ハンターズギルド拠点――その巨大な正門の前に、重く、しかしどこか誇らしい足音が響いた。
「ただいま、みんな……!」
コクピットのハッチがプシューと音を立てて開放され、新人がそこからひょっこりと顔を出した。
彼の姿を確認した瞬間、広場を埋め尽くしていたハンターや受付嬢たちの間から、一斉に割れんばかりの歓声と口笛が巻き起こった。
あの火山地帯でディノバルドとウラガンキンの2対1という絶望的な挟撃を受け、マグマの海へと沈んだという目撃情報は、一足先に気球観測班のベテラン観測員達によって拠点にもたらされていた。誰もが最悪の結末を覚悟し、喪に服す準備さえ進められていたその矢先の「生還」、そして――かつての面影すら残さないほどに深紅の装甲を纏い、威容を増した「ジェノブレイカー」としての帰還だった。
「生きてやがったぞあの野郎……!」
「しかも何だあの機体の変わりようは……! ディノとウラガンキンの二頭を同時に片付けただと……!?」
どよめきと興奮のるつぼと化した広場の中央で、白髪交じりの名工鍛冶師が、片手ハンマーを地面にドンと突き立てながら豪快に笑った。
「ハッハァー! いい面構えになりやがったな、新人! そしてその極上の鉄の艶……見事だ、文句なしの傑作だぜ!」
人間と災厄の共生、その極致
「お疲れ様、新人ハンターくん……いや、『英雄』と呼ぶべきかしらね」
人混みをかき分けて歩み寄ってきたのは、ギルドの総長と、普段は冷静なベテラン受付嬢だった。
総長は杖をつきながら私の巨大な脚部を感慨深げに見上げ、それからハッチの上に立つ新人に深くうなずいてみせた。
「かつて我々は、君とこの『災厄』の出会いをどれほど恐れていたことか。だが、君たちは自らの手でその運命をねじ伏せ、自然の理さえも自分たちの力に変えてみせた。もはや、この拠点において、君たちに歯向かう者も、疑う者もいない」
総長の言葉に、周囲のハンターたちが一斉に武器を掲げて同意の咆哮をあげた。
恐怖の対象であった「鉄の怪物」は、今やこのギルドを守る最強の盾であり、誰もが認める誇るべき「仲間」として迎え入れられていた。
その夜、拠点の広場では巨大な肉の丸焼きと樽酒が振る舞われ、盛大な凱旋祝賀会が催された。
人間たちが歌い、笑い合い、勝利を分かち合う喧騒のすぐ傍らで、私は静かに大地に身を横たえ、夜空の星を赤いセンサーに映し出していた。
『解析:周囲の有機生命体との友好度、最高値。防衛対象領域における安全性の確立を確認』
人間の温もり、焚き火の匂い、そして隣に腰を下ろしてグラスを掲げる新人の笑顔。
かつて単なる破壊と自己修復のためにのみ存在していた私の内部で、確かな「温かいデータ」がゆっくりと蓄積されていく。
「さあ、相棒も飲めない代わりに……これでも食ってくれよ!」
新人が肉の串を私のセンサーの前にちょこんと差し出して、楽しそうに笑った。
私は低く穏やかな電子音を響かせ、夜の静寂の中にその巨体をそっと沈めたのだった。