綾小路にこき使われる部下の話   作:白峰 真紀

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今回は堀櫛伊の食事シーンから回想が出ます。

主人公、少し本気を出します。

そして今回の別視点は天沢。正直天沢はわりと早く捻り出せた。七瀬は3時間くらいかかったのに、天沢は1時間くらいで書き終えた。七瀬もいい加減情報出してくれないかな。



code10 敗北者に相応しい最後を見せてやる

 

特別試験の開始から数日後の夕方、私は櫛田さん、伊吹さんを含めた3人で食卓を囲む中、綾小路くんと黒宮くんをどうやったら倒せるのかを話し合っていた。

 

 「綾小路と黒宮を倒すなんて無理でしょ。綾小路は化け物みたいに強いし、不意打ちも効かないし。黒宮も同じ。何ならあいつは怒らせれば下手すりゃ綾小路よりも強いんじゃない?文化祭のときみたいに」

 「……そうね。優しい人は怒らせれば怖いっていうけど、黒宮くんはまさにその言葉通りね。あの光景から嫌と言うほど学んだわ」

 

あれは恐ろしかった。あのとき、彼が普段とは別の存在のように見えた。本当に同一人物なのかと自分の目を疑った。

 

 「………文化祭のとき?何かあったの?」

 

この中で唯一、現場を見ておらず何も知らない櫛田さんが疑問の声をあげる。

 

 「櫛田は知らなかったっけ?黒宮が八神を暴力でボコボコにしたってこと」

 「………黒宮くんが?そんなイメージ付かないんだけど……」

 

黒宮くんは普段はどちらかといえば身体による暴力以外の力、頭脳や言葉で相手を追いつめる方が多く見られる。なので表向きしか見てない人からすれば、あまり信じられないだろう。

 

 「伊吹さんの言う通りよ、櫛田さん。あのとき、暴れ出した八神くんを力で止めていたわ。本当に……恐ろしかった」

 

一体何があったのか。私と伊吹さんはそのときの状況について話し出した。

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

────八神くんが暴走し出した。もう退学することがほぼ決まったことで自暴自棄になったのだろう。なりふり構わず暴力を奮い始めた。周囲の人達を次々と殴り倒しつつ、ついには立ちふさがっている真嶋先生にまで暴力を奮い始めたそのときだ。

 

 『──────何をやっているんだ?八神』

 

いつもと表情は同じ、しかし明らかに殺気立っている雰囲気を纏った黒宮くんが拳を受け止めていた。

 

 『黒宮魁座………何故お前がここに?』

 『龍園が生徒会室の方向へ向かっているのが気になってな。後をつけて入ってみたらまさにドンピシャ。ギリギリでお前の暴力の追撃を受け止めたってわけ』

 『どけ。僕が用があるのは綾小路だ。お前じゃない。邪魔するならお前も潰す』

 『それを言ってハイそうですかって僕が納得すると思うか?……それに、何か勘違いしていないか。八神』

 『何?』

 

さらに眉を強く顰める八神くんだが、黒宮くんはビクともしない。むしろ、黒宮くんの方も殺気を強めている。

 

 『お前ごときが僕に適うとでも本気で思っているのかってことだよ。正面から僕達に激突せず、周りからコソコソと汚いことばっかりしてる腰抜けに、僕が負けるはずがないだろう?』

 『…もう一度言ってみろ。次言ったら後悔させてやる』

 『腰抜けって言ったんだよ。耳が遠いのか?いつまでもウジウジと回り道ばかり。正面から堂々とぶつかる事も出来ない負け犬が』

 『…………黒宮ァァ………魁座ァァァァァァァァァァァアアアアアアアアア!!!』

 

その一言で八神くんは完全に激昂し、黒宮くんに襲いかかる。その様子を見て、黒宮くんも構えの姿勢をとる。

 

 『君はやりすぎた。清隆をめちゃくちゃにしようとして………だから思い知らせてあげるよ。僕と君との差を。その鼻を折ってやる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『その程度の力で…………僕に勝てるとでも思ったのか?』

 『まだ……まだだ………黙れ!!』

 

 

………圧倒的だった。

 

八神くんは何発も攻撃を繰り出すも、黒宮くんには軽くいなされて全くダメージが通っていない。そして黒宮くんは全く反撃していないにも関わらず、たった4発体に撃ち込んだだけで八神くんに膝を付かせていた。

 

 『フッ!ハッ!』

 『グッ!ウグッ!グアッ!!』

 

お腹を踏みつけるようにして足を振り下ろし、邪魔だと言わんばかりに蹴り飛ばされ、大きく後ろへ下がる。

 

 『勝負は付いたな』

 『まだだ……僕は……まだ……次こそ………必ず勝つ………』

 

そう言いつつも、フラフラしている八神くん。恐らくあと数分もすれば気絶するだろう。

 

これでもうすぐ終わる。ここにいる全員がそう思っているだろう。私はフウっと息を吐く。

 

 

 

 

………だが次の瞬間、黒宮くんが距離を詰め寄り、八神くんの首をガシッと掴んだ。

 

 

 

 『なっ!?ウグッ!』

 『お前に次はない。……敗者に相応しい最後を見せてやる』

 『おぐッ!ウッぐ……はな……せぇ………』

 

首を掴んで持ち上げたまま、顔面を滅多打ちにする黒宮くん。

 

 

もうやめて。これ以上は危険よ。

 

 

そう言いたかった。けど、彼の鬼気迫る表情を見て、思わず足がすくんでしまった。

 

周りを見ると、伊吹さんは痛みも相まって強張った表情を浮かべており、あの龍園くんですら汗が頬を伝っているのに気づかないほど目の前の出来事に目を向けている。

 

 『僕もアイツとは似ていてね。敵対した者に僅かな希望すら与えるつもりはない。完膚なきまでに叩きのめすのが流儀だ』

 『……………っぁ…………………』

 『普通のカリキュラムのをクリアしただけのお前が……さらに上のβカリキュラムをクリアした俺達に勝てるとでも?………自惚れが過ぎるんだよ。一遍死んでやり直してこい。今の人生をな、クソガキ』

 

直後、黒宮くんの渾身の右ストレートが炸裂し、ゴガッ!と音を響かせて地面に叩きつけられた八神くんは、既に意識を飛ばして気絶していた。

 

 『大馬鹿野郎が……』

 

最後、吐いたため息がどこか呆れたように見えたのは気のせいなのだろうか。

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 「そんな事があったんだ……もしかして、文化祭のあとに黒宮くんが休んでいたのって……」

 「えぇ。八神くんへ振るった暴力が原因よ。八神くんを止めてくれて被害を拡張せずに済んだってことで、幸いクラスポイントには影響は無かったのだけれど、1週間の停学になったわ」

 「まさか黒宮もあんなに強いだなんて思ってなかったんだけど。八神も十分強かったのにアイツ、まるで赤子を相手取るかのように軽々と受け流してたし。あのときの八神の顔、得体のしれない何かに怯えるように恐怖で満ちてた」

 「龍園くんですら無言だったわね。普段なら普通に茶々でも入れてきそうなのに何一つ言わなかったもの。それだけ彼も黒宮くんの雰囲気に圧倒されていたんでしょうね」

 

かく言う私もゾッと鳥肌が立った。普段とはかけ離れた、冷徹な態度から本当に同一人物かどうか疑ったものだ。どちらかといえば綾小路くんに似た雰囲気を感じた。それだけインパクトが凄まじかった。

 

 「でもそうなると増々気になるんだけど。黒宮もなんであんなに強いの?綾小路もそうだけど、どうやったらあんなふうになれるの?堀北、あんたアイツらの強さの秘密とか知らないわけ?」

 「それは……」

 

分からない。彼らは何一つ教えてくれなかった。2人とは1番近くにいたにも関わらずね……。

 

 「残念だけどほとんど知らないわ……彼ら、自分のことはほとんど話してくれなかったから」

 「つっかえないわね。あんたと綾小路と黒宮ってセットのイメージだったのに」

 「耳が痛いわね……あ、でも黒宮くんが前に言っていたわ。綾小路くんとは昔からの知り合いで幼馴染だって。2人があんなに強いのは、同じ環境で育ったからってことなんでしょうけど……」

 「それだけじゃ分からないよね。私も黒宮くんから『昔から色々とやらされていた』っていうことは聞いてたけど……」

 

その後、あーだこーだと話し合ったが、結局話は纏まらず、ただただ時間だけが過ぎていった。 

 

 「綾小路くん……黒宮くん……一体何者なの………?」

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

────Side:天沢

 

 

あたしが最初、黒宮魁座という存在を見たときの感想は「なんか弱っちそう」だった。

 

常に冷静な顔を崩さず、異様な雰囲気を醸し出している綾小路先輩と違い、黒宮先輩は喜怒哀楽がハッキリしている。どちらかといえばあたし達に近かった。でも全然強そうな雰囲気を感じないし、表情もいつも暗い。だから本当に同じホワイトルーム生かどうか疑ったものだ。

 

この学校に入学してからも、しばらくこの評価が変わることは無かった。どうやら綾小路先輩の代わりに色々と動いているようだが、それでも常人離れした動きはあまり見られなかったし、あたしでも普通に出来ることの方が多かった。

拓也は黒宮先輩を『綾小路よりは遠く及ばない』と評価していたし、あたしも拓也ほど過小評価はしてないが、それに近い認識をしていた。

 

 

………それが間違いだったことに気づいたとき、全てが遅かった。

 

 

文化祭の日。

拓也は追い詰められていた。ホワイトルーム生でも何でもない生徒や先生達に詰め寄られて冷静さを失い、ついには激昂して綾小路先輩のところへ向かおうとした。

 

でも、それを止めたのが黒宮先輩だった。

そして言葉巧みに黒宮先輩は煽り、見事に拓也はノセられた。

 

そこからは一方的な蹂躙だった。

 

拓也は何度も繰り返し攻撃をしても、先輩には避けられ、全くダメージが入っていない。

逆に先輩は極稀にしか反撃してない。繰り出したのは4発だけ。けど、たったそれだけで拓也に膝を付かせていた。

 

そして追い打ちをかけるかのように、先輩は首根っこを掴むと、顔面を何度も何度も打ち込み続けた。もう勝負は付いたというのに。そして最後におもいっきり殴り飛ばされた。

 

その後、ホワイトルームの関係者達に運ばれて数日後、拓也は退学になった。

 

 

あたしは過去の自分の判断を呪った。

 

 

何が『綾小路先輩より弱い』だ。

黒宮先輩もあの『魔の4期生』の中で、最高傑作の綾小路先輩以外に唯一、最上級カリキュラムを突破した人物だ。弱いわけがなかった。

多分あたし達は自分の実力に酔いしれていたんだと思う。だから相手を見誤った。普段の雰囲気や立ち回りで勝手に弱いと思い込んでいた。そんな浅慮さに自分を殴りたくなる。

 

黒宮先輩も綾小路先輩と同じ─────そんな認識をした。

 

けど、これも間違いだった。

 

拓也も退学してから数日後、あたしは黒宮先輩に呼び出された。一体なんだろう。全くと言っていいほど予想が付かなかったが、拒否する理由もないので先輩の場所まで向かった。

一体何の話をするのだろうか。そんな疑問を抱えつつ。

 

そうして先輩と会って話されたのは、驚く事だった。

 

 

 『お前と八神の関係を壊すようなことをしてすまなかった。もう少し、何か別の方法を考えるべきだった』

 

 

そう言って、頭を下げて謝罪した。

突然のことにあたしも困惑してしまった。そんなことをされるとは思ってもいなかったから。

 

 

 『……なんで、こんな事を?』

 

 

あたしはつい反射的に聞いてしまった。

 

 

 『大切な人との繋がりが消えるのってさ、寂しいから。お前にもそんな気持ちを味わわせてしまって申し訳なく思っている』

 

 

その言葉を聞いた瞬間。

 

あたしは涙を漏らしてしまった。

 

 

 『(そうだ。もうあたしは拓也とも繋がりが切れちゃったんだ)』

 

 

ホワイトルームに捨てられ。

幼馴染との縁も切れて。

 

大切なものは全部失ってしまった。

気づけば、あたしの周りには一人もいない。孤独だ。

 

そう自覚した途端、無性に寂しさを体が過った。

普段、人前で涙を流すなんて事はしない。絶対にない。でも、今は抑えられなかった。

 

すると、黒宮先輩はあたしをギュッと抱きしめてくれた。

 

 

 『我慢するな。全部吐き出していい。全部出した方が、楽になる』

 

 

そう言って背中を撫でてくれる。

 

それが最後の砦だった。あたしはみっともなく泣き喚いた。恥も外見もかなぐり捨てて、全部吐き捨てた。

 

そんなあたしを、黒宮先輩はただただ抱きしめて見守っていた。

 

 

 

その後、泣き疲れたあたしは気づけば寝てしまっていたようだ。驚いて目を覚ますと、時間は深夜1時を過ぎていた。そして周りの状況を確認する。どうやらあたしはベッドの上で寝ていたらしい。

 

そして、すぐ隣の椅子に座ったまま眠っている黒宮先輩を発見した。恐らく先輩が自分の部屋まで運んでくれたのだろう。

 

あたしはベッドに横たわりながら、黒宮先輩について改めて考える。

 

あのとき見せた雰囲気から、先輩は綾小路先輩と同じく本性では冷たい人だと思っていた────けど違う。

 

先輩は、優しい人だ。

善人というわけではない。先輩自身も『僕は不平等に人を助ける』と明言しているし。

でも、一度でも手を差し伸べたら絶対に助ける。そんな人だ。

 

多分、先輩は自分が救いたい人だけを選んで救ってるんだと思う。それ以外には見向きもしないで、ただただ選んだ人だけを見る。

 

多分、あたしもその一人だ。先輩は救いたいと思ったから、あたしにも手を差し伸べた。そうでなければ、こんなに優しくしないだろう。

 

気づけば心臓はバクバクと鳴っていた。全然止まらない。

そのまま、あたしはベッドから降りて先輩の側に寄る。

 

そして先輩の髪を上げて、おでこにキスをした。

 

 

 『………ありがと。黒宮先輩』

 

 

この日から、私の中で黒宮魁座という存在は少しずつ大きくなっていった。そして、気づかないうちに綾小路先輩と同じくらいの扱いになっていることを、私はまだ知らなかった。

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 『………成績は奮いませんね』

 『やはり、最高傑作の彼や忘(・)却(・)の(・)ホ(・)ワ(・)イ(・)ト(・)ル(・)ー(・)ム(・)生(・)ら4期生でないと……』

 『バカッ、その名前を出すな。篤臣様に聞かれたらどうする。お前、消されるぞ』

 『ひっ!?……そ、そうだった……』

 『それより、どうやったら成績が奮うのか考えないとまた怒られるぞ』

 『………何で俺らは毎度怒られてるんだろうな。別に俺達が問題起こしたわけでもないのに』

 『『ハァ……』』

 

 





タイトル元ネタは今年10周年を迎えるあの作品。最近ライフネット生命と正式コラボ発表されてて笑った。元からコラボしてるようなもんだろ!!


補足

・八神を文化祭でボッコボコにした。
正直原作の解決方法だと少し物足りなさがあったから、ここでは最後にボコして八神のメンタルをへし折る事にした。
ちなみに主人公は八神が「清隆の秘密をバラそうとした」って言ったのを聞いてキレたからここまでやった。清隆を危険に脅かそうとする輩は誰であろうと許さん。

・天沢を少し救った。
八神が退学になったことで元気が無くなっていた天沢だが、黒宮が慰めてくれたおかげで前を向こうと勇気を貰えた。残念だが八神はこの展開のために犠牲になったのだ。バイビー。
あとは天沢が素直になれるか。もし正直に打ち明けてくれれば、主人公は天沢のこれからの未来を用意するつもりである。


あと八神との戦闘の際のβカリキュラム発言、これ合ってるか分からん。正解かどうかコメントで誰か教えてくれ。

追記:コメントで教えてもらって修正しました。

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堀北クラスをボコボコにしても良い?

  • ボッコボコのフルボッコにして欲しい。
  • 原作くらいの扱いで良い。
  • しないで欲しい。
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