は………
人間の運命なんてもんは、初めから決まっているのかどうか……
全ては『神様』とやらが仕組んだものなのか………
だとしたら、俺たちは永遠に"自由"を得られない『運命の奴隷』なのだろうか………
いいや違うね。
運命だの神だの
俺たちの歩む道を決めるのは
俺たち自身の【自由】だ
第一話と書きましたが、プロローグです。なので多くの部分は曖昧な表現に終始しました。
今のところ原作は3年生編途中までの物語ですが、どう見ても原作主人公が手のつけられないレベルで最強なので、『んじゃここのオリ主勢力は理不尽過ぎて笑うくらいのレベルにすっか』ってことにしてやります。
頭脳戦メインのよう実には珍しい『スッキリ爽快系』にします。たまにはこういうのもあっていいでしょうね。いいでしょうが?……いいですよね?