ナザリック地下大墳墓の5日間戦争。 内政改革と、とあるメイドが掴んだ至高の奇跡 作:バルカン39
晴れてアインズの慈悲によってナザリック入りを許され、アルベドとデミウルゴスの直属の部下となったラナーだったが、ナザリックの最高頭脳二人は、内心では悍ましいほどに激怒していた。モチャラスの身勝手な通行税徴収と豪遊による情報漏洩の危機という予測不能な羽虫のせいで計画が狂い、アインズ様の大切な「私財(へそくり金貨)」を補填として使わせてしまったからである。
ラナーはその守護者二人の放つ凄絶な殺気を全身に浴びながら、優雅に、しかし狂気的な瞳をぎらつかせて深く頭を垂れた。
「ええ、重々承知しております、アルベド様、デミウルゴス様。アインズ様が私のために費やしてくださった金貨の『100万倍の利息』を、この世界のすべてを絞り尽くしてでも、今すぐアインズ様の元へお返しいたします。……クライム、準備はいいわね?」
「はい、ラナー様。アインズ様への御恩、この命に代えましても……!」
背後に控えるクライムが力強く頷く。こうして、アインズの私財への補填、および守護者たちの怒りを解くため、ラナーとクライムの二人は、文字通り死に物狂いで奔走し始めた。
ラナーはその神域の頭脳をフル稼働させ、自らの手でリ・エスティーゼ王国を「絞り尽くす」ための一手を瞬時にプロットした。彼女が目をつけたのは、王国内の物流と資金移動を牛耳る、王族派・貴族派双方と繋がった『とある大商会』の帳簿だった。
ラナーの神懸かり的な計算により、その商会が数年にわたり莫大な二重帳簿をつけ、【巨額の粉飾決算】を行っていた事実が白日の下に晒されたのだ。
その粉飾決算の発覚は、ただの経済犯罪では終わらなかった。商会がひた隠しにしていた「裏金」の融資先リストには、王国の全有力貴族たちの名前がびっしりと記されていたからである。ただでさえモチャラスの暴挙、および奴の豪遊から生じた秘密露見の焦燥によって限界まで疲弊し、資源を絞り尽くされていた王国。そこにこの最悪の暴露が投下されたことで不信感は一気に爆発し、王国全土を巻き込む悲惨な【内戦】へと突入した。
この戦乱の炎の中で、王国の権力構造は無残に崩壊していった。第一王子(バルブロ)は、内戦の混乱の中で無残に討ち死にを遂げた。王族派の象徴を失い、完全に孤立無援となった王城は激しい炎に包まれる。
「ラナー様! 第二王子を……ザナック殿下を確保いたしました!」
炎上する王城 の 奥深く、クライムが率いるナザリックの戦眷属が、押し寄せる叛徒の刃から第二王子(ザナック)を間一髪で助け出した。兄を失い、自国が完全に崩壊するプロセスをただ呆然と見届けるしかなかったザナックは、そのままラナーの手引きによってナザリック地下大墳墓へと連行され、妹とともにナザリックで働くこととなった。
「……なるほどな。お前はあの恐ろしい頭脳たちに目をつけ、あの『化け物どもの巣窟』の燃料にした時点で、この国の命運は決まっていたというわけか、ラナー」
ナザリックの第九階層、内政管理局の一角。山積みにされた周辺諸国の物資目録の前に座らされたザナックは、疲れ果てた笑みを浮かべながらも、生き残るためにその現実的な政治手腕を振るい始めていた。彼らに与えられた任務は、内戦によって崩壊した王国全土の全資産を、冷徹な効率で『異次元両替機サイクル』へと注ぎ込むことである