ナザリック地下大墳墓の5日間戦争。 内政改革と、とあるメイドが掴んだ至高の奇跡 作:バルカン39
◇防衛指揮所
「これより、ナザリック地下大墳墓全域に最高警戒態勢『至高の盾』を発動する。すべての下僕、守護者は私の指示に従い、一寸の隙もなく配置につけ」
デミウルゴスの冷徹な声が、全階層に響き渡った。
その瞬間、ナザリックの全機能が「敵を屠るための巨大な生命体」へと変貌した。各階層の魔物と守護者がデミウルゴスのチェス盤の駒として動き出し、大墳墓は生きた地獄と化した。
あるものは天井から、あるものは隠し扉から各階層内に飛び出し、己の力あらん限りのスピードで駆け回り、物陰、上空、地中、襲撃者が潜んでいる可能性がある所に手当たり次第に索敵魔法や攻撃魔法を撃ちかまして捜索した。
コンソールの前に立つデミウルゴスの脳細胞は、怒りと同時に、ある『絶対的な矛盾』に対する冷徹な考察を走らせていた。
(……おかしい。何かが致命的に異常だ。システムアリアドネの防衛ルールを完全に無視し、アルベドすらも安全と判断せざるを得なかった鉄壁の私室へ直接転位してくるなど……)
デミウルゴスは背筋に走る戦慄を隠し、眼鏡の奥の瞳を獰猛に光らせた。スキルや魔法の次元を超えた力でなければ私室内に転位などできない。
『、、、、、!!!』
脳内に一つ思い当たる節が出てきた。ワールドアイテムである。
もし敵がワールドアイテムを所有しているならば、私室内への転位が可能なのではないか。
生半可な探知網では弾かれるのも当然だ。彼は即座に戦術の組み立てをワールドアイテム対抗戦へとシフトさせた。
◇ナザリック空間管理室(桜花聖域)
「――お姉様方、アインズ様を傷つけた虫ケラは、絶対に外へは出しません」
ナザリックの転移・空間管理を担当する第八階層の守護者――オーレオール・オメガが、りん烈たる意思を通信網に走らせた。
通常、オーレオールはナザリックの安全と領域を守るため、三重の極大防衛結界を常時展開している。
しかし、今回の『非常事態宣言』を受け、彼女の瞳に宿ったのは絶対者への不敬に対する底知れぬ狂気だった。
「『次元封鎖(ディメンション・ロック)』! 『空間歪曲(スペース・ディストーション)』! 『因果遮断(コーザル・アイソレーション)』……!」
オーレオールは躊躇なく、一挙に18もの超最高位防衛魔法・結界を緊急発動した。幾重にも重ねられた18重の空間結界は、大墳墓内の時空そのものを完全に凝固させた。
『デミウルゴス様。オーレオール・オメガです。捕らえました。空間を完全凍結し、襲撃者をナザリック内部に閉じ込めることに成功しました』
「見事だ、オーレオール。……して、ネズミの居場所はどこだ?」
『……それが、わかりません。18重の結界が強固すぎて、大墳墓内の魔力対流が異常に乱れています。ナザリックの“内部”に確実に隔離していることは間違いありませんが、どの階層の、どのエリアに囚われているのか、詳細な場所が特定できません』
「何だと……?」
デミウルゴスの手元に各階層から索敵結界を知らせるメッセージが飛び交うが、すべてが「不発」だった。18重の結界による強烈なジャミング効果のせいで、敵の隠蔽スキルが異常な形で増幅され、探知網の死角に隠れてしまっているのだ。