ナザリック地下大墳墓の5日間戦争。 内政改革と、とあるメイドが掴んだ至高の奇跡 作:バルカン39
すでに作戦開始から約1日とゆう相当な時間が経過している。
広大なエリアに絶え間なく探知・攻撃魔法を乱射し続けた結果、ナザリックの全軍勢の約4割にのぼる人員が『MP切れ』を起こし、戦闘不能寸前に陥っていた。
もちろんHPや各スキルは消費していないためすぐの戦闘不能とはならないが、継戦能力の低下は著しい。
デミウルゴスの額に冷や汗がにじむ。その時、防衛指示所のコンソールから、今まで聞いたこともないような不穏な警告音(アラート)が鳴り響いた。
『――緊急警告。防衛設備の特化運用およびオーレオール様によるによる18重結界の稼働、ならびに全階層での大規模魔法乱発により、ナザリック内蔵のユグドラシル金貨の消費異常を検知。現在までに、総保有金貨の約0.3%が消失。なお、消費速度は現在も加速中――』
ウィンドウのテキストを目で追ったデミウルゴスが息を呑んだ直後、コンソールがさらに鋭いビープ音を鳴らし、追撃のログを吐き出した。
『――追加警告。システムログの精査により、防衛費による消費とは別に、システム側での使用用途不明の出金処理による約0.3%の金貨消失を確認。合計の損失は総保有金貨の約0.6%に達しました――』
「なに……!? 用途不明の出金だと……!?」
デミウルゴスはその場に凍りついた。防衛による消費の0.3%だけでなく、謎の出金によって合計0.6%ものユグドラシル金貨が消失してしまった。
ユグドラシル金貨。それは、かつて至高の四十一人たちが血と汗を流して集めた、ナザリック地下大墳墓の文字通りの「命の灯火」である。それを、敵の姿すら拝めぬまま、自身の指揮により全体の0.6%も浪費してしまった。
「至高の御方々が遺された財宝を……アインズ様が大切に守ってこられた物を、私の無能さゆえに、どぶに捨てたというのか……!」
ガチガチと、デミウルゴスの牙が恐怖と悔恨で鳴り響いた。彼の身体は、生まれて初めて経験する凄絶な絶望と罪悪感で、激しく震えていた。
薄暗い指揮所内には絶え間なくコンソールからの警告音が鳴り響いている。
◇第一階層
「ええい! 何が金貨の消費でありんすか! そんなことより、アインズ様を傷つけたネズミを早く八つ裂きに――」
通信網を通じて、シャルティア・ブラッドフォールンが苛立ち混じりの声を上げた。彼女は金貨の消失という数字がどれほど致命的であるかを全く理解していなかった。
「黙りなさい、シャルティア」
宝物庫の結界の中から、アルベドの冷徹極まる声が通信に割り込んだ。
「いい、全員よくお聞きなさい。オーレオールによる18重結界と全階層の防衛設備特化運用、割愛なき魔法乱発。この狂った消費効率のままこの状態が約半年続けば、ナザリック地下大墳墓内蔵のユグドラシル金貨が空になり完全に陥落します」
『――ッ!?』
通信の向こうで、全階層守護者たちの息を呑む音が重なった。消失速度が予想を遥かに超えている。
「至高の四十一人の方々が築き上げ、1000年、1万年と永遠に続くはずだったこのナザリックが、あと、たったの半年で陥落するのよ」
1000年万年続くナザリックがあと半年で陥落する。あまりの事態の重さに、すべての階層守護者たちが激しく動揺し、決定的な亀裂が走り始めていた。