「――ああっ、そんなぁ……!!」
雲上の観測気球ゴンドラからその惨劇を見下ろしていたベテラン観測員は、頭を抱えてその場にへたり込んだ。
双眼鏡の視界の先では、地獄の猛者であるディノバルドとウラガンキンの連携に追い詰められたジェノザウラーが、足場を崩されて煮えたぎるマグマの河へと真っ逆さまに転落していく瞬間が、ハッキリと捉えられていた。
「嘘だろ……あんな化け物でも、マグマの底に落ちたら……!」
助手が青ざめ、震える声で呟く。
いかに未知の金属であり、圧倒的な耐久力を誇ろうとも、すべてを融解させる本物のマグマの海はその例外ではない。ギルドが「不可侵の災厄」と恐れ、人類の常識を覆し続けた鉄の巨神の最期――ベテラン観測員はそう確信し、冷や汗を拭いながら無線機に手を伸ばしかけた。
その時だった。
ゴゴゴゴゴ……ッ!!
ただのマグマの沸騰とは明らかに異なる、地底の底から世界を引き裂くような不気味な重低音が、火山洞窟全体を激しく揺るがした。
「なっ……なんだ……!? 地震か……!?」
ベテラン観測員が思わず立ち上がり、再び双眼鏡を覗いた瞬間、彼の視界に飛び込んできたのは、言葉を失うほどの異常な光景だった。
赤き光の奔流
マグマの海が激しく逆巻波立ち、まるで爆発でも起きたかのように真紅の液飛沫が四方に飛び散る。
その中心から、先ほどまでとは色彩も構造も異なった、禍々しいまでに洗練された影が激しく飛び上がった。
元の黒い装甲は、火山そのものの熱量を宿したような鮮烈な深紅のラインが走り、背後にはより巨大で攻撃的なエネルギー収束兵装が展開されている。
その威容は、ただの「機械の修復」や「強化」などという生ぬるい言葉では表現できない。この火山の過酷なエネルギーを自らの血肉(エネルギー)として完全に吸収し、一段階上の次元へと変異した「完全なる破壊神」――ジェノブレイカーの降臨だった。
「嘘だろ……おい、見てみろ……! あいつ、溶岩に潰されたどころか……あの火山のエネルギーを丸ごと喰らって、進化しやがったぞ……!!」
ベテラン観測員の叫びに、助手も言葉を失い、ただただ開いた口が塞がらない様子でその巨影を見上げていた。
地上の王者であるディノバルドとウラガンキンが、本能的な恐怖から身を縮こまらせ、後じさっていくのが上空からもハッキリと見えた。人間がどれだけ知恵を絞ろうとも、この世界の生態系がどれほど過酷であろうとも、目の前の存在は、そのすべてのルールを嘲笑うかのように進化の階段を駆け上がっていく。
ベテラン観測員は震える手で無線機のマイクを掴み、しかし言葉が出てこないまま、ただその圧倒的な「再誕」の光景を網裏に焼き付け続けるのだった。