ハンターズギルド拠点の広場は、連日かつてないほどの熱気に包まれていた。
中央にそびえ立つジェノザウラーの周囲には足場が組まれ、名工の名工鍛冶師が連日徹夜でハンマーを振るっていた。その手元には、先日私たちが共に討伐したドボルベルクの巨大な甲殻や、剥ぎ取られたばかりの頑強な尾の素材が山のように積み上げられている。
「おい、もっと火力を上げろ! この未知の金属にドボルベルクの頑丈な苔甲殻を焼き嵌めするには、生半可な熱じゃ溶け合わねぇんだ!」
名工鍛冶師の怒声が響く中、私の内部フレームは驚異的なスピードで自己修復と「異素材の統合」を進めていた。
右脚の深刻な駆動系フレームは、ドボルベルクの超高密度な骨格組織と複合装甲によってリインフォース(強化)され、かつて以上の圧倒的な耐荷重と衝撃吸収性能を獲得していく。さらに、背部のロングレンジ・パルスレーザーライフルの基部にも、獣竜種の強靭な靭帯組織を模したショックアブソーバーが組み込まれ、連射時の安定性が飛躍的に向上した。
『システム再構築完了。……機体出力:115%へ上昇』
傷が癒えたどころか、この世界のモンスターの素材を取り込んだことで、ジェノザウラーは元の惑星Ziのスペックすら超える「原生物との融合進化」を遂げていた。
その改修作業の真っただ中、広場の入口に物々しい警備を伴った一団が足を踏み入れた。
ハンターズギルドの「最高幹部」たちだった。総長をはじめとする首脳陣は、あの「不可侵の災厄」が拠点のど真ん中で人間の職人と並び立っているという現実を、自らの目で確かめるためにやってきたのだ。
「……信じられんな。本当に、あの鉄の化け物が人間の手を借りて改修を受けているとは」
総長は杖をつきながら、冷や汗を拭いしげしげと私を見上げた。
その傍らには、かつて「討伐非推奨・静観」を強く主張したベテランハンターや、観測気球から私の戦闘を見ていたベテラン観測員の姿もあった。
「総長……見てください、あの足の装甲!」
ベテラン観測員が指さした先では、名工鍛冶師の指示のもと、新人ハンターが汗を流しながら最後のボルトを締め直していた。
「ドボルベルクの超硬質甲殻が、あの機体のフレームに完全に馴染んでやがる……。あいつはただの『よそ者』じゃねぇ。この世界の自然の理を取り込んで、さらに進化しやがったんだ」
総長は険しい顔で腕を組み、しばらく沈黙していたが、ふっと深く息を吐き出した。
「……恐るべき適応力だな。だが、我々にとっても最悪の敵になるのではなく、意思を通わせる余地が生まれたということだ」
総長は一歩前に歩み出て、コクピットのハッチ付近で作業を終えていた新人ハンターと、静かに佇む私の赤いセンサーを見据えた。
「新人ハンター、よくやったと言いおくべきか。……おい、ギルドとしても、この特異な『共生関係』を非公式ながら認可する。ただし、暴走しないようにしっかり手綱を握っておけよ」
新人ハンターはニカッと笑い、ジェノザウラーの黒い装甲を軽く叩いてみせた。
「任せてくれよ、総長! こいつは俺の最高の相棒だぜ!」
人間の文明と、異世界の破壊兵器。
本来混じり合うことのなかった両者
ギルド上層部の視察すらも飲み込み、私たちはこの世界の生態系において、誰にも揺るがせない「唯一無二の存在」として、次なる戦いへの準備を完了させたのだった。