スキル『日本』。初期は『勤勉になるだけ』のゴミだったが、開花するにつれ、ゼロ戦、忍者、和食、台風……いくらなんでも強すぎて、みな頭を抱えてる‐センエース‐   作:閃幽零

31 / 31
30話 咲き誇る英雄。

 

 30話 咲き誇る英雄。

 

 ――光が、はじけた。

 

 四方から振り下ろされた刃《やいば》が、センとミシャに届く、その寸前。

 二人を囲むように、十本の光の柱が、夜の闇を突き破って立ち上がった。

 

 迫っていた刃が、光に弾かれる。

 最前列のデカール兵たちが、まとめて後ろへ吹き飛ばされた。

 

「な、なんだ……!?」

「ひ、光が……!」

 

 デカール兵たちが、思わず足を止める。

 

 光の中から、人影が、歩み出てきた。

 

 十人。

 

 着ているものも、手にしている得物《えもの》も、ばらばらだった。

 だが、全員が、この世界のどんな戦士とも違う空気をまとっていた。

 

 静かすぎる。

 20万の敵を前にして、誰一人、息ひとつ乱していない。

 

(……マジで、来た……日本の歴史における……ヒーローの中のヒーローたち……)

 

 センは、ごくりとつばを飲んだ。

 

 英傑《えいけつ》たちが、同時に、指で印《いん》を結ぶ。

 

 

「「「「「「「「「「影分身ランク10」」」」」」」」」」

 

 

 一人が、十人に。

 十人が、百人に。

 

 並び立つのは、

 一騎当千《いっきとうせん》を超える怪物、

 ……合計100人!!

 

 次の瞬間、百の英傑が、四方八方へと散った。

 

 

 ★

 

 

 最初に動いたのは、二本の刀を下げた男だった。

 

 宮本武蔵《みやもとむさし》。

 

 敵の群れへ、ゆらりと歩み入る。

 走ってすらいない。

 それなのに、武蔵が一歩進むたびに、周囲のデカール兵が、まとめて崩れ落ちていく。

 

「い、いつ斬られた……!?」

「見えねぇ! 刀が見えねぇえ!」

 

 二本の刃が、いつ振るわれたのか、センの目でも、まったく追えなかった。

 

 その隣で、巨大な槍が、風を切った。

 

 本多忠勝《ほんだただかつ》。

 

 穂先《ほさき》にとまったトンボが、真っ二つになったという名槍・蜻蛉切《とんぼぎり》。

 それが、横一文字《よこいちもんじ》になぎ払われる。

 騎兵が、馬ごと、十騎まとめて吹き飛んだ。

 

「な、なんだ、この化け物どもはぁあ!」

「矢を! 魔法を撃てぇえ!」

 

 矢と魔法の雨が、一斉に放たれる。

 その前に、一人の大男が、仁王立ちになった。

 

 武蔵坊弁慶《むさしぼうべんけい》。

 

 矢が、炎が、雷が、全身に突き刺さる。

 それでも、弁慶は、一歩も退《ひ》かない。

 

「う、うそだろ……なんで倒れねぇ……!」

 

 弁慶は、なぎなたを大きく振りかぶり、

 一振りで、射手《いて》の列をまるごとなぎ倒した。

 

 その向こうでは、見上げるほどの巨体が、重装兵の列に突っ込んでいた。

 

 雷電為右衛門《らいでんためえもん》。

 

 張り手が、一発。

 大盾を構えた重装兵が、盾ごと、後ろの十人を巻き込んで吹っ飛んでいく。

 

「盾が……盾ごと持っていかれる……!」

 

 そして、気づけば、戦場のあちこちで、影が揺れていた。

 

 服部半蔵《はっとりはんぞう》。

 

 闇から闇へと渡り歩き、将軍の背後に音もなく現れては、首をかき切って、また闇へ消える。

 

「モ、モーブ将軍がやられた!」

「どこだ! どこから来た!?」

 

 残る五人も、止まらない。

 

 小次郎《こじろう》の長刀《ちょうとう》が、ツバメのように宙を返る。

 幸村《ゆきむら》の十文字槍《じゅうもんじやり》が、敵陣を真っ二つに割る。

 慶次《けいじ》が、笑いながら、将軍を馬ごと叩き斬る。

 義経《よしつね》が、兵の頭から頭へと跳び渡り、指揮官だけを次々と仕留めていく。

 十兵衛《じゅうべえ》の刃が、闇の中で一瞬だけ光るたびに、誰かが倒れる。

 

 しかも、それが、百人分。

 

「なんで、そんな長い剣を自在にぐぉおお!」

「十文字槍に気をつけろ!! 千人の陣形を、一人で真っ二つに割りやがった!」

「あの無駄に派手な野郎、鼻歌まじりで将軍を斬ってやがる!」

「上だ! あの小柄なやつ、兵の頭を足場にして跳んでくる! 速すぎ――ぐぁああ!」

「片目だと侮《あなど》るな! すさまじい剣ぎぁぁああ!!」

 

「分身の一体一体が、将軍クラス……いや、それ以上……それが、100……」

「か、勝てるわけねぇ……なんだよ、この悪夢はぁあ!!」

 

 20万の軍勢が、みるみる溶けていく。

 

 15万。

 10万。

 5万。

 

 雑兵《ぞうひょう》は、瞬きする間に。

 将軍クラスですら、ほんの数合《すうごう》も持たずに、ばたばたと倒れていく。

 

(強ぇ……強すぎる……これが、日本の英雄……いや、さすがにスキルで強化されてんだろ……こんな連中が、かつての日本にガチでいたってのは……さすがにありえねぇだろ……ありえないよね?)

 

 センの隣で、ミシャが、呆然《ぼうぜん》と、その光景を見つめていた。

 

「……なんなんだ……これは……ここ最近、ずっと……なんなんだ……」

 

 東の空に、月がのぼり始めていた。

 その青白い光の中で、英傑たちの刃だけが、白く、鋭く、閃《ひらめ》き続けている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。(作者:閃幽零)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

俺の名は砦トウシ。半年前、俺たちはクラス転移に巻き込まれた。▼皆が女神から授かったのは、どれもとんでもないチートスキル。▼対して、俺が得たスキルは――『名字が田中になる』(効果:スキル使用中、近くに田中姓の人間がいると、『同じ苗字の人がいる!』とちょっと嬉しくなって、少しだけ元気を分けてもらえる)▼……な、ナメやがって……▼他の連中は、どんどん強くなり、▼気…


総合評価:71/評価:4.67/完結:82話/更新日時:2026年08月19日(水) 07:27 小説情報

センエース(作者:閃幽零)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

闇金で金を借りタイムリープで踏み倒す。――クラス転移に巻き込まれなかった教師は責任を取らされクビになる。ダンジョン配信者になるが上手くいかない。ある日『タイムリープ権:購入額100万円』を得たので必死に人生を立て直す。▼――(あらすじ詳細)授業中、教え子達が一斉に消えた。呆然としていると、女神が現れ、「あの子たちには異世界に行ってもらいました」と告げてきた。…


総合評価:359/評価:6.8/連載:80話/更新日時:2026年10月13日(火) 07:55 小説情報

TS憑依ゼンゼ(作者:TS好き)(原作:葬送のフリーレン)

幼少期のゼンゼに憑依した。▼とりあえず、死なないように頑張ろう。


総合評価:1905/評価:8.06/連載:15話/更新日時:2026年08月22日(土) 20:13 小説情報

個性図書館によるヒーローアカデミア(作者:ヨガマスター)(原作:僕のヒーローアカデミア)

ヒロアカを見ながらLibrary of ruinaをやってたら死んだっぽい。▼そしたらなんかヒロアカの世界に転生した。▼しかも個性図書館。▼……どうしよ?▼ヒロアカ世界で図書館の機能を使えるように拡大解釈と強化が施されてるのでそこで無理になった人は素直に見るのをやめましょう。▼あと作者は割とヒロアカのにわかだから設定に矛盾があったらごめん▼ちなみに個性図書館…


総合評価:3244/評価:7.97/連載:33話/更新日時:2026年08月12日(水) 12:03 小説情報

マコラマコマコ 異戒神将ミサカ!(作者:モリーマ)(原作:とある科学の超電磁砲)

前世の記憶を持ったまま、なぜかミサカシリーズの一体にTS転生してしまった主人公。▼しかも、転生したその日は――絶対能力進化計画によって、一方通行と戦う予定の日だった。▼逃げ場なし。▼勝ち目なし。▼転生特典らしきものも、特になし。▼追い詰められた主人公は、半ばヤケになって一方通行を挑発する。▼「ミサカは転生チートの恐ろしさを知りやがれと白髪モヤシを挑発します!…


総合評価:9032/評価:8.12/連載:12話/更新日時:2026年10月10日(土) 07:25 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>