ナザリック地下大墳墓の5日間戦争。 内政改革と、とあるメイドが掴んだ至高の奇跡   作:バルカン39

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第七話 5日目。発見。

◇ ナザリック空間管理室(桜花聖域)

全階層に料理の匂いと指示が飛び交う中、そこから完全に隔離された第八階層の奥深くで、オーレオール・オメガは一人、静まり返った戦場に身を置いていた。

襲撃者は何度もナザリックからの脱出を試みて彼女の4重5重の極大防衛結界を突破したが、計18もの極大防衛結界全ては突破できなかった。

彼女の周囲の床には、叩き割られたマジックポーションのガラス瓶が散乱し、その傍らには、食べる時間すら惜しんで口に押し込んだであろう、手つかずのまま冷え切った食事の残骸が転がっている。

いつ突破してくるのかわからない襲撃者に備え、常時18の極大防衛結界の維持、系統や結界プロトコルを即時変更し突破難度を最高潮まで押し上げた賜物である。

 

 

◇?????

大食堂から大墳墓の空調を伝って放たれた、芳醇なソースと肉の匂い。その匂いが第十階層のとある回廊を満たした瞬間、オーレオールのコンソールに不自然な空気の振動が伝ってきた。

ジ、ジジ……。

ルベドが維持する空間固定のノイズの隙間から、不可視の空間より「グゥ……」という小さく情けない腹の虫の音と、ゴクリ、と飢えに耐えかねて喉を鳴らした唾を呑む音が、鮮明なシステムログとして弾き出された。

(アインズ様を傷つけた不敬者。守護者のお姉様たちが引き裂くための『檻』は、私が死んでも壊させない――)

「……見つけた」

オーレオールの唇が、酷薄に吊り上がった。バフを纏った守護者たちがその座標へと一斉に牙を剥く。

 

 

 

◇第十階層 

「死ねェ!!」

漆黒の短剣から放たれた刺突が、迎撃に現れたナザリック全軍の先頭へと一直線に肉薄する。

ガキィィィィィン!!!

しかし、その刃が防衛線に触れる直前、第十階層の重厚な床が激しく結晶化し、凄絶な魔力を纏った純白の冷気が襲撃者の視界を白銀に染め上げた。巨大な大刀――『斬神刀・皇』が、その一撃を完璧に受け止めていた。

「――不敬。万死。ニ。値スル」

地鳴りのような重低音が響く。

第十階層の空間隔離が完了する直前、パンドラズ・アクターの緊急要請を受け、第五階層より『上位転移』で回廊へと滑り込んでいたナザリック最高峰の武人――第五階層守護者、コキュートスであった。

四本の腕にそれぞれの名刀を構え、全身から絶対零度の吹雪を噴き出す巨大な昆虫型の戦士が、廊下の中心に仁王立ちとなって立ち塞がる。その圧倒的な武の覇気に対し、襲撃者は即座に後方へ跳躍。隠密スキル『影潜み(シャドウ・ルル)』を発動して再び回廊の闇へと消えようとした。

コキュートスは即座にそれを追撃すべく、巨体からは想像もつかない神速の踏み込みで間合いを詰めた。名刀が放つ、目にも留まらぬ連撃が開始される。

「『一ノ太刀・連獄(れんごく)』!!」

『斬神刀・皇』を含む四本の武器が、十文字の閃光となって回廊の空間を切り裂く。襲撃者は必死に漆黒の短剣を交差させてそれを受け止めた。

ズガァァァン!!! と激しい衝撃波が第十階層の堅牢な壁を揺らす。

しかし、その刃が交わった瞬間――コキュートスの脳裏に、強烈な「違和感」が走った。

(……チグハグ、ナ。手応え。至高の御方の私室を侵し、この第十階層にまで滑り込んできた刺客。当然、限界領域に達した『レベル100』の最高位プレイヤーであると想定し、こちらも全力の威を以て迎撃したが……。手応えが、あまりにも軽い)

最高位プレイヤー同士の衝突であれば、一撃の重み、空間を歪めるほどの覇気が生じるはずだった。だが、この男の刃から伝わってくる質量は、コキュートスが想定していたレベル100のそれには遥かに及ばない。

(多く見積もっても……相手のステータスは『レベル85程度』。これでは、戦闘職の守護者たる我らと刃を交える格すら満たしてはおらん!)

 コキュートスは武人としての鋭い直感で、敵の不気味な違和感を覚えていたのだ

しかし、格下であろうとも主を狙った不敬者であることに変わりはない。コキュートスは複眼を冷酷に光らせると、回廊の壁を蹴り、さらに間合いを詰めた。

「『小太刀・煤殺』!!」

「ガはっ……あ、あああああっ!?」

 コキュートスの圧倒的な武力に反応すらできなかった襲撃者は、漆黒の短剣を根元から叩き割られ、その双腕を肩口から綺麗に切断されて回廊の床へと崩れ落ちた。

「終リ。ダ。……『極寒の息吹(フロスト・ブレス)』」

コキュートスの口から放たれた絶対零度の冷気が、廊下に倒れ伏す襲撃者の全身を包み込み、彼は指一本動かせない『生きた氷像』へと変貌を遂げた。

「不敬者ノ。動きヲ。完全ニ。封じマシタ。息ハ。繋ぎ止めて。アリマス。……シカシ、このネズミ、手応えが……妙に軽うございました。多く見積もっても85レベル程度かと」

コキュートスが四本の武器を収めて厳かに跪き、張り詰めた回廊の空気にその違和感を奏上する。

 

 

 

 

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