新世界生物(?)ゴア・マガラ   作:ゴマちゃん

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第3話 新魔王決定戦

 

 

 

「10カウント! ヘルク選手の勝利が決まったぁぁ!」

 

 

 ……ノリノリな実況と大歓声の中、ヘルクは普段通りの笑みを浮かべて、普段通りに試合の相手を圧倒していた。

 

 何を隠そう、ヘルクはケンロスと別れたあと、無事に第7回東エリア新魔王決定戦へと参加し、順調に決勝へ向けて駒を進めていたのだった。……まあ、予想通りだよな。

 

 ちなみに、大会にはケンロスも参加している。あいつもなんだかんだで順調に勝ち進んでいるらしい。そりゃそうだよな、わたしはともかくとして、ヘルクより足速いんだから。

 

 

「っとーーッ! ヘルク選手、未だ立ち上がれないチュパブラ選手に手を差し伸べたァ!」

 

「いい勝負だった」

 

「チ! 完敗だぜ!」

 

「素晴らしい光景だぁーーッ!」

 

 

 ヘルクの紳士的行動のせいでさらにヒートアップする実況、それに乗せられてますます盛り上がった観客による大歓声。だ、大地が揺れてる。なんだってこいつらはそんなに熱狂してるんだ。

 

 ……わたしは観客席で、お肉がたくさん刺さった串を、これまたたくさん食べながらそんな様子を見ているわけだけど。しかしわたしとしてはやっぱり、どうしてそんなに驚いているのかが分からない。

 

 だって、ヘルクはめっちゃ強いから。実際ここまでの何試合かも、たったの一発さえも喰らわずに勝ち上がってきた。今回もそうなっただけだ。

 

 

「……多分だけど、間違ってるのはわたしの方なんだろうなぁ」

 

 

 ぶっちゃけた話、わたしはかなりの世間知らずである。そもそも世間どころか自分のことだって何一つ知らない。

 

 そんなわたしだけど……、でも。こんな風に観客みんなが熱狂して、こぞって笑顔を浮かべているのは、きっとヘルクのおかげなんだろうなって分かる。

 

 うん。それはそれでちょっとだけ誇らしいかも。まるで自分が褒められてる時みたいに、なんだかそれだけでおなかが満たされる感覚がするし。

 

 結局はわたしも、なんだかんだ雰囲気に乗せられて浮かれているのかもしれない。五十本目のお肉串を喰べながらも、そんなことを考えざるを得なかった。

 

 ……確かにこれも美味しいけど。

 でも、ヘルクが作ってくれたごはんのが百倍んまいな。なんでだろ?

 

 そうして首を傾げながらうんうん一人で唸っていると、ヘルクへの勝者インタビューが始まった。聞き逃さないようにしなければ。わたしは立ち上がり、観客席の最前列まで移動した。

 

 身体が小さくなった(気がする)から、観客の間をするすると抜けていくのも簡単……。いや、違うなこれ。みんなわたしのために道を開けてくれているんだ。いいやつが多すぎるぞ、ここ。

 

 

「ヘルク選手、見事な勝利でしたね! 今の気持ちをお願いします!」

 

「人間が憎い! 人間滅ぼそう!」

 

「だそうです! 深いですね〜」

 

 

 直後、またもや大歓声。……今のってそんなに深かったかぁ? でも観客のみんなは「ふっけぇ!」とか言ってる。それじゃあ、深い……、のか? 本当に? まったく分からないぞ。

 

 そういえば、ヘルクは人(・)間(・)って種族らしい。めちゃんこ強いから全然そうは見えないけど、とにかくそうなんだって。それなのに人間が憎いって言ってるんだから、ヘルクは変なやつなんだろうな。

 

 わたしの種族は……、なんなんだろう? ヘルクが言うには、わたしのようなやつは人間からは魔(・)族(・)って呼ばれていたらしいけど。魔(・)物(・)とは違うんだって、紛らわしいね。

 

 そうして細かい言葉のニュアンスの違いに意識を向けていたところ、ヘルクが何やらうろうろと辺りを見回しているのが目に入った。

 

 多分、わたしを探しているんだろうな。わたしは目が悪いからあんまり遠くまでは見られないけど、これくらいなら分かるぞ。とりあけず、わたしは翼脚を頭上に挙げて、左右にぶんぶん振ってみた。……あと、ついでに両手も。

 

 

「ヘルク! こっちだ、こっち! ちゃんと見てたぞ!」

 

「あっ、いたいた。おーい、アマラー! 勝ったぞ〜!」

 

「おや、あの子は──ヘルク選手、もしやお子さんですか?」

 

「はは、違う違う。あの子はアマラといって、俺の仲(・)間(・)なんだ」

 

「ッ……! そうだぞ、わたしはヘルクの仲間だ! 一緒にカニ鍋つっついたりしたしな!」

 

 

 仲間、仲間! どうやらそう思っていたのはわたしだけじゃなかったらしい。面倒見られてばっかりだったから、仲間だと思われてないんじゃないかとか考えてたけど、全然そんなことなかったみたいだ。

 

 ……周りにいるやつらがなんだか生暖かい目をしている気がするけど、気のせいだろう。気にしない気にしない、だってわたしにはそれよりも気になることがあるんだからな。

 

 

「ヘルク! 今日のごはんどうする! たくさん喰べたのにまだ全然おなかぺこぺこなんだ!」

 

「おお〜、食欲旺盛な子なんですね!」

 

「アマラは育ち盛りだからなぁ。よーし、それじゃあ今日は野菜を使ったパスタにしよう!」

 

「だそうです! 今日のヘルク選手の晩御飯はパスタに決まりました! ぜひ皆さんも参考にしてみてくださいね〜!」

 

 

 ゆるーい感じの実況がそんなことを言うと、わたしの周りからは「今日は俺もパスタにするぜ!」とか「きっとパスタこそがあの強さの秘訣なんだな!」とか「筋肉うぅぁっ!!」とか。そんな感じの声が聞こえてきた。

 

 多分だけど、パスタは関係ないと思うけどな。いやでも、だとしたらどうしてヘルクはあんなに強いんだろう? うぅむ、わたしには分からないことばっかりだぞ。少なくとも、パスタではないと思う。

 

 ……パスタかぁ。ヘルクのことだから、市販のパスタも最高に美味しく仕上がるに決まっている。もちもちした食感、程よい塩味、ごろごろとした野菜に特製のソースが絡まって、味変でチーズとかかけちゃったり──いけない、いけない。想像しただけでよだれが出ちゃいそうだ。

 

 毎日ヘルクの作るごはんを喰べられるわたしは、きっと世界で一番の幸せ者だろう。この幸運に感謝しながら美味しく平らげて、しっかり強くならなければ。

 

 だって、わたしはヘルクの仲(・)間(・)だから。

 この一週間、助けられっぱなしだったから。

 

 

 ──だから。

 あいつが人間滅ぼしたいって言うんなら。

 わたしも手伝ってやんないとな。

 

 

 ヘルクがそうしたいんなら、手助けしてやりたいもんな。わたしは一人で密かに決意を固め、喰べ終わったお肉串のゴミを綺麗さっぱり片付けてから、ヘルクより先に試合会場を後にした。

 

 ふふふ、今から晩ごはんが楽しみでしょうがないぞ。わたしはおなかをさすりつつ、そんなことを考えたのだった。

 

 

 







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