ナザリック地下大墳墓の5日間戦争。 内政改革と、とあるメイドが掴んだ至高の奇跡   作:バルカン39

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外伝 ラナー

 

ナザリック地下大墳墓がユグドラシル金貨の完済(補填完了)に向けてデミウルゴスの指揮下で大きく動き出し、王都の空気に奇妙な内政の歪みが染み出し始めていた頃。

 

◇王城

リ・エスティーゼ王国の最奥に位置する可憐な部屋では、のちにナザリックへ降ることとなる第三王女 ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフが、一人ぽつんとティーカップを傾けていた。彼女の神域の頭脳は、大陸全土の流通・経済の「奇妙な歪み」を完全に捉えていた。ここ数ヶ月の間に、周辺諸国から特定の穀物、鉱石、そして膨大なマジックアイテムやスクロールが、まるで巨大な底なし沼に吸い込まれるようにして、特定の「空白の座標」へと引きずり込まれ、完全に消失していた。

その総量と統制された流通ラインの完璧さは、天才のラナーから見ても背筋が凍るほどのものだった。それは、デミウルゴスが死に物狂いで構築し稼働させていた【異次元両替機サイクル】の経済的余波だった。

ラナーはその神懸かり的な【異次元両替機サイクル】の効率の良さを、正確に計算(プロット)してのけていた。

「ふふ……。世界は私が思っているよりも、ずっと広くて、ずっと狂っているみたい。これほど完璧な計算をするお友達(あるいは怪物)がもしいるなら……いつか、お会いしてみたいものね」

彼女がその「内政の怪物(デミウルゴス)」と対面するのに、そう時間はかからなかった。

 

◇王城の隠し地下書庫

 ラナーはデミウルゴスと極秘裏に接触を果たした。ラナーは恍惚とした歪んだ笑みを浮かべ、王国全土から極秘裏に横領・集積した莫大な資源とマジックアイテムの目録を、お近づきの印として差し出した。

しかし、それを受け取ったデミウルゴスは、羊皮紙を軽く一瞥すると、眼鏡の奥の瞳に冷徹な合理性の光を灯した。

「――素晴らしい知略と果断さだ、ラナー王女。しかし残念ながら、これらすべてを我がナザリックの『異次元両替機』に投入して金貨へと逆変換したとしても……あなたが求めている【あなたとクライムの二名分のナザリック入り(籍の購入)】を執行するには、未だ『金額』が決定的に足りません」

「え……?」

ラナーの完璧な美貌が、生まれて初めて驚愕に凍りついた。国家予算の数年分に匹敵する、一国を傾けかねないほどの財宝。それが、ナザリックという怪物の前には「足切りライン」にすら達していないという冷酷な現実に、彼女の天才的な頭脳が初めて処理落ちを起こしかけていた。

「我が至高の主、アインズ・ウール・ゴウン様が遺された『アインズ・ウール・ゴウン』の籍、そして大墳墓への永久の居住権は、人間が一生を賭けて集める紙切れや石ころ程度で買えるほど安くはないのです。金額というシステム上の絶対ルールにおいては、足りないものは足りない」

「そう、なのね……」

ラナーは一瞬で平静を取り戻すと、昏い瞳でデミウルゴスを見つめ返した。

「なら、どうすればいいかしら? 私はどうしても、クライムとその大墳墓へ行きたいの。足りない分の『代わり』になるものを、教えてちょうだい」

待ってましたとばかりに、デミウルゴスは禍々しい笑みを深くした。

 

「フフ、やはりあなたは話が早い。物資としての金額が足りぬならば、あなたが持つ『神域の知能』を以て、ナザリックの未来へ永続的な利益をもたらす【代わりの課題】をクリアしていただきましょう。

 

課題は

【リ・エスティーゼ王国の自滅、および周辺諸国を巻き込んだ永続的な『資源の自動徴収ライン』を、ナザリックが一切の武力を使わぬまま、あなたの内政計画だけで100%完成】

デミウルゴスは、アインズがバタフライ・エフェクトの対抗策解説で口にしていた「強固な経済循環システム」という言葉を反芻していた。

金貨補填を短期間で終わらすため、今ナザリックに必要なのは二度と財政を揺るがせないための「永久の内政機関」だ。

 

「あなたが仕掛ける内政の罠によって、王国は内部から腐り落ち、毎年数百万の人間と物資が、自動的に我が両替機の燃料としてナザリックへ吸い込まれ続ける仕組みを構築するのです。これが成された時、あなたの不足分の金額は『未来永劫の利息』として相殺され、あなた方のナザリック入りが完全に許可されるでしょう」

その悍ましき課題を聞いた瞬間、ラナーの背筋に凄絶なまでの快感が走った。

 

「――素晴らしいわ。最高に狂っていて、最高に美しい課題ね。その課題、喜んでお受けするわ。私の頭脳のすべてを捧げて、あなた方の偉大なるアインズ様のために、この国を最高の『燃料』に仕立て上げて御覧に入れます」

ナザリックが修羅場朝食会に揺れる中、王国の影では、デミウルゴスとラナーという二つの最凶の頭脳によって、世界を永久に搾取し尽くすための恐るべき内政の罠が、音を立てて回り始めるのだった

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