スキル『日本』。初期は『勤勉になるだけ』のゴミだったが、開花するにつれ、ゼロ戦、忍者、和食、台風……いくらなんでも強すぎて、みな頭を抱えてる‐センエース‐   作:閃幽零

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25話 本当に私を不愉快にさせるのが得意な国ですね!!

 

 25話 本当に私を不愉快にさせるのが得意な国ですね!!

 

 見たことのない城だった。

 

 まず目に入るのは、幅の広い、水をたたえた堀。

 その内側に、見上げるほど高い石垣が、切り立った崖のようにそそり立っている。

 石垣の上には、白い壁と、黒い瓦。

 その奥に、いくつもの屋根を重ねた巨大な塔が、空を突くようにそびえていた。

 

 城の屋根の端は、どれも、鳥の翼のように反り返っている。

 てっぺんでは、金色に光る、奇妙な魚の像が、朝日を跳ね返していた。

 

 デカールの城とも、ドーンの城とも、フーマルの神殿とも違う。

 この世界の、どの様式にも当てはまらない。

 

 そして、その城は、まるでセファイラの城下町を背にかばうように、ロスたちの行く手をふさいでいた。

 

「なんだ……あれは……」

 

 ロスの声が、かすれた。

 

「……つい先日、ここを通った時は……あんなもの、なかったはずだ……」

 

 特使として、この道を通ったのは、ほんの10日ほど前。

 その時、ここには、ただの草原しかなかった。

 石一つ、積まれていなかった。

 

 ふと、ゼイの言葉が、頭をよぎる。

 

 『精霊都市フーマルには、一夜で神の城が建ったという言い伝えがあるそうだが……』

 

 牛丼屋を見上げながら、ゼイは、そう言って笑っていた。

 

「まさか……」

 

 ロスは、城を見上げたまま、つぶやいた。

 

「本当に、セファイラには、なにか……守護神でもついているというのか……」

 

 鉄の龍。

 分身を操る兵たち。

 異常に鋭い刃。

 得体の知れない店。

 そして、一夜にして現れた、巨城。

 

 小国ひとつに、あまりにも、わけのわからないものが集まりすぎている。

 

「皇子……」

 

 参謀が、青ざめた顔で、城とロスを見比べた。

 

「いかがなさいますか。あの堀と石垣……力攻めとなれば、相当な損害が出るかと」

 

 ロスは、参謀のほうを見もせずに、

 

「問題ありません。……前衛を下がらせなさい。巻き込まれますよ」

 

 静かに、馬から降りた。

 

「私が破壊します」

 

 ロスは、城に向かって、左手を掲げた。

 

 全身から、膨大な魔力が噴き上がる。

 足元の草が、ざわりと波打った。

 赤黒い光が、ロスを中心に、渦を巻いていく。

 

 周囲の兵たちが、息をのんで、あとずさった。

 

 

「王鬼流星《おうきりゅうせい》ランク9!!」

 

 

 ――空が、赤く裂けた。

 

 雲を突き破り、燃えさかる巨大な岩の塊が、いくつも、いくつも、城へと降りそそいでいく。

 

 轟音。

 衝撃。

 大地が揺れ、熱風が、ロスの髪を激しくあおった。

 

 城は、炎と土煙に飲み込まれて、まったく見えなくなった。

 

「……ふん」

 

 ロスは、鼻を鳴らした。

 

 あれだけの隕石だ。

 石を積み上げただけの城など、ひとたまりもない。

 塔は吹き飛び、石垣は崩れ、堀は瓦礫で埋まっているはず。

 

 やがて、風が土煙を押し流していく。

 

「な……なんだと……っ」

 

 ロスの目が、大きく見開かれた。

 

 城は、そこに建っていた。

 

 石垣の一部が欠け、瓦がいくつか剥がれ落ちている。

 ところどころ、白い壁に焦げ跡がついている。

 

 だが、それだけだった。

 

 巨大な塔は、びくともしていない。

 金色の魚の像が、何事もなかったかのように、朝日を受けて光っている。

 

「ば……馬鹿な……」

 

 ロスは、目をこらした。

 

 城の周囲。

 堀の外側に沿って、空気が、わずかに揺らいでいる。

 陽炎のような、うっすらとした光の膜が、城全体を、すっぽりと包み込んでいた。

 

「魔法障壁か……」

 

 しかも、ランク9の隕石を、ほぼ防ぎきるほどの。

 

「私の魔法を、ほぼ無傷で……あの規模の城を丸ごと覆う障壁など、宮廷魔導士を100人並べても張れんぞ……いったい、どうやって……」

 

 ロスは、奥歯をかみしめた。

 体の奥から、ごっそりと魔力が抜け落ちている感覚がある。

 

(王鬼流星は、撃ててあと一発……)

 

 もう一発撃ったところで、あの障壁を抜けるとは思えない。

 

「……ちっ」

 

 ぎこちない指を、ぎりぎりと握り込む。

 治りかけの神経が、悲鳴のような痛みを返した。

 

 それでも、ロスは、握るのをやめなかった。

 

「まったく……」

 

 かすれた声が、震えた。

 

「この国は、私を不愉快にさせるのが、本当に得意ですねぇ!!」

 

 

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