拠点での盛大な祝賀会から数日後。
連日の激闘の緊張を少しだけ和らげるため、新人ハンターとジェノブレイカーは打って変わってのんびとした「採集クエスト」へと赴いていた。
今日の目的地は、豊かな水源と緑に囲まれた渓流エリア。
今回の目的は「特産キノコの納品」といった、上位ハンターにとっては息抜きのような依頼だ。
「はあ、たまにはこういうのも悪くないよな、相棒」
コクピットを降り、新人はのんびりと伸びをした。
ジェノブレイカーも、過激な戦闘プロセスを休止し、エネルギーコアの出力効率を最低限に落としたアイドリング状態で、渓流のせせらぎに身を浸している。
重厚なジェノブレイカーの装甲が陽光を浴びて鈍く輝き、先日の火山での激しい戦闘の痕跡である深紅のラインが穏やかに明滅していた。
新人は小高い丘の上に腰を下ろし、小さなナイフで特産キノコを器用に削ぎ落としていた。
「お、これ結構いいサイズだぞ。名工鍛冶師のところの酒のつまみにできるかな……って?」
ふと、新人の手がピタリと止まった。
空を切り裂く暴風
穏やかだった渓流の空気が、一瞬にして凍りついたように重くなった。
さっきまで晴れ渡っていた青空の向こう――遥か上空の山岳地帯の境界線から、不気味なほどの黒鉛色の雲が凄まじい勢いで渦を巻きながら押し寄せてくる。
『警告:気圧の急激な低下。および、異常な暴風磁場の発生を検知』
周囲の木々が根元から激しく揺れ動き、川の水面が逆巻くように波立った。
自然の気象変動ではない。それは、圧倒的な「何か」がこのエリアに足を踏み入れたことによって引き起こされた、環境そのものの変質だった。
「なんだこれ……!? 急に大嵐が……!」
新人は慌てて立ち上がり、大剣を握りしめて周囲を警戒した。
『視覚センサー、最大倍率展開』
私の頭部センサーが、渦巻く黒雲の中心――雷鳴が轟く空の裂け目を正確に捉えた。
そこに浮かんでいたのは、2枚の巨大な翼を広げ、全身を鋼鉄の如き硬い古龍の殻で覆った巨大な影。暴風を纏い、空を我が物として君臨する、気高い鋼の龍。
――古龍種、クシャルダオラ。
『分析:対象、古龍種。大気中の風圧エネルギーを完全に統御。生態系の頂点に君臨する存在』
鋼の龍は、眼下の渓流エリアを見下ろすように、冷徹な双眸をこちらに向けた。
周囲の嵐が一段と激しさを増し、私たちの足元を強烈な突風が激しく叩きつける。休息の時間は終わりを告げ
世界の理たる古龍の放つプレッシャーに息を飲み、気合いを入れるのであった。