スキル『日本』。初期は『勤勉になるだけ』のゴミだったが、開花するにつれ、ゼロ戦、忍者、和食、台風……いくらなんでも強すぎて、みな頭を抱えてる‐センエース‐ 作:閃幽零
23話 超スキル3が目覚めたぁあああ!
開戦前夜。
戦の最中に睡魔《すいま》と戦われても困る。
ということで、開戦までの間は、全員が全力で眠ることになった。
兵舎には、泥のように眠る兵たちの寝息が、静かに満ちている。
センは、その間を歩きながら、
(このたった数日で、全員、すさまじく強くなった……俺のレベルも55になったし、忍術も、一応、雷呪クナイランク3、影分身ランク2まで上げることができた。……『シグレ』に至っては、ランク8の忍術までマスターしちまったし……)
センは、兵舎の隅で、静かな寝息を立てている黒髪のくのいちに目を向けた。
彼女の名前はシグレ。
もとは、ただの農家の娘だったが、忍術適性が異常に高く、忍術だけで言えば、ミシャに次ぐ実力者となっている。
ほかにも、ランク7の忍術を身につけた者が、何人かいる。
間違いなく、底上げはされている。
だが、
(……ランク9の広範囲魔法に耐えられるかといえば……無理だ)
ロスの爆裂烈波。
そして、王鬼流星。
あの隕石の雨を思い出すだけで、背筋が冷たくなる。
(ロスの魔法を抜きにしても……まともにぶつかったら、30万をどうにかできるわけがない。こっちは1000。分身を使っても、5000以下……)
敵は、その60倍。
忍術と気合いで埋まる差ではない。
(このままじゃ勝てねぇ……どうすればいい……どうすれば……)
拳を握りしめた、その時だった。
世界の声が聞こえた。
――固有スキル『日本』が進化。
――超スキル3『どこでも大阪城』を獲得!!!
脳内に、スキルの情報が流れ込んでくる。
好きな場所に、巨大で堅牢な城を、一瞬で出現させることができる。
出し入れ自由。
(すげぇな……ついに、ドラ〇もん要素まで出てきたか……どうせなら、四次〇ポケットくれねぇかな……)
などと思いつつ、センは、頭の中に地図を広げた。
(大阪城……かなりでかい城だよな……出すなら、国境を越えてすぐ。城下町を守る位置あたりが妥当か……)
敵は、国境を越えた瞬間、見たこともない巨城を突きつけられることになる。
(大阪城のやばさは堀と石垣)
前世の歴史の授業や、戦国ゲームで仕入れた知識を、ひとつずつ掘り起こしていく。
センは転生前、第一志望を早稲田にしていたので、英語と歴史だけは死ぬほど勉強していた。
だから、大阪城にも、そこそこ詳しい。
(何重にもめぐらされた、幅の広い水堀《みずぼり》。その内側に、そそり立つ高石垣《たかいしがき》。騎馬は堀を渡れねぇし、歩兵も、はしごをかけて石垣を登ってる間は、ただの的)
石垣の上には、狭間《さま》――鉄砲や矢を撃つために、壁に開けられた小窓が並んでいる。
さらに、石落とし――よじ登ってくる敵の頭上へ、石や熱湯を落とす仕掛けまである。
(鉄砲の代わりに、うちには忍者兵がいる。狭間《さま》から手裏剣とクナイを撃ち下ろし続ければ、敵は堀の手前で足止めされる)
そして、城の外に張り出した出城《でじろ》。
真田丸。
(真田幸村は、あそこに敵を引きつけて、徳川の大軍をさんざん叩いた。冬の陣じゃ、20万近い徳川軍が、結局、大阪城を落とせなかったんだ)
20万。
今回の敵は、30万。
(……ただ、大阪城は、最後には落ちている)
和睦《わぼく》の条件として、堀を埋められ、丸裸にされた。
そして、夏の陣で、あっけなく攻め落とされた。
(無敵の城ってわけじゃねぇ……)
そこで、センは、ふと眉を寄せる。
(そもそも、普通の石垣と瓦じゃあ、隕石には耐えられない)
あの王鬼流星が降りそそげば、天守は一撃で吹き飛び、崩れた石垣が、そのまま堀を埋めてしまうだろう。
(けど、これまでのことを考えると、スキル『日本』で出せるのは、ただの大阪城じゃない……はず。なんらかの強化や、隠し機能がついた大阪城だと考えるべき)
センは、眠る兵たちを振り返り、覚悟を決めた顔で、
(……少しは……本当に少しは勝機が出てきた……やってやる……やってやるよ……セファイラの底力を……そして、日本の底力をナメんなよ……)