スキル『日本』。初期は『勤勉になるだけ』のゴミだったが、開花するにつれ、ゼロ戦、忍者、和食、台風……いくらなんでも強すぎて、みな頭を抱えてる‐センエース‐ 作:閃幽零
18話 私の側室にしてやろう。
「……兄上。本題に戻りましょう」
「おお、そうだったな。で、鉄の龍とは?」
ミシャは、困ったように、わずかに目を伏せた。
「申し訳ございません、殿下。それが、我々にもわからぬのです。戦が始まると、どこからともなく現れ、敵兵だけをなぎ払って去っていく……我々は、セファイラの守り神ではないかと考えておりますが、確かなことは何も」
「ふむ」
ゼイは、あごに手をやった。
「精霊都市フーマルでは、エンシェント・リヴァイアサンとかいう海龍が、領海を守っているそうだな。似たようなものかもしれん」
そして、興味深そうに、ミシャを見た。
「で、その守り神とやらは、この地の外の戦でも、貴様らに力を貸すのか?」
「申し訳ございません。そればかりは、まったく……」
「ドーンとの戦争で、ぜひとも力を貸してもらいたいものだ」
ゼイは、また、隣のロスの肩に手を回した。
「なあ、ロス。自分の腕を吹き飛ばした龍が味方につけば、これほど心強いこともあるまい?」
「……仰せのとおりです、兄上」
「ふはは!」
謁見の間に、ゼイの笑い声だけが、いつまでも響いていた。
ロスの顔は、すごいことになっていたが、ゼイだけは気づかない。
★
あらかた、降伏勧告の儀は終わった。
最後に、ミシャが、一歩前に出た。
「殿下。ひとつ、お願いがございます」
「言ってみろ」
「ドーンとの戦に、我が国は兵を差し出します。もし我らが見事な戦果を挙げた暁には……今後、セファイラには手を出さぬと、お約束いただきたいのです」
ゼイは、あごをさすりながら、しばらくミシャを眺めていた。
やがて、にやりと笑う。
「認めてやろう。……というより、いっそ、セファイラのすべてが、私の配下になるといい」
「……配下、ですか」
「この国を、実質的に、私の領地とするのだ。陛下には、私から話を通しておく」
ゼイは、椅子の上で、ゆったりと足を組み替えた。
「本来であれば、こんな小国などいらんのだがな。守護神の件も含めて、なかなか面白い。手元に置いておく価値はある」
そして、ミシャを、頭の先からつま先まで、ゆっくりと眺め回した。
「ミシャ王女。貴様は、私の側室にしてやろう」
謁見の間の空気が、凍りついた。
「私は、もっと胸の大きい女が好みなのだがな……まあ、顔は極上と言って差し支えないし、レベルも高い。私との間には、なかなかの子が生まれるであろう」
ミシャは、答えなかった。
表情は、変わっていない。
ただ、体の横に下ろした指先が、ドレスの布地を、かすかに握りしめていた。
その様子を横目に、センは、心の中で、
(……ゼイって、イケメンなんだよなぁ。能力も高いし……)
ゼイの評判は、センも耳にしていた。
デカールの皇族の中で、もっとも慈悲深い男。
ロスのような嗜虐心《しぎゃくしん》を持たず、温和でありながら大胆不敵で、実は頭もきれる。
だからこそ、交渉の場には、よくこの男が駆り出されるのだという。
(いずれは、ミシャも、誰かと婚姻を結ぶことになる……その相手として、ゼイは……まあ、悪くはないんだよなぁ……)
ゼイの領地になれば、少なくとも、デカールからの侵攻はなくなる。
皇子の庇護下にあるとなれば、ほかの国も、うかつには手を出してこない。
小国の王女が側室になるというのも、国家の間では、珍しい話ではない。
むしろ、セファイラほど小さい国の王女ともなれば、ルット程度の将軍の妻としてあてがわれるのが普通だ。
黙ったままのミシャに、ゼイが、不思議そうに首をかしげた。
「ん、どうした? これ以上ない提案だと思うが……まさか、何か気に入らないとでも?」
「……いえ」
ミシャは、ゆっくりと、頭を下げた。
「もったいないお言葉です、殿下」
「そうであろう。ふはは! どうだ、私は優しいだろう? 普通にしているだけなのだがな。なぜか皆、私を慈悲深き皇子などと呼ぶ。まあ、悪い気はせん! ふはは!」
ゼイは、満足そうに、大きく笑った。
その隣で、ロスが、無言のまま、膝の上で指をこわばらせていた。