機械仕掛けの竜と相棒の物語   作:サンデン

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目覚めし虐殺竜

鉄と硝石の匂いが鼻腔を満たす。視界に広がるのは、見慣れぬ緑豊かな巨樹の森。空を見上げれば、見上げるほどに巨大な翼竜が優雅に滑空し、遠くの地平線では聞いたこともないような獣の咆哮が地を揺るがしていた。

 

「……ここは、どこだ?」

 

声に出そうとして、思考が硬直した。発せられたのは、耳障りな金属音と高圧電流が放電するような電子音の混ざった奇妙なノイズだった。

 

視線を下ろす。そこにあったのは漆黒の装甲に包まれた、鋭利な流線型のボディ。地面を砕かんばかりの強靭な逆関節の脚部と、背中に背負った巨大な2門のロングレンジパルスレーザーライフル

 

         虐殺竜ジェノザウラー

 

頭脳を満たすのは、生体コンピュータとしての冷徹な演算能力と、本能に刻まれた破壊の衝動。私は『ゾイド』の世界から、よりによって過酷な自然界である『モンスターハンター』の世界へと転生してしまったらしい。

 

遭遇

 

巨木を踏みしめて歩き出すたび、ギシリと重厚な装甲が軋む音が響く。その圧倒的な質量と威圧感は、この世界の生態系にとっても異物そのものだった。

 

「グルル……」

 

低く唸り声を漏らした瞬間、周囲の空気が凍りついた。

 

草むらがガサリと揺れ、姿を現したのは青緑色の鱗を持つ猛獣――中型肉食竜、ドスジャギィだ。群れのリーダーであるその巨獣は、縄張りに侵入したこの「鉄の怪物」に向かって鋭い牙を剥き、威嚇の遠吠えをあげる。さらに、その背後から数十頭のジャギィたちが取り囲むように姿を現した。

 

人間の感覚であれば恐怖に足がすくむ場面だが、私の心拍数は上がらない。代わりに、脳内のターゲットスコープが自動的に赤く点滅を開始した。

 

『対象:小型および中型爬虫類型生物。脅威度:極小。排除を推奨』

 

ドスジャギィが跳躍し、鋭い爪で私の装甲を引っ掻こうと飛びかかってくる。

 

――遅い。すべてがスローモーションに見える。

 

私は上半身をひねり、その巨大な尾を一閃させた。

 

「ガインッ!」

 

凄まじい衝撃波を伴う尾撃がドスジャギィの側面に直撃し、吹き飛んだ巨獣は百メートル先の巨木に激突して動かなくなった。群れの主が一撃で沈んだのを見た瞬間、周囲を取り囲んでいたジャギィたちは恐怖に駆られ、鳴き声を上げて一目散に森の奥へと逃げ出していった。

 

新たなる頂点

 

戦いは一瞬で終わった。しかし、私の背筋(正確にはフレーム)に、さらなる強者の気配が突き刺さる。

 

空が急に暗くなった。見上げれば、太陽を背にして舞い降りる巨大な影。赤黒い甲殻に覆われ、鋭い鉤爪と禍々しい角を持つ飛竜の王――リオレウスだった。

 

縄張りを荒らされたと思ったのか、あるいは目の前の異質な存在を危険と察知したのか、空の王は大きく息を吸い込む。次の瞬間、凄まじい熱量を帯びた火球がこちらに向かって放たれた。

 

直撃の炎が私を包み込み、周囲の木々が一瞬で黒焦げになる。

 

だが、ジェノザウラーの重装甲と冷却システムは、その程度の熱風など軽々と無効化した。炎の煙の中から、赤く光るセンサーが静かに浮かび上がる。

 

『戦闘モード移行。目標を排除する』

 

私は前傾姿勢を取り、両足のアンカーを地面に打ち付け尻尾のフィンを展開した。

口内の砲身から青白い微弱な電気がバチバチと迸り、周囲の大気が重圧に震え始める。

 

この世界で生き残るために、私はただのモンスターではない。

 

生ける破壊神として、この世界の頂点に君臨してやろう――。

 

 

 

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