スキル『日本』。初期は『勤勉になるだけ』のゴミだったが、開花するにつれ、ゼロ戦、忍者、和食、台風……いくらなんでも強すぎて、みな頭を抱えてる‐センエース‐ 作:閃幽零
29話 よしキタァアアアア!!
センは、走りながら、空を見上げた。
(来い……ゼロ戦!! ロスまでの道を、切り開いてくれ!!)
――轟音が、空を裂いた。
沈みかけた夕日を背に、翼に赤い丸を描いた機体が、まっすぐに急降下してくる。
「て、鉄の龍だぁあああ!!」
ゼロ戦の翼が、火を噴いた。
バババババババババッ!!
土煙の線が、まっすぐに、ロスの本陣へと走っていく。
その線上にいた兵たちが、次々と吹き飛んでいく。
だが、本陣の手前で、
「皇子を守れぇええ!」
「ミスリル陣形!!」
ガガガガガガッ!!
弾丸が、何かに弾かれた。
本陣を覆う、何重もの光の障壁。
その前に並んだ、大盾の重装兵たち。
一枚目の障壁が砕け、二枚目が砕け、盾ごと兵が吹き飛ぶ。
防御魔法の使い手たちが、血を吐きながら、障壁を張り直していく。
ゼロ戦が、轟音を残して、空の彼方へと飛び去っていった。
土煙が晴れる。
本陣の周りには、倒れた重装兵と魔導兵が、折り重なるように転がっていた。
その中心で、
ロスは、立っていた。
「ちっ……壁は全滅ですか。肉壁も、タダではないのですがね……」
ロスは、足元の亡骸に目もくれず、声を張り上げた。
「将軍級は、私のもとへ集まりなさい! 愚か者どもが、私の首を狙っています!」
ロスの周囲を、見るからに格の違う将軍たちが、剣を抜いて固めていく。
「あの鉄龍は、おそらく、一日に一度しか呼べません! 何度でも呼べるなら、城攻めの最中に使っていたはず! もう、恐れるものは何もない! 全力で殲滅するのです!」
その声は、戦場の喧騒を裂いて、センの耳にまで届いた。
(くそっ……お前の言う通りだよ、ロス! もう、こっちに切り札は残ってねぇ! ……けど、壁は消えた。これなら……俺たちの刃が、あいつの喉元に届く可能性はある!)
ミシャが、センの隣で、
「鉄龍は、おそらく、もうきてくれない! 直接ロスを殺すしかない! 全員、突っ込めぇえええ!!」
1000の刃が、一斉に、本陣へと殺到していく。
★
すさまじい乱戦になった。
桜の刃紋が、夕闇の中でひらめくたびに、デカール兵が倒れていく。
その刃は、鎧も、盾も、まるで紙のように断ち切っていく。
「どけぇえええ!」
「ロスまでの道を開けろぉお!」
ミシャは、その先頭にいた。
本陣まで、あと少し。
そこで、将軍の一人が、大剣を振りかぶって立ちはだかった。
ミシャは、その懐へ滑り込むように踏み込み、刀を一閃させた。
将軍の首が、宙を舞う。
「邪魔ぁああああ!」
二人目の将軍の槍をかいくぐり、胴を薙ぐ。
三人目の将軍の剣を受け流し、喉を突く。
(今のミシャなら……マジでロス以外は殺せる……ロスさえ……ロスさえ殺せたら……っ)
だが、そのロスが遠い!
将軍を一人斬れば、その後ろから、また別の将軍が現れる。
ロスの周囲は、帝国の上澄みが、何重にも固めていた。
(くそぉ……とどかねぇ……ちくしょぉ……っ)
ミシャの刀も、少しずつ鈍っていく。
将軍の剣が、ミシャの肩を浅く裂いた。
その周囲で、一人、また一人と、セファイラの兵が倒れていく。
「無念……」
「姫様……あとは、どうか……」
夕日が、地平線の向こうに沈みきる。
センの周りに立っているのは、また、ミシャだけになっていた。
相手は、まだ……20万以上残っている。
★
「はぁ……はぁ……」
センは、刀を杖のようにして、どうにか立っていた。
(まだだ! まだ終わらんよ!! 日本刀千本桜ぁああ!)
――心の中で叫ぶ!
が……何も起きない。
(……っ! 蘇生が発動しねぇ……3度目は無理なのか……それとも、1日に2回は無理なのか……くそぉ!!)
刀を構えたまま、ミシャと背中を合わせる。
周りを取り囲むデカール兵が、じりじりと、輪を狭めてくる。
背中越しに、ミシャの声がした。
「セン、逃げなさい」
「うそでしょ。俺、ここからどうやって逃げるんすか。試してみるんで、やり方教えてください」
「私が道をつくる。どうにか逃げて。あなたさえ生きていれば……どうにかなるって、そう思えるから」
「……そのポジションにいるのは、俺じゃなく、あんただろ、王女様」
「セン! いうことを聞きなさい!」
「悪いね、お姫様……俺は、命令されるのが大嫌いでね」
言いながら、センは、心の中で、
(来い……来い……来い……)
刀を握る手に、血がにじむほど力をこめる。
(必要だってんなら、俺の命をくれてやるから……ミシャを守れる力よ……目覚めろ!)
5歳のころ、ミシャに誓った言葉が、頭の中によみがえる。
――あなたを、絶対に守る。
心の底から誓った想いは、それだけじゃない。
――あなたのヒーローになってみせる。
――ピンチになったら、かけつけて、どんな敵だって倒してみせる。
(まだあるだろ! 日本の底力なんか、いくらでもぉおおおおお!)
デカール兵たちが、一斉に、武器を振りかぶった。
四方八方から、刃が迫る。
ミシャが、センをかばうように、前へ踏み出そうとした。
いつだってそう。
彼女は、センを守ろうと、その身を盾にする。
「ふざけんな、ミシャ!! お前はいつも――」
――その時。
世界の声が聞こえた!!
(よしキタァアアアア!!)
――固有スキル『日本』が進化。
――究極超スキル『万華鏡《まんげきょう》・英雄列伝《えいゆうれつでん》』を獲得!!!
脳内に、スキルの情報が流れ込んでくる。
万華鏡・英雄列伝の効果は――
『影分身ランク10を会得している、日本の最強英傑』を、10人召喚する!!!
・召喚英傑、一覧。
――『宮本武蔵《みやもとむさし》』 天下無双の二刀流
――『佐々木小次郎《ささきこじろう》』 秘剣・燕返し
――『本多忠勝《ほんだただかつ》』 戦国最強
――『真田幸村《さなだゆきむら》』 日本一の兵《つわもの》
――『前田慶次《まえだけいじ》』 天下御免の傾奇者《かぶきもの》
――『武蔵坊弁慶《むさしぼうべんけい》』 仁王立ちの荒法師
――『源義経《みなもとのよしつね》』 八艘《はっそう》飛びの天才
――『柳生十兵衛《やぎゅうじゅうべえ》』 隻眼の剣聖
――『雷電為右衛門《らいでんためえもん》』 史上最強の力士
――『服部半蔵《はっとりはんぞう》』 最強のシノビ