スキル『日本』。初期は『勤勉になるだけ』のゴミだったが、開花するにつれ、ゼロ戦、忍者、和食、台風……いくらなんでも強すぎて、みな頭を抱えてる‐センエース‐   作:閃幽零

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1話 転生した世界が戦国時代真っ只中だった件。

 

 1話 転生した世界が戦国時代真っ只中だった件。

 

 トラックにはねられて異世界に転生し、はや17年。

 記憶を持ったまま赤子から人生をやり直した元日本人高校生『センエース』。

 現在17歳で、職業は村の護衛係。

 

「俺、マジで、才能ねぇなぁ……つぅか、王女が天才すぎるのか……」

 

 目の前で次々とゴブリンを倒していく幼馴染の超絶美少女を見ながら、センはため息を漏らす。

 

 彼女の名は『ミシャ・ンドラ・サクリファイス・ゾーン』

 センが生まれた小国『セファイラ王国』の王女である。

 

 ミシャ王女は、臣民のためとなれば後先を考えない。

 森にゴブリンの群れが現れたと聞いた彼女は、兵士や護衛係を置き去りにした。

 

「あのぉ、王女様ぁ……俺も経験値を稼ぎたいので、単騎で暴れるのはその辺で……」

 

「情けないわね、セン。私からモンスターを横取りしてみなさいよ。私を守ってくれるんじゃなかったの?」

 

「いや、まあ……ガキの頃は、『あなた様を守りたい』と本気で思っていましたよ……けどねぇ……」

 

 年齢が同じで、センの親が王族護衛軍の隊長をしていた縁もあり、センと王女は幼馴染として育った。

 

 小柄な体に、金髪のツインテール。

 芯のある美貌は幼いころから変わらず、気高い。

 

 5歳のころ、そんな王女に『あなたを絶対に守る』と誓ったセンの想いは、本気だった。

 

「ガキの頃は、まさか、こんなにレベル差が開くと思っていませんでしたし……」

 

 ミシャ王女は天才でレベル90以上、センは凡人でレベル17。

 

「せめて、俺の固有スキルが、もっとマシなものだったらなぁ……」

 

 この世界に転生してすぐに気づいた。

 自分が固有スキル『日本』をもっていること。

 効果は『勤勉になる』。

 

「こんなしょうもないスキルじゃ、王女を守るどころか、この乱世を生き残ることも危ういぜ……最近、デカール大帝国の動きが活発になっているから、もっと力をつけたいんだけどなぁ……」

 

 この世界は今、ゴリゴリの戦国時代に突入していた。

 強大な国々が、剣、魔法、馬を軸に天下統一を目指して争い合っている。

 

 セファイラのような小国は、いつ滅ぼされ、属国となってもおかしくない。

 この乱世に、いまだ国が存続しているのは、奇跡といってもよかった。

 

 ――王女が、ゴブリンロードの首をはね飛ばしたところで、

 

「これで、モンスターは全て討伐できたかな……」

 

「お見事です、王女……ゴブリンの大軍勢……1000匹ぐらいいたのに、ほぼ全て一人でやっちゃいましたね」

 

「できれば、あなたに守ってほしかったわ」

 

「それがギャグじゃないなら、こんどから、単騎で前線に突っ込んでいくのやめてもらえます?」

 

 などと他愛のない会話をしていた……その時だった。

 

「姫様ぁああ! 敵襲ですぅ!! デカール大帝国の連中が攻めてきましたぁあ!」

 

 全身泥まみれの伝令兵が、息も絶え絶えの馬を走らせて駆け込んでくる。

 鎧のあちこちが裂け、矢傷からは血が滲んでいた。

 

 ミシャ王女は真っ青な顔で、

 

「え……ま、まさか……だって、あと半年は手を出さない約束だったのに……」

 

 センも眉間にしわをよせて、

 

「……戦国時代の盟約《めいやく》ってのは、ほんと、脆《もろ》いものですね……」

 

 そう言葉をかわすと、センと王女は、モンスター討伐を終えたばかりの森を飛び出し、村へと駆け戻った。

 

 ★

 

 村の広場――普段は市が立つその場所に、デカールの軍勢が集結していた。

 燃える家々を背に、ミシャとセンは、剣を構えて軍勢の前に立つ。

 

 デカール大帝国は、近隣の中では最大級の列強。

 その国力は、小国セファイラのざっと100倍以上。

 

「抵抗する者は皆殺しだ! いいな! 無駄な抵抗をするな!」

 

 デカールのルット将軍がそう叫ぶ中、兵士たちは抵抗するセファイラ人を惨殺していく。

 燃え盛る家々。

 逃げ惑う村人。

 あちこちで悲鳴と剣戟の音が響き渡る。

 

 馬上からセファイラの村を見下ろすルットは、

 丸々と太った巨体に、醜い面構えが特徴的だった。

 レベルにして110を超えている超人。

 

「王女はどこだ! ミシャ・ンドラ・サクリファイス・ゾーン王女!! この国でもっとも価値がある、美しさと強さを兼ね備えた才女よ!」

 

「私はここにいる! 抵抗する気はない! 臣民に手を出すのはやめよ!」

 

 そこで、ミシャは、さらに声を張り上げ、

 

「皆も抵抗するな! これは命令だ! これ以上、無駄に死ぬな!」

 

 ルット将軍は、ミシャをみて舌なめずりをする。

 

「気高く美しいとは聞いていたが……予想以上だ」

 

 そこで、ルットは、

 

「貴様が私に誠心誠意尽くすというのであれば……手荒な真似は控えると約束しよう。ただし徴兵はさせてもらう。ドーン共和国との戦争が無駄に長引いているものでね。兵を補充しなければいかんのだ。……10歳以上の男と、魔法を使える女を合計2000人差し出せ」

 

「……セファイラは、デカールとの盟約を一度たりとも違《たが》えたことはない。貢納《こうのう》も、人も、約束通りに差し出してきたはず。それと引き換えに、手は出さぬと誓ってくれたはずだ。それを一方的に反故《ほご》にするおつもりか」

 

「戦国の世だ。情勢などいくらでも変わる。今まで手を出さないでいてやっただけありがたく思え。財布になってくれる小国など、いくらでもある。今、デカールが望んでいるのは、ドーンとの戦《いくさ》で壁になってくれる大量の人材だ」

 

 ミシャは、奥歯をかみしめて震えている。

 無茶苦茶なカツアゲをされているわけだが、

 相手が強すぎて何も言えない。

 

「……兵は出す……私も好きにしていい……だから……それ以外の臣民には……決して手を出さないで……」

 

「いいだろう。ただし、徹底的に奉仕してもらうぞ。私は本国では性豪で通っていてな。一晩中になるが、かまわないな?」

 

 ルットは、馬から降りて、ミシャの細い手首を太い手でつかんだ。

 太い指が、白い肌に食い込む。

 

「さあ、来るんだ。弱者に選択肢などない。恨むなら、弱き国に生まれた己の不運を恨め!」

 

 その様子を見ていたセンは、

 

「……ぐっ」

 

 拳を握りしめ、爪が食い込むほど強く握る。

 

 相手は大国の将軍。

 自分が出て行っても、無駄死にするだけ。

 へたしたら、自分のせいで、周囲の人間が殺される。

 

 頭ではわかっている。

 ――わかっているのに。

 

 ミシャの腕を、ルットが強引に引き寄せる。

 

「ぁっ!」

 

 ミシャが小さな悲鳴をあげた。

 必死に恐怖を押し殺している声。

 

 その瞬間、頭の中で何かが弾け飛んだ。

 

 センは、沸騰した頭を解放するように、

 

「ぁあああああああ!! 閃拳っっ!!」

 

 と、突撃しながら、死ぬ気の拳をぶちかました。

 この17年間、毎日、暇を見つけては気が狂ったように練習していた必殺技。

 『必殺技に自分の名前をつける』というダサさが、この拳を少しだけ強くしてくれる。

 

 セン最大の一撃は、ルットの頬をガツンと弾いた。

 

「うぉっ!!」

 

 一瞬、くらっとしたルットだったが、脂肪に守られたその顔には、傷一つついていない。

 

「……き……貴様、自分が何をしているか、わかっているのか」

 

「くそがぁあ! 俺、弱ぇなぁあ! あんだけ、必死に鍛えたのによぉお! でも、それなら、何度でもぉおお!!」

 

 ミシャが、悲痛な声をあげる。

 

「セン! やめなさい! 私は大丈夫だから! 将軍! 彼の非礼は私が詫びる! だからどうか――」

 

「許せとでも? ありえんよ。バカが」

 

 ルットは、センの腹部を思いっきりぶん殴る。

 センはよけようとした。

 だが、ルットの拳は速すぎた。

 

「ぐぇええ!!」

 

 胃の中身が逆流する感覚とともに、センはその場に崩れ落ち、地面にゲロを吐いた。

 息が詰まり、声も出ない。

 

 ルットは、センの頭を踏みしめながら、

 

「ゴミが……ただで死ねると思うなよ」

 

 地面に押しつけられた頬に、土と血の味が広がる。

 

 ミシャが土下座をして、

 

「この通りだ! 彼には手を出さないでくれ!」

 

「なんだ、王女よ。まさか、この小汚いガキに好意でも? 面白い! ならば、このガキは、貴様の目の前で八つ裂きにしよう!」

 

 ルットは踏みつけていた足をどけると、

 

「このガキを殺した男に、貴様はこれから誠心誠意、奉仕せねばならぬのだ! 考えただけでも高揚がとまらん!」

 

 そう叫びながらセンの頭を蹴飛ばす。

 視界が白く点滅する。

 耳鳴りがひどく、ミシャの悲鳴すら遠くに聞こえた。

 

 土下座したまま顔を上げられないミシャの肩が、小さく震えているのが見えた。

 

 センは、

 

「まったく……弱すぎるぜ……俺……」

 

 フラつきながら立ち上がり、

 力の入らない足に、もう一度、力を込め直す。

 

「でも、ここで引くわけにはいかないからよぉ……」

 

 歯を食いしばり、ルットをにらみ、

 

「その王女様はなぁ……お前みたいなカスのおもちゃになっていい女じゃねぇんだよ。毎日、毎日、バカみたいに、この国の民を守るために、外交も内政も全部一人で抱えて苦しんでいた……」

 

 ミシャがどれだけ、この国のために頑張っていたか、よく知っている。

 彼女の献身を、その想いを……

 

「毎日、休むことなく朝から晩まで、働いて、ボロボロで……それなのに、今日だって、ゴブリンの群れが暴れたと聞いたとたん、臣民を誰も死なせたくないからって、一人で突っ込んでいくような……バカで美しく気高い理想の姫だ……」

 

 目が血走る。

 かみしめた奥歯から血があふれる。

 頭に血がのぼっているせいか、鼻血もダバダバ出ている。

 

「絶対に、わたさねぇよ……俺の命全部で……てめぇら、皆殺しにしてやる」

 

 そう覚悟を決めた時。

 心臓の音だけが、やけに大きく響いた。

 ノイズが走るように、頭の中が真っ白になった。

 

 世界の声が聞こえる。

 

 

 ――固有スキル『日本』が進化。

 ――スキル2『ゼロ戦』を獲得!!

 

 

 零式艦上戦闘機――通称、ゼロ戦。

 紙装甲だが、圧倒的な攻撃力と機動力を持つ凶悪な殺戮兵器!!!

 

 

 

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