渓流での奇妙な遭遇から数日後。私たちは穏やかな旅路を経て、シュレイド地方のハンターズギルド拠点へと帰還した。
門をくぐり、いつものように広場に足を踏み入れると、数人のベテランハンターたちが何やら慌ただしく情報交換をしているのが目に入った。どうやら、各地の観測班から「近年稀に見る大嵐」や「鋼の古龍の目撃情報」が相次いで寄せられているらしい。
「おい、見たかあの嵐……! シュレイド地方の気象が完全に狂っちまってるぞ!」
「まさか、あのクシャルダオラがこの近くを飛んでるっていうのか……?」
拠点全体が、かつてないほどのピリついた緊張感に包まれていた。
そんな中、コクピットのハッチがプシューと音を立てて開き、新人がひょいと降り立った。彼はその足取りのまま、ギルドの総長と受付嬢が待つ中央カウンターへとまっすぐ歩いていく。
「――戻ったぜ。それと、みんなそんなに青い顔してどうしたんだよ」
新人がそう声をかけると、総長は険しい顔のまま杖を突いて振り返った。
「おお、無事に戻ったか。……それどころではないのだ、新人。数日前から、我が地方の上空に『古龍クシャルダオラ』が姿を現したという報告が入っている。いつこの拠点や周辺の村に甚大な被害が出るか分からん状況だ」
交錯する情報と、ギルドの結論
新人はふっと息をつき、腰に下げた大剣の柄に手を当てながら首を横に振った。
「ああ、それなら……俺たちが渓流で会ってきたところだぜ」
その言葉に、集会所の空気が一瞬で凍りついた。
受付嬢は目を見張り、総長は驚愕の色を隠せないまま身を乗り出す。
「なっ……! クシャルダオラと遭遇しただと!? 生きて帰ってきたのか……!?」
「あぁ。向こうから仕掛けてきたわけじゃねえが……。あいつ、俺たち――正確には、この相棒の姿をじっと見据えて、まるで強さを測るみたいにしていきなり現れて、そして去っていったんだ」
新人は振り返り、広場の真ん中で静かに佇むジェノブレイカーを親指で指し示した。
赤く光る私の単眼センサーが、総長たちの視線と真っ直ぐに交差する。
『分析:対象の警戒レベル、最大値へ移行。古龍種クシャルダオラの生態および移動パターンの共有を推奨』
総長はしばらく絶句していたが、やがて深く、重々しくうなずいた。
「……なるほどな。あの気まぐれな鋼の古龍が、自ら姿を現して『値踏み』をしたというのか。それは偶然ではない……。お前たちがこの世界の生態系において、もはや無視できない『脅威』であり『特異点』であることを、あの古龍すらも認めたということだ」
総長は厳しい表情を引き締め、私たちのほうへとまっすぐ向き直った。
「ギルドとしても、クシャルダオラをこのまま放置することはできん。だが、今のところ直ちに討伐を命じるわけではない。奴の動向を注視しつつ……いつか来るべき決戦に備えよ。お前たちなら、あの嵐を切り裂けるはずだ」
拠点のハンターたちからも、もはや恐れの感情はない。あるのは、最強の「双極の狩人」に対する信頼と、迫り来る古龍への並々ならぬ覚悟だった。
風を統べる鋼の龍。そして、マグマの熱を纏い進化を遂げた私たち。
世界の頂点を見据えた戦いの足音は、確実に近づいていた。