スキル『日本』。初期は『勤勉になるだけ』のゴミだったが、開花するにつれ、ゼロ戦、忍者、和食、台風……いくらなんでも強すぎて、みな頭を抱えてる‐センエース‐ 作:閃幽零
32話 閃華繚乱。
センの背中に、光が走った。
夜の闇の中から、一本、また一本と、剣が現れる。
扇のように重なり合っていく。
やがて、無数の刃が、左右に大きく広がった。
きらめく銀の翼。
後光のように、月明かりを跳ね返し、神々しい輝きを放っていた。
「セン……?」
ミシャが、呆然とセンを見上げた。
センは、深く息を吸いながら、天を仰ぎ、
「月がきれいですねぇ、姫」
「え?」
ミシャが目を丸くした、その直後。
センは、ミシャをひょいと抱き上げた。
「……セ、セン!? 何を――」
「特等席でご覧に入れますよ」
剣の翼が、大きく羽ばたく。
二人の体が、ふわりと浮き上がる。
そのまま、すさまじい速度で、夜空へと押し上げられていく。
「きゃっ……!」
ミシャが、とっさにセンの首にしがみついた。
風が、耳元で轟音《ごうおん》を立てる。
デカールの本陣が、みるみる小さくなっていく。
センは、月を背にして、空中で静止した。
遥かなる高みから、デカール兵を見下ろす。
敵本陣を覆う光のドーム。
その周りで、うろたえながらセンを見上げる、数千の兵。
障壁の奥で、青ざめた顔をしている、ロス。
(毘沙門天《びしゃもんてん》の効果はだいたい把握した。飛行機能と、千本桜で出した1000本の日本刀をファンネルみたいに飛ばす機能の2つがメイン。今の俺のレベルだと、稼働時間は数分が限度。……多分、ほかにも裏効果があるんだろうが……今は、これだけで十分)
センは、腕の中のミシャを、しっかりと抱き直し、
「――裏閃流秘奥義《うらせんりゅうひおうぎ》……乱桜《みだれざくら》・閃華繚乱《せんかりょうらん》――」
宣告と同時、薄紅《うすべに》の刃紋が夜を彩《いろど》る。
研《と》ぎ澄《す》まされた月光が、刃《やいば》の頬を照らす。
やがて――
1000本の日本刀も、センの背後で、剣翼に寄り添うように輝きだす。
威圧するように瞬《またた》く銀華の両翼。
それは、夜に咲いた桜。
淡《あわ》く匂い立つ鋼《はがね》の満開。
「……きれい……」
腕の中で、ミシャが、息をのむようにつぶやいた。
「あなた様ほどではありませんよ」
瀟洒《しょうしゃ》な軽口で場を飾ってから、センは、遥か下のロスをにらみつけた。
「……さあ、ダンスの時間だぜ、バカども。日本人をキレさせたらどうなるか、教えてやるよ」
千の花びらが、いっせいに、刃の咎《とが》を思い出す。
「命をナメるな、クズ野郎」
その言葉を合図に、
――桜が、散った。
1000本の日本刀が、夜空からこぼれ落ちる。
流れ星よりも艶《あで》やかに。
春を熔《と》かす花吹雪よりも儚《はかな》く。
ひとひらが、ひとつの命を連れていく。
花びらの舞う音は、悲鳴にかき消されて、誰の耳にも届かない。
狂い咲く刃の桜は、敵陣の中で渦《うず》を巻く。
「がぁあああ!」
「ぎゃぁああああ!」
「逃げ――がはっ!」
光のドームに刃の嵐が叩きつけられた。
障壁は、一瞬も持たない。
ロスを守っていた将軍たちが、剣を構えるも、
四方八方から同時に襲いかかる刃を、防ぎきれるはずもなし。
一人、また一人と、壁が崩れていく。
そして、ついに――
刃のスコールが、ロスへと降り注ぐ。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」