ナザリック地下大墳墓の5日間戦争。 内政改革と、とあるメイドが掴んだ至高の奇跡   作:バルカン39

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第十一話 報復

◇防衛指揮所

ワールドアイテム『バタフライ・エフェクト』のメリットとデメリット、そして敵の仕掛けた最悪の因果をすべて見抜いていたアインズ・ウール・ゴウンの「神域の知謀」の解説を経て、デミウルゴスの脳内は、かつてないほどの狂気的なまでの崇拝と激怒で沸騰していた。

 

金貨1.2%の損失は、自身が構築した【異次元両替機サイクル】を極限まで活性化させたシフトローテーションにより、わずか約4年という驚異的な速度で完済(補填完了)されるがそれはまだ未来のお話である。

 

財政の穴埋めという最低限の責務を担いながら、この知謀の悪魔の双眸に宿るのは、至高の主を危険に晒し、ナザリックの遺産を掠め取ろうとした虫ケラどもへの、底知れぬ「報復の意思」だけであった。

「……フフ、フハハハ。アインズ様のお言葉通り、命をドブに捨てるのは向こう側だけだ。……いや、ドブに捨てるだけでは、生温いですね」

デミウルゴスはコンソールの画面を切り替え、オーレオール・オメガの空間凍結によって囚われ、現在は第八階層の最奥で魂を磨り潰されている『レベル80へと弱体化した襲撃者』の精神ログを呼び出した。

 絶え間ない精神操作と、ナザリックが誇る拷問官たちの執念により、暗殺者を送り込んできた外部の黒幕組織(かつてユグドラシルでナザリックと敵対していた残党が結成した秘密ギルド)の全拠点の座標、人員構成、保有アイテムのリストは、すでに1ギル(1バイト)の狂いもなく完全に割り出されていた。

デミウルゴスは通信網を全階層守護者、およびナザリック全軍へと繋いだ。その声は恐ろしいほどに冷徹で、地獄の底から響くような響きを帯びていた。

 

――『全軍へ告ぐ。これより、至高の御方を傷つけ、我がアインズ・ウール・ゴウンの誇りを汚した害虫どもの完全駆除、ならびに【宣戦布告】を執行する。……各階層守護者は、直ちに戦闘準備へ移行せよ』

 

通信の向こうで、アルベドのバルディッシュが床を穿つ凶悪な音が響き、シャルティアの歓喜に満ちた真祖の咆哮が爆発した。アウラとマーレ、ガルガンチュア、コキュートス――すべての牙が、飢えを晴らすために研ぎ澄まされる。

 

◇ 外部黒幕組織・中央本拠地(要塞神殿)

ナザリックから遠く離れた地に築かれた、堅牢な結界に守られた秘密ギルドの本拠地。

そこでは、最高のエース2名を投入し、世界級アイテム『バタフライ・エフェクト』を起動した幹部たちが、今なお「沈黙」を続けるナザリックの動向に不気味な違和感を抱えていた。

「おい……本当に成功したのか? 金貨40%の消失ログが未だに確認できないぞ……」

「しかし、因果の引き金となった生贄は消滅し、襲撃者の信号も途絶えた。ワールドアイテムの仕様上、初撃は絶対に命中しているはずだ。アインズ・ウール・ゴウンは消滅し、奴らは今頃、財政破綻で機能停止しているはず……」

彼らは、自分たちが放った絶対の因果の嵐が、レベル1の一般メイド(シクスス)という極小のノイズによってすべてロックされ、微風に変えられていた事実を未だに知らなかった。

 

その時、神殿の広間の空間が、まるでガラスが粉々に砕け散るかのような悍ましい音を立てて爆裂した。

「な、何事だ! 結界が……我々の最高位結界が一瞬で引き裂かれただと!?」

悲鳴が上がる中、引き裂かれた次元の裂け目から、ゆっくりと歩み出てきたのは、仕立ての良いスーツを纏った一人の悪魔――デミウルゴスだった。その背後には、異形の軍勢が空間を埋め尽くさんばかりに蠢いている。

「――ようこそ、哀れな迷い子(ネズミ)の創造主たちよ」

デミウルゴスの眼鏡の奥の瞳が、残酷なまでに理性的な光を失って燃え上がっていた。

「な、なぜここが……! 貴様らは拠点の崩壊で滅んだはずでは……!」

「滅ぶ? 我がナザリックが、あなた方の放ったあの『産廃(お粗末な玩具)』程度で傷つくとでもお思いですか?」

デミウルゴスは不敵に笑い、懐から魔力を完全に失ってただの歪んだ石ころと化した『バタフライ・エフェクト』の残骸を床へと放り捨てた。

「あなた方がエースプレイヤーを永久消滅させ、実行犯のレベルを20もドロップさせてまで支払った絶対の代償……。我が至高の主、アインズ様はそれらすべてを最初から見抜き、ただの『内政効率化のイベント』として処理なされました。金貨の傷など、我がナザリックの経済循環システムの前には、すぐに完済できる程度のご愛嬌に過ぎないのですよ」

「ば、馬鹿な……! レベル100の消滅を、世界級アイテムの因果を、ただの内政イベントだと……!? そんなことがあってたまるか!!」

幹部たちが絶望の叫びを上げる。デミウルゴスはその絶望の表情を、うっとりと楽しむように見つめると、静かに片手を掲げた。

「アインズ様は仰いました。命をドブに捨てるのは、向こう側だけだ、と。……さあ、宣戦布告の儀をはじめましょう。あなた方のギルド、保有する全財産、所属する全プレイヤーのレベル、そして魂のデータに至るまで……すべてを因果ごと磨り潰し、我がナザリックの『新たな金貨(両替の燃料)』として消費して差し上げます」

「ま、待て! 頼む、助けてくれ!!」

「フフ、助ける? 拒否します。あなた方が流させたのは、ただのレベル1の一般メイドの血ではない。……我がアインズ・ウール・ゴウンの【第三夫人】となられる御方の、至高の忠臣の血。その負債の利息は、あなた方の世界のすべてを以てしても、到底払い終えることはできませんよ」

デミウルゴスの冷酷な指先が振り下ろされた瞬間、神殿の天井を突き破って、アルベドのバルディッシュとシャルティアの眷属の群れが、文字通りの「生きた地獄」となって神殿へと降り注いだ。

世界のルールすらへし折るワールドアイテムの特攻を仕掛けたはずの黒幕組織は、自身が支払った莫大な代償の何千倍もの絶望の対価を支払わされ、ナザリックの圧倒的な武力と財政力の前に、歴史の塵へと消えていくのだった。

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