スキル『日本』。初期は『勤勉になるだけ』のゴミだったが、開花するにつれ、ゼロ戦、忍者、和食、台風……いくらなんでも強すぎて、みな頭を抱えてる‐センエース‐ 作:閃幽零
5話 拡張進化……そしてKILL!!
(へぇ……拡張進化なんてのもあるのか……ありがたいねぇ)
センは、口の端をつり上げた。
「行けよ、紫電改……皇子様に、お前の雄姿を、とくと見せてさしあげろ」
――再び、轟音が、夜空を裂いた。
ゼロ戦とは違う、太く、重い唸り。
月明かりの中を、ずんぐりとした機影が、まっすぐに突っ込んでくる。
生き残っていた兵が、空を見上げて、目を見開いた。
「なっ……報告では……鉄龍は一体しか……ぐぁあああ!」
ゼロ戦の比ではない火線が、野営地に降りそそいだ。
わずかに残っていた兵が、まとめて吹き飛ぶ。
もう、盾になる者は、一人もいない。
そして、火線は、ルキをとらえた。
「ずぉぁあああああああああああああああああああ!!」
右腕が、肘から先ごと消し飛んだ。
左足は、膝から下が千切れ飛ぶ。
弾けた破片が、左目を潰した。
紫電改が、夜空の彼方へと飛び去っていく。
焼け焦げた野営地の真ん中で、ルキは、血だまりの中に転がっていた。
「が……ぁ……ぁ……」
(ちっ、まだ生きてやがる。……ロスと同じで、しぶとい野郎だ……じゃあ、もうちょっと楽しませてもらおうか)
センは、静かに、右手を前に突き出した。
(来い! 万華鏡・英雄列伝!)
――光が、はじけた。
血だまりの中で這いつくばるルキを囲むように、十本の光の柱が、夜の闇を突き破って立ち上がる。
光の中から、十人の英傑が、静かに歩み出てきた。
その目は、数えきれないほどの死をくぐり抜けてきた者だけが持つ、底の見えない静けさをたたえていた。
ただそこに立っているだけで、夜の森の空気が、研ぎ澄まされた刃のように張りつめていく。
「なっ……あっ……な、なんだ……貴様ら……」
ルキの残った右目が、恐怖に見開かれる。
英傑たちが、同時に、指で印を結んだ。
「「「「「「「「「「影分身ランク10」」」」」」」」」」
10人が、100人になった。
二本の刀を、だらりと下げる者。
長槍の穂先を、まっすぐルキの喉元に向ける者。
なぎなたを、肩に担ぐ者。
そして、素手のまま、ゆっくりと腰を落とす巨漢。
100人分の殺気が、血だまりの中の、たった一人に注がれる。
「ひ、ひぃいいい!」
ルキは、残った手足で地面をかき、なんとか這って逃げようとする。
だが、英傑たちは、それを許さなかった。
100人が、
まるでセンの怒りを体現するかのように、
「ぎゃああ! がぁああ!!」
一瞬では死なないように、
「いぃいいいい! ぎぃいい! やめろぉ! なんでもする! 金が欲しいなら……があああ! やめろと言っているだろぉおお!」
丁寧に、なぶるように、
「がぁああ! あぃいいい! うぁあああああああ!!」
痛みという痛みを徹底的に刻み込むようにしてから、
「あ……が……はっ――」
最後に、しっかりと、とどめを刺した。
直後、英傑たちは、役目を終えたように、光の粒になってほどけていった。
センは、丘を下り、焼け焦げた野営地へと足を踏み入れ、
転がっている兵たちを、一人ずつ確かめていく。
息のある者は、一人もいない。
「……全員、完全に死んでるな……ヨシ!」
最後に、血だまりの中のルキのそばで、足を止める。
ルキは、もう、ぴくりとも動かなかった。
「セファイラ、ナメんな、ふぁっきゅー」
センは、死体に向かって中指を立てながら、つばを吐いた。
静けさが戻った森の中で、深いため息をつく。
(死体……どうするかな……妖怪にするか……それとも……)
色々と考えた末に、センは、
(……いや、こいつらの死体は残しておくか……レベルそのままで妖怪になるなら戦力アップだが、どうせ全員レベル1になるしな……政治的にも、残しておいたほうが、あとあと都合がよさそうだし)
そう思った、その時、
風に乗って、遠くから、かすかに時計塔の鐘の音が届いた。
(……0時を回ったか)
センは、目を閉じた。
昼間、謁見の間で、ルキに頭をはじかれた老兵の顔が浮かぶ。
(……じいさん、悪いけど、まだまだ頑張ってもらうぜ。『死んでも働け』ってのが、株式会社セファイラのモットーなんでね)
心の中で、静かに唱える。
(日本刀千本桜)
右手に、ずしりとした重みが生まれた。
桜の刃紋が、月明かりを受けて、淡く光る。
これで、じいさんも、今ごろ城の中で起き上がっているはず。
「……ルキの死を、皇帝はどう受け取るかな……」
センは、刀を握ったまま、東の方角をにらみ、そうつぶやいた。