伝説に挑むため嵐に向かって拠点を出発し数日
この地方の古塔――かつて古代の文明が栄え、今は荒れ果てたその山頂付近は、完全なる「死の暴風圏」と化していた。
そんな中、伝説は待ち構えていた。
吹き荒れる猛烈な烈風は、鋼鉄の装甲を纏う私の巨体をさえ押し戻そうとする。視界は白濁した吹雪と舞い散る竜巻によって極限まで奪われていた。
その嵐の中心で、四枚の巨大な翼を広げ、冷徹な黄金の双眸をこちらに向けた主が待っていた。
鋼の古龍、クシャルダオラ。
今、伝説に挑む
『警告:周囲の気圧、および風圧密度が限界値を突破』
『レーダー感度低下。物理およびエネルギー弾道に重大な干渉を検知』
「ちっ……風が壁になって、近づくことすらままならねぇ……!」
コクピットの中から、新人が歯を食いしばりながら操縦桿を握り締める。
クシャルダオラは私たちが近づくのを許さないかのように、その巨体を軽やかに翻し、圧倒的な「気象の支配権」を見せつけた。
古龍の圧倒的な壁
「逃がすかよ……ッ!」
新人の気合と同調し、私はリミッターを解除して地表を蹴った。
進化したジェノブレイカーの圧倒的な脚力で一気に間合いを詰め、背部のエネルギー収束兵装から放たれる高出力をクシャルダオラへと叩き込もうとする。
だが――。
ゴオォォォンッ!!
クシャルダオラが翼をひと振りした瞬間、周囲の暴風が超高圧のバリアへと変形し、私の放ったエネルギー弾を綺麗に弾き飛ばした。それどころか、発生した真空の刃が私のチタン装甲の表面を抉り、火花を散らす。
「くそっ、攻撃が届かない……!? あの風のバリア、どうなってやがる!」
『分析:対象は周囲の大気を完全に統御。物理的な接近はすべて無効化、あるいは迎撃される確率:92%』
さらに、クシャルダオラの脅威は風だけではなかった。
嵐の壁を抜けて強引に懐へと飛び込もうとしたその瞬間、鋼の龍が猛スピードで突進し、その頑強な頭部と強靭な四肢によるフィジカルの重撃を直接叩き込んできた。
ドゴォォンッ!!
「がはっ……!?」
コクピットの中で、新人の苦悶の声が響く。
重厚なドボルベルクの甲殻と火山で得た進化装甲を纏う私の巨体が、まるで小石のように吹き飛ばされ、古代の石壁へと激突した。衝撃で機体内部の警告ランプが赤く激しく点滅する。
古龍の圧倒的な体躯から繰り出される肉弾戦の破壊力は、私たちの想像を遥かに超越していた。風で動きを封じられ、接近すればその強靭なフィジカルでねじ伏せられる。
試される極限
『警告:右腕部エクスブレーカーの稼働率に一時的な低下を検知』
『メインフレーム、負荷蓄積中』
瓦礫の山から重い駆動音を響かせて起き上がりながら、私は冷静に敵のデータを再計算する。
渓流での「値踏み」の時とは違う。今のクシャルダオラは、私たちを完全に「排除すべき脅威」として認識し、その全力を解放していた。
「……はぁっ、はぁっ……相棒、大丈夫か……?」
新人は荒い息を整えながら、血の滲む手でしっかりと操縦桿を握り直した。その瞳には恐怖の色はない。むしろ、この絶望的な状況を前にして、彼の闘志はさらに鋭く研ぎ澄まされていく。
「あいつの風の壁が厄介なら……真正面からぶっ壊すしかねぇだろ!」
人間の泥臭い執念と、私の進化し続ける機体フレーム。
風を統べる鋼の古龍に対し、私たちは満身創痍の巨体を再び真っ直ぐに起こし、牙を剥いたのだった。