古代林の奥深く、地盤が低く湿潤な盆地エリア。
そこはかつてないほどの異様な重圧感に満ちていた。
『前方、約百メートル。超大型獣竜種の熱源を検知』
地響きを伴って姿を現したのは、苔むした巨大な岩山のような甲殻を背負い、丸太の如き太い尾を持つ山嵐――獣竜種ドボルベルクだった。
その質量は、これまでに遭遇したどのモンスターをも凌駕する。およそ数トン、あるいはそれ以上の巨体が大地を踏みしめるたび、周囲の木々が根元からメキメキと音を立てて傾ぎ、足元の地面が液状化するように沈み込んだ。
ドボルベルクは縄張りに踏み込んできた私を認めると、不機嫌そうに鼻先から熱気を吐き出し、その巨体を大きく揺すった。
『分析:対象の質量、約十五トン。装甲硬度および物理的ブレスへの耐性、極めて高』
私は戦闘行動に移行し、背部のロングレンジ・パルスレーザーライフルを前方へと展開した。
初撃として、超高速の高周波パルス光線をドボルベルクの巨大な肩甲骨へと撃ち込む。
ピシュッ! と音もなく放たれたレーザーは、硬い苔と甲殻を直径数センチにわたって完璧に穿った。
だが――。
「グルォォォッ!!」
ドボルベルクは痛みに咆哮をあげたものの、その巨体ゆえの圧倒的な肉厚と脂肪、そして異常なまでのタフネスにより、致命傷には程遠かった。まるで、分厚い毛布に小さな針を刺されたようなものだ。
むしろ、痛みによって激怒した山のような獣竜は、その巨大な尾をハンマーのように振り回し、暴走を開始した。
質量という暴力
ドボルベルクの巨体が回転を始める。
遠心力を限界まで高めた尾の重撃が、凄まじい風圧を伴って襲いかかってきた。
『警報:物理衝撃の閾値を超過。フレームに高負荷を検知』
「ドゴォッ!!」
鉄の巨塊同士が衝突するような、耳をつんざく激音が森に響き渡る。
私の高密度チタン合金と逆関節フレームは確かに堅牢だが、相手の質量と回転エネルギーは私の想定する「通常の戦闘物理法則」の枠を軽く超えていた。一撃の衝撃で、私の巨体が数メートル押し戻され、足元の地面がぐにゃりと深くえぐれる。
さらに、ドボルベルクは巨体を真上に跳ね上げ、その重量のすべてを乗せて押し潰す「ボディプレス」を繰り出した。
「ガアァァンッ!!」
大地が割れ、衝撃波が四散する。
巨岩を背負ったモンスターの全自重が、上から私を押し潰すように圧し掛かる。装甲自体は耐え切っているものの、足回りのサスペンションとダンパー機構に尋常ではない負荷がかかり、私の内部システムから警告の電子音がけたたましく鳴り響いた。
『警告:下部フレームの荷重限界に近づいています。近接戦闘における質量優位性の確保、困難』
これまでの相手(リオレウス、ティガレックス、ナルガクルガなど)は「スピードや特殊能力」に特化していたため圧倒できたが、この純粋な「質量と物理の暴力」の塊であるドボルベルク相手には、ジェノザウラーといえども容易に押し切れない泥臭い膠着状態を強いられていた。
山のような巨竜が再び低く唸り声を上げ、巨体を利した圧倒的な突進の構えに入る。
私の赤いセンサーが、激しく明滅しながら巨体の軌道を正確に捉え続けていた――。