新世界生物(?)ゴア・マガラ   作:ゴマちゃん

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第2話 到着

 

 

 

「喰らえいっ、地衝斬(ちしょうざん)ッ!!」

 

 

 行く当てもないので、しょうがなくヘルクたちと行動を共にし始めてからおよそ一週間。途中で町に立ち寄ったりしながら、度々襲いかかってくる魔物どもを始末するのにもいい加減慣れてきた。

 

 眼前には切り伏せたばかりの……、なんかデカめのカニがいた。昔のわたしならば、この背中に付いている二本の翼脚を使って叩き潰していたんだろうけど。

 

 ……わたし、そんな戦い方してたのかぁ? うぅむ、どうやら本格的に昔の記憶が飛びっ飛びのようだぞ、わたし。

 

 しかし、しかし! わたしはこの一週間でヘルクとケンロスから学んだのだ──素早く動いて重たい一撃を叩き込めば大抵どうにかなると!

 

 そうしてわたしの一撃をまともに喰らい、無惨にも斬り上げられてしまったデカめのカニは、ズバァッ! という音を立てながら真っ二つになり。そして地に倒れ伏したのである。

 

 

「勝利ッ! どうだ、見たか!」

 

「おぉ〜」

 

「すっげぇ〜」

 

「そうだろ!」

 

 

 Vサインをしながらふふんと胸を張るわたし。この一週間で学んだことは他にもある。それは──褒(・)め(・)ら(・)れ(・)る(・)と(・)す(・)っ(・)ご(・)く(・)嬉(・)し(・)い(・)!

 

 わたしはどうしてか常におなかがすいているけど、褒められたり撫でられたりすると、それだけでなんだか満たされた感じになる。ヘルクが作ってくれた、あったかいスープを飲んだ時とよく似ている感覚だ。

 

 手に持っていた大(・)剣(・)を納刀しつつ、ヘルクたちに駆け寄るわたし。そうすると二人は、決まってわたしを撫でくりまわすのだ。これもまた学んだことのひとつである。

 

 子ども扱いだが……、まあ気分がいいので許す。わたしはこんなナリになっても寛容なのだった。

 

 ちなみにどうやら二人は、第7回東エリア新魔王決定戦っていう大会に出場するため街を目指してるんだって。お祭りみたいなものだから、食べ物のお店がたくさん出店するんだとか。今から楽しみだ。

 

 

「そういえば、アマラ。キミが持ってるその剣、どこから取り出してるの? 今は巨大な剣の形だけど、普段は違う形だったりするのかい?」

 

「ん? ああ。この大剣はな……、なんかこう『来いっ!』と念じながらズァッとやると、いつの間にか持ってる」

 

「ズァッと? なるほど!」

 

「ズァッとかぁ〜、分からん!」

 

「んむ、わたしにもよく分かってない! 逆になんでヘルクは分かるんだ……、まあいっか。でもでも、分からないなりに色々持ってるぞ。太刀だろ、片手剣だろ、双剣だろ──」

 

 

 やはり自分の力を認められている気がすると嬉しいので、わたしはついついあれこれ語ってしまう。そういう性分なのだ、こればっかりはどうにもならないと思う。

 

 余談だが、武器種は大きく分けて十五種類ある。どういうわけか、まるで自(・)分(・)の(・)身(・)体(・)の(・)一(・)部(・)で(・)あ(・)る(・)か(・)の(・)よ(・)う(・)に(・)扱(・)え(・)る(・)ので、右も左もわからない今のわたしにはこれ以上ない幸運だった。

 

 

「──ちなみに。この大剣の銘はプライドofドゥームという……、らしい! よく分からんけどめっちゃ斬れるし、あとなんか斬った時とかに……、なんか黒いビリビリが出る。かっこいいだろ」

 

「カッケェ! 俺もそういう武器欲しかったなぁ、漆黒の邪剣! みたいな?」

 

「ははは、ケンロスには全然似合わなそうだなあ、漆黒の邪剣」

 

「それもそうだ!」

 

 

 わいわいがやがや。わたしが二人と出会ってから、道中は常にこんな感じだ。初めの頃は(見た目の上では)子どもなわたしに気を遣っているのかと思ったが、どうやらそうでもなさそうだった。

 

 ……といったところで。わたしはちょうどここで一つ、二人に聞いておかねばならないことがあるのを思い出した。

 

 

「ヘルク、ケンロス。このカニ、わたしが最初から最後まで一人で仕留めたよな? な?」

 

「うん、そうだね。アマラのおかげであっという間だった」

 

「俺たちが手出しするまでもなかったな〜。そんで、それがどうした?」

 

「簡単なことだよ。一番の功労者であるこのわたしには──こ(・)の(・)カ(・)ニ(・)を(・)た(・)く(・)さ(・)ん(・)食(・)べ(・)る(・)権(・)利(・)が(・)あ(・)る(・)は(・)ず(・)! そうだろ? なっ、そうだろ?」

 

 

 わたしは眼差しにありったけの期待を込めて、二人に向かって縋りついた。悪いけど、こちらも必死なんだよ。

 

 考えてもみろ。わたしは目覚めてから今の今まで、三食全部がヘルクの手料理だったんだ。とっくのとうにわたしのちっぽけな胃袋なんぞは陥落しているんだからな。

 

 そんなわたしの必死な懇願が功を奏したのか、ヘルクはにかっと快く笑って親指を立てた。

 

 

「やったぁ!!」

 

「ぅおっと、凄い喜びようだね」

 

「ヘルクの作るメシ、なんかやたら美味いからなぁ」

 

「ヘルク、ヘルク! 今日もささっと作ってくれ! 今日は何かな、カニ鍋、ゆでガニ、カニたま、カニ雑炊、カニみそ……!」

 

「ははは、食欲旺盛だ! それなら俺も、気合いを入れて作るとしよう!」

 

 

 くそぅ、楽しみすぎる。というか最近このために生きてるまである。ヘルクの作るごはんは味付けや歯応えも含めてもはや一つの作品だからな、楽しまなければいけないのだ。

 

 いやぁ、それにしても今日はいい獲物を狩れてラッキーだった。そ(・)の(・)辺(・)の(・)家(・)く(・)ら(・)い(・)デ(・)カ(・)い(・)カ(・)ニ(・)とか、生まれて初めて見たものな。背中にデカめの骨を背負っていたけど、あれどんな意味があったんだろう?

 

 そういえば。あのカニ、なんか水をビームみたいに吐いてたなぁ。いや、ビームってよりかはブレスか? まあいいや。あれ、わたしもいつかやってみたいな。

 

 

「よし出来た、今日はカニ鍋だ!」

 

「アマラ、いつもの言ったれ!」

 

「はっやぁ!!」

 

 

 どうしてカニの調理がこんなに早いんだ。ヘルクおまえ、本当に人間なんだろうな! そろそろ疑わしいぞこの手際の良さは!

 

 っと。こんなことを言っている場合じゃない、せっかくのカニ鍋が冷たくなってしまう。わたしはヘルクが器に取り分けてくれたカニ鍋を受け取り、ネギや豆腐、そして本命のカニをじっくり味わった。

 

 

「どうかな?」

 

「んまい! 流石ヘルクだ!」

 

「よかったぁ。流石にカニを調理するのは初めてだったけど、美味しく作れたなら何よりだよ」

 

「いやぁ、美味すぎるわこれ。ヘルクお前、これで店出せるぞ」

 

「出せるかな?」

 

「出せる出せる」

 

「色々終わったらそれもいいかもなぁ」

 

 

 こいつら、毎度のことながら適当すぎるぞ。

 ……まあでも、このゆる〜っとした雰囲気は嫌いじゃないし、性に合ってると思う。旅は疲れるけど楽しいし、二人から学ぶことはたくさんあるし、それに何よりごはんがおいしい。

 

 うん。わたしは今、充実している。

 毎日が楽しくて、今日が終わるのが惜しくて──そして明日が待ち遠しい。

 

 

「……そういえば、アマラ。出会った時から不思議に思っていたことがあるんだけど、聞いてもいいかな?」

 

「ん? もちろん。ヘルクとケンロスのためならなんだって答えるよ、わたし」

 

「だってさ! いい子に育ったな〜」

 

「本当にね」

 

 

 ヘルクはなんだか微笑ましいものを見る目をしていたけれど、しかしその奥底には真剣さが隠れているのが、わたしには見て取れた。

 

 だからと言って、カニ鍋を食べる手を止めるようなことはしない。こういう時、ヘルクは必ず「冷めるともったいないから食べながらでいいよ」と言うことを、わたしは既に学んでいるのだ。

 

 

「それで、聞きたいことって?」

 

「……俺たちがアマラに出会うちょっと前にね。キミと同じような力を使ってる生き物を見たことがあるんだ」

 

「うん」

 

「その生き物は……、真っ黒な鱗(・)粉(・)みたいなものを周囲に撒きながら戦っていたんだよ」

 

「うん……?」

 

「キミはそういう鱗粉とか、心当たりがあったりするのかなって」

 

「鱗粉、鱗粉かぁ……。ごめん、分(・)か(・)ん(・)な(・)い(・)や」

 

 

 真っ黒な鱗粉。確かになにか引っかかるところがないでもないけど、でも今のわたしは記憶が飛びっ飛び。思い当たることなど一つもないのだった。

 

 ……ヘルクの期待に応えられてなかったら、いやだなぁ。そう思って目を伏せてしまったけど、彼は普段通りの明るい声音で「そっか。それならいいんだ、ありがとう!」だなんて言ってきやがるもんだから、わたしも自然と笑みをこぼしてしまった。

 

 ちらりとケンロスの方を確認してみると、やはりというか何というか、呑気なツラでカニ鍋をかっこんでいた。食いしん坊め、あんまりわたしのこと言えないぞ。

 

 と、そこで。

 わたしは一つ、ちょっと気になっていたことがあったのを思い出した。

 

 

「あ。そういえば、一回不思議なことがあったんだよね。関係ないかもしれないけど……、いい?」

 

「ん? うん。何でも話してくれ! アマラの話、いくらでも聞いていられるから」

 

「そ、そう。ありがと──ものすごく昔のこと……、だと思うんだけどさ。い(・)き(・)な(・)り(・)知(・)ら(・)な(・)い(・)人(・)に(・)話(・)し(・)か(・)け(・)ら(・)れ(・)た(・)こ(・)と(・)が(・)あ(・)っ(・)た(・)ん(・)だ(・)」

 

「へぇ〜、そうなんだ?」

 

「そのあとわたしがどうしたのかは覚えてないけど、でも全然なに言ってるか分からなかったから……。だからね、もしかしたらその鱗粉? と何か関係あるのかもなぁって、そう思って」

 

「うーん……。ちなみに、どうしてそう思ったの?」

 

「な(・)ん(・)と(・)な(・)く(・)、かなぁ? ごめん、わたし自身もよく分かってないんだよね。ただなんとなく、鱗粉の話を聞いて『どうなんだろう?』って思っただけで」

 

「どうなんだろうね。俺はあまり頭が良くないから分からないなぁ──だけど、分からないならもう気にしなくていいんじゃないかって、俺はそう思うよ」

 

「そういうもの?」

 

「そういうものさ、きっとね」

 

 

 そうか、そういうものなのか。

 ヘルクがそう言うのだから、きっとそうなのだろう。

 

 わたしは謎の声とか黒い鱗粉のことは、この際きっぱり忘れてしまうことに決めた。べつにそこまで気になっていたわけでもないし。

 

 ……そうこうしているうちに、なんだか眠たくなってきてしまったぞ。カニ鍋が美味しすぎて少し食べすぎちゃったからだ、絶対そうだ。わたしはおなかがいっぱいになるとすぐ眠くなるから。

 

 

「おっ、眠たくなってきちゃったか。片付けは俺がやっておくから、眠っていていいよ」

 

「……でも、片付けくらいは……」

 

「ケンロスを見てほしい。彼はもうとっくに眠っているから」

 

「はっやぁ!」

 

 

 眠たいし、起こしてしまっても悪いので、普段よりもボリュームは小さめ。もはやこの旅のお決まりとなっていたけど、わたしはその辺り、しっかり配慮ができるのだ。

 

 とか、そんなことを考えているうちに、いよいよ本格的に睡魔が襲ってきた。もうこれは、抗える気がしない。歯磨きは明日目覚めてすぐにしよう。

 

 そう決意したわたしは、ヘルクのボロマントをタオルケット代わりにして、潔(いさぎよ)く眠りに落ちた。

 

 おやすみなさい。

 

 

 

  ⬛︎   ⬛︎

 

 

 

 翌朝。

 目を覚ますと、そこは──街(・)だ(・)っ(・)た(・)。

 

 

「……えっ、もう着いたの!?」

 

「はは、どうやら結構近くまで来ていたみたいでね。あとケンロスが地図を読み間違えてたみたいなんだ」

 

「はあ!?」

 

「いや〜ゴメンゴメン、地図逆さまに見てたみたい」

 

「それは……、逆によくここまで辿り着けたな……?」

 

「本当にね〜」

 

「だよなぁ」

 

 

 ゆ、ゆるすぎる。危うく遭難の危機だったというのに、なんだこのゆるさは。まあ確かに辿り着けてる以上は、結果よければ全てよしなんだろうけどさ……?

 

 なにはともあれ。

 そうしてわたしたちは、目当ての街へと到着した。

 

 ……買い食い、たくさんできるかな?

 ヘルクは「俺の料理よりもお店で食べた方が美味しいよ」と言っていたし、どれだけのものが出てくるのか、今から楽しみだ。

 

 

 







 モンハン周りの設定に関してはダブルクロス辺りを参考にしようと思います。理由は一番やり込んでいたからです。

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