スキル『日本』。初期は『勤勉になるだけ』のゴミだったが、開花するにつれ、ゼロ戦、忍者、和食、台風……いくらなんでも強すぎて、みな頭を抱えてる‐センエース‐ 作:閃幽零
5話 忍術を学ぶってばよ。
センの脳内に、直接流れ込んでくる『忍者学園』のスキル情報。
同時に、『謁見《えっけん》の間《ま》』の窓の外。
……城下町郊外に広がる平野で、地鳴りが響いた。
「な……なんだ、今の音は!」
その場の誰もが、弾かれたように立ち上がり、窓の外を見た。
何もなかったはずの平野に、忽然《こつぜん》と、巨大な武家屋敷《ぶけやしき》が出現していた。
「……あれは……いったい……」
誰もが困惑する中、
センだけが、
(忍者学園……あの武家屋敷の中で鍛錬《たんれん》を積むと、分身とか水遁《すいとん》とかの忍術を獲得できる……)
その正体を正しく理解していた。
(ガチの忍術を獲得できる学校なんて……日本に実在しねぇよな。漫画やゲームの中にしか存在しない代物《しろもの》だ)
そこで、センはごくりとつばを飲み、
(ま、まさか……『実在しないもの』でも『概念として存在する』なら召喚できるのか? スキル日本って、もしかして、思った以上にチート?)
★
武家屋敷の門をくぐると、黒いシノビ装束《しょうぞく》の男が一人、音もなく立っていた。
輪郭《りんかく》がわずかに揺らいでいて、人間というより、精霊に近い何か。
『忍者教師』を名乗るそいつは、この忍者学園で何が出来るのか、大体のことを教えてくれた。
当然、みな困惑した。
「……得体が知れん。安易《あんい》に信じるべきではないかと」
「そもそも、忍術とはなんだ? 魔法とは違うのか?」
重臣たちが渋い顔をする中、ミシャが静かに口を開く。
「優れた技能を得られるというのであれば、試してみるべきでは? ……現状、他に、手はないのだから」
姫にうながされたことで、
ワラにもすがる思いのセファイラの兵たちは、
全員が、忍者学園で訓練を受けることになった。
ロス軍が攻めてくるまで、あと3日ほどだが、
忍者教師が言うには、その短時間でも、
基礎忍術である、
・『属性忍具(得意属性に対応した、クナイや手裏剣などの忍者武器を召喚)』
・『影分身(実体のある分身を召喚)』
・『属性遁術《ぞくせいとんじゅつ》(得意属性に対応した身を隠す技)』
この三つはマスターできるという。
★
その後、全員が死に物狂いの鍛錬を開始した。
指が砕けるほど印を結び、血マメが裂けるほどクナイを投げる。
時折、忍者教師が『チャクラをこじあける』とか言って、ボッコボコにしてきた。
「なんだ、これは! 拷問を受けているだけではないか!」
と文句を言う者多数。
しかし、
「影分身ランク1!!」
「おい、本当にできているぞ! 分身どころか、光矢すら使えなかった俺が!」
「私も爆裂クナイを召喚できた!」
才能ある者は、数時間で忍術を使えるようになった。
それを見て、文句を言っていた者たちの目の色も変わる。
――3日経った頃には、
「影分身ランク3!」
「爆炎手裏剣ランク5!」
「土遁術《どとんじゅつ》ランク2!」
大半の者が基礎忍術をマスターすることに成功。
「すごいぞ! 俺はランク1の魔法も使えないのに、忍術だと、ランク5が使える!」
「俺はランク3が限界だ……お前と俺で何が違うんだ……俺の方が頑張っているのに……」
「才能だろ」
ポテンシャルによって、会得できる忍術のクオリティに差はあるが、
忍術はそもそもが『上位技』なので、最低ランクの忍術でも、そのスペックは宮廷魔導士の中級魔法に匹敵する。
つい先日までクワを握っていた民兵が、『炎をまとったクナイ』で丸太を三本まとめて貫いた時には、老将たちが言葉を失っていた。
ちなみに、センも当然、死ぬ気で鍛錬して、
『雷呪《らいじゅ》クナイランク2』、『影分身ランク1』の二つを獲得した。
ようやく出せた分身は、本体のセンよりだいぶ弱く、どこか眠たげな顔をしていた。
遁術《とんじゅつ》にいたっては、最後まで発動すらしなかった。
本当に才能がない!
一方、天才のミシャは、
『龍毒クナイ・毒々手裏剣(どちらもランク7)』、『影分身ランク6』、『毒霧遁術《どくむとんじゅつ》(ランク6)』をマスターした。
凶悪な毒霧の中から、5体の分身が同時に姿を現した時には、忍者教師すら、ぽかんと口を開けていた。
(俺のスキルで出した忍者学園なのに……なんで、俺が『忍たま』レベルで、ミシャが『服部半蔵《はっとりはんぞう》』級なんだ……)