Aクラス行き確定チケットとか綾小路の思想に反しそうじゃね?ってコメントあってそこでも返信したけど、この世界線では綾小路は愉悦に目覚めているから相手に希望を見せて、最後に掻っ攫って絶望したときの表情を知りたい。そしてニチャりたいと考えてるよ。
……原作以上に畜生だなコイツ。
あとオリ主は苦労人だけど「ホワイトルーム出身」であることを念頭に。
時は遡って始業式後のホームルーム、Aクラスでは何やら不穏な雰囲気が漂っていた。担任の茶柱が青ざめた表情を浮かべており、それを気にかける堀北達。
「お前たちに伝えなければならないことがある。……先ほど、とある生徒がとある権利を使用したと思われる」
そして、ようやく開いた重い口から発せられた内容は、驚くべきことだった。
「今この場にいない綾小路と黒宮が……彼らが使用した。……クラスの……移籍だ………」
クラスの移籍。
その費用には2000万ppという莫大な数が必要であり、そもそも自分達は今Aクラス。費用云々以前にあり得ない話に首を傾げる。
「あの、冗談にしては面白くありません。真面目に聞いている私達の身にもなってください」
「僕も堀北さんの意見に賛成です。というより、本当に大丈夫なんですか?」
「……何らかの特別試験が既に始まっている…ってこともあるのか……?」
堀北、平田、須藤といった生徒達が嘘だと思い、疑問の声を上げる。だが、茶柱は嘘だと一言も言わなかった。
「私の言うことが信じられないのは分かる……しかしOAAを確認してくれ」
そう言い目を伏せながら指示する。
悪ふざけにも程がある。そう考えて堀北は携帯を開く。
しかし、どこか言い表せない一抹の不安が体を過る。
OAAを開き、3年Aクラスの一覧を表示させる。もちろん、そこにはクラス37人全員のOAAが載っているはずなのだ。否、載っていなければ嘘である。
しかし、現実は非情だ。
見落としたのかと思い、何度か画面を上下にスライドさせる。
だが、そのどこにも綾小路と黒宮の名前がない。まるで最初からクラスに存在しなかったかのように、リストから消失していた。
「つい先程……綾小路と黒宮はCクラスへの配属が決まった……」
「な、何を……何を言ってるんですか………?そ、そんな冗談は好きじゃありません」
茶柱から無意識に拒んでいた事実を明かされ、堀北は否応なしに頭で確かに理解する。だが身体は理解不能のサインを出していた。
「……信じられない気持ちは私も同じだ。だが……本当だ。嘘でも何でもなく、本当のことだ……」
堀北は3年CクラスのOAAを開く。
やめてほしい。嘘であってほしいと。
そう思いつつ表示されたOAAの一覧には、綾小路清隆と黒宮魁座の名前が無情にも付け加えられていた。
「う、嘘ですよね………綾小路くんと、黒宮くんが移籍だなんて………!?」
普段は冷静な松下が、動揺した様子で問いかける。
「……事実だ。間違いじゃない………これは間違いではないんだ………」
約2年間、自分を支え共にAクラスを目指してきた戦友、あるいは相棒とも言える存在の綾小路。そして所々で助言を与え、影ながらも自分を裏で支え続けてくれた黒宮のクラス移籍。それもAクラスでの卒業のための移籍ではなく、下位のクラスへの移籍。その事実に堀北は大きく混乱していた。
担任の茶柱はもちろん、堀北、須藤、平田、幸村に三宅といった綾小路や黒宮と比較的近い位置にいた生徒達ですら何も知らないという事に、クラスメイト達は大きく困惑していた。
何故綾小路は下位クラスに行ったのか。
軽井沢にフられた事が気まずかったのか。
何故黒宮までわざわざ下のクラスに行ったのか。
取り引きを持ち込んで、それに綾小路達が答えたということなのか。
様々な疑問がクラス内に浮かび上がる。
そんな中、櫛田はCクラスが勝つために綾小路と黒宮を引き抜いたという意見に納得を示した。それが一番の最適解だと。
「それ、考えられるね」
そう口を開くも、ほとんどのクラスメイト達は納得していなかった。
「いや、確かに黒宮が移籍したってのに驚くのは分かるけど、なんで綾小路が移籍したことにも驚いてんだよ?だって、この2年間で綾小路は全然目立った実力ねぇし……」
「寛治……綾小路がいなくなったって話もそんな単純な問題じゃねぇんだよ。下手すれば黒宮以上に大問題だぞ」
「単純じゃないって言われてもねぇ?綾小路くんに黒宮くん以上の実力があるとは思えないし、そんなに大したこと────」
「悪いけど、池くんや篠原さんが思ってる以上に綾小路くんは優秀だよ。これまでもずっと裏でクラスを支えてくれていた。そうでしょ?堀北さん」
黒宮はともかく、綾小路の移籍には然程問題だと思っていない一部の生徒達に櫛田は呆れつつ、堀北にパスを出す。
「……えぇ。本人の意思は置いておいても、Cクラスが逆転するために引き抜いた人物として、綾小路くんは文句の付けようがないわ。もし本当に抜けて困らない生徒なら、茶柱先生はこんな風になるかしら?」
堀北の視線の先には、未だに呆然自失な茶柱がいた。
「マジ……なんですか?」
「……あぁ、綾小路がこのクラスに居なければ、このクラスがAクラスになることは十中八九なかっただろう。無論、それだけが理由ではない。黒宮の存在もあるが……それでも、抜けた穴は黒宮以上に大きい………」
堀北はこの移籍が何らかのミスである可能性であることを問うが、茶柱は学校側が正式に受理している以上ないだろうと返す。それでもまだ縋りつく堀北だったが、平田や櫛田に止められる。
そうしてホームルームを終え、堀北は事実を確かめに行こうと教室を駆け足で出ていく。そんな堀北を松下も呼び止め、一緒に綾小路と黒宮を探しに教室を後にした。
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「あ、綾小路くん……黒宮くん……」
息も絶え絶えになりながらも、堀北達が僕達に距離を詰めた時、言われた通り橋本が立ち上がって対応する。
「堀北か。今はちょっと作戦会議中なんだが、何か用か?」
「綾小路くんと黒宮くんに話をさせて欲しいの」
「ウチのリーダー候補とその参謀と話がしたいなら、まずは俺を通してからにしてくれないか?」
「……リーダー候補……それはまた、随分と急な話ね」
「急でもないさ。ずっとこの時を待っていたんだからな。そうだよなぁ綾小路、黒宮」
橋本が笑って僕達に同意を求める。堀北は何か淡い期待を抱いた表情をしているが、残念ながら思い通りにはならない。
「否定はしない。坂柳がいる状態じゃ、その可能性は皆無だったわけだしな」
「僕も坂柳の下に就くのはちょっと勘弁したいと思ってたし、待ってたのは事実だね」
そう答えると、堀北の顔面が青白くなる。やめてほしいと言うように。
「ところで綾小路、黒宮。なんでこの重要な場面に松下がいるんだ?俺の予想としては平田か櫛田が来ると思ってたんだが?」
その疑問に、松下はあえて憎まれ役を買うかのように付き添いだと言う。まぁ、それで許すほど今の僕達は優しくない。
「おいおい本当のこと言いなよ。そんな方便言ってもこの場じゃ無駄なんだから」
「……方便?にしても堀北も納得してる様子だったんだが?」
「認識の違いだよ。松下は表向きは普通のクラスメイトの1人だけど、実際はかなりの切れ者なんだ。これまでも度々、清隆が困ってるときに裏方から力を貸してくれた実績があるし。この前の前園の退学、あれにも関わって手助けしてるから、清隆は高く評価しているよ」
「魁座の言っていることは間違いじゃない。今も、松下は堀北以上に冷静に状況を分析出来ている」
僕と清隆がそう言うと、松下は動揺を隠せていなかった。これで僕達がもう完全に敵になった事を理解するだろう。
この話を興味深そうに聞いていた帆波が、自身の手の上に顎を乗せて微笑む。
「へぇ、そこまで頼れる人だなんて知らなかったな。私もまだまだ生徒たちのことをちゃんと理解出来てないね。これからは松下さんにもちゃんと注意をしないと」
もはや2人とも表情を隠せておらず、狼狽えている。残念だが、今この場で君たちはアウェーだ。
「移籍の理由なんて探っても意味ないよ。もうここにいる橋本、森下、帆波もそうだし、他のCクラスの人達だって驚いていない。つまり、僕達は自分自身の意思で移籍を決めた。分かった?」
「ならここで話させてもらうわ。……あなた達の真意を聞きたくて来たの。分かるでしょ?」
「クラスを移籍した件について、理由をどうしても聞きたいと?」
「ええ。どういうつもりでそんなことを……?」
「悪いがオレは答える気にはなれないな。ただ、1つ確かなのは、オレがAクラスからCクラスに移動したというのは事実ということだ」
「清隆の言う通りだ。この状況は夢じゃない。現実なんだ。いい加減目を背けず向き合いなよ?」
門前払いするかのように雑な対応で堀北達をあしらう。松下が裏切り者になると言っているが、腐っても元Dクラスの事だ。どうせ半数以上は裏切り者と認定しているに決まっている。
これ以上話しても無駄だと分かったのか、堀北と松下はここで撤退した。最後まで弱った姿を見せなかったのは、流石リーダーといった所だろう。
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堀北達が去った数分後、帆波も友人達と合流し、手を振って去っていった。それは良いんだが「夜、ご飯作りに部屋に行くから待っててね」ってサラリとそれ以上の関係を匂わせるような発言は辞めてほしい。
「2人のあの反応、相当ショックだったでしょうね」
「なるほど、綾小路清隆と黒宮魁座が当日に、しかも始業式の後に移籍をした理由は最大限Aクラスの動揺を誘うため、だったというわけですね?」
「これが一番ダメージ与えられるからね。敵の希望を刈り取って有利に進めるのは戦略の1つだし」
「そこまで計算に入れてたのかよ……容赦ねぇな。奪い取った側ながら、アイツらの表情は見るのが辛くて同情しちまったぜ。その点、綾小路達は同情や迷いなんてなさそうだな」
「あるはずがないな。オレがCクラスに来たのは、残された1年間で確実にAを奪い取れる位置まで引き上げること。移籍するにしても、最も効果的な場面で追いつめるのは至極当然の戦略だ」
「我ながらエグいなって思うわ。お前相変わらず人の心とか無いよな。……いや、いつものことか」
人の心があれば、僕にこんな過労はさせない。しかも僕が本気を出しても倒れないギリギリの労働をさせるから、倒れる事も出来なくて余計に腹が立つ。1回だけ倒れた事はあったけど、あれは僕自身の活動なのでノーカンとのこと。本当に腹が立つ。
「つくづく味方になってくれて頼もしいぜ……そういや今さらだが、なんで黒宮はウチのクラスに入ったんだ?」
橋本がそうこぼす。僕としても、これからの側近には別に隠すことでもないとして話すことにした。
「そうだな……強いて言えば『民度』かな?」
「民度ぉ?」
「あのクラス、僕が試験で良い結果出さないと文句ばっか言ってくるんだよ。自分達は何もしてないくせにさ。こっちからすれば、何の努力もせずまるで成長していない、他の実力者におんぶに抱っこな状態の奴らになんでそんな事を言われなきゃいけないんだって思うのよ。ほんっと腐ってもDクラスって感じの人間ばっか。だから嫌気が差したんだ」
「あぁ〜……そりゃ嫌になるわな。そんな環境じゃ俺でも抜けたくなるわ」
橋本は納得したように頷いた。
「なるほど、黒宮魁座は嫌われていたのですね。ご愁傷さまです」
「否定出来ないな……アイツら自分の感情で動くガキだし……」
「大丈夫ですよ魁座くん。私は魁座くんがいつも頑張っている事を知っていますから」
「飛鳥ぁ〜〜〜」
慰めないでくれ。正直アイツらの存在がストレスになってたから、癒やしでその疲れが浄化されて効くんだよ………
「取りあえず、まず最初の目標は綾小路がクラスに認められることだな。特別試験でも決まってくれれば、話は早いんだけどな」
椅子を引いて立ち上がった森下は橋本を軽く一瞥する。
「それはどうでしょうか」
「どういう意味だよ」
「あなたは未知数の生徒に、特別試験の方針を無条件に託せるんですか?」
「それは────」
「これが黒宮魁座だったらまだ良いでしょう。まだ怪しいとはいえ、OAAの成績は学年で一番ですし頼りたいと思います。ですが綾小路清隆は別です。彼は黒宮魁座以上にこれまで目立っていない。今回、綾小路清隆の引き抜きに携わっていなかったら、あなたは反発する生徒の筆頭候補だったと思います。もし違うのなら1文字で反論してください」
「1文字は無理だろうが……」
「フ。藍ちゃんの言ってる事にぐうの音も出ないようですね。では、私もこれで」
橋本からの完璧な反論が出ないのを見届け、森下もまた席から離れていく。
「あいつと絡んでいると疲れるんだよな」
「オレや魁座が森下と話すようになる前から、あんな感じだったのか?」
「変わらないぜ。ただ、誰かと積極的に関わる奴じゃなかったのは確かだ。そういう意味ではあいつにとっても綾小路や黒宮が特別な存在ってことだろ」
「それ、素直に喜んでいいのかな……」
清隆も同じ事を抱いているのか、複雑な気持ちの表情をしていた。あ、白石が背中をポンポンと叩いてくれた。ありがと。
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寮付近で白石と別れ、男性寮のロビーまで清隆と橋本の3人で戻ってくると、こちらを見て1人の生徒が立ち上がる。橋本が前に出ようとするが、清隆が必要ないと止める。
「先に戻ってくれ」
「オーケー。積もる話があるってならゆっくりとな」
軽く笑ってエレベーターのボタンを押した。
橋本がエレベーターに乗り込むのを待ってから、口を開く。
「良かったら、少しだけ場所を変えないかな。2人とも。ここで話すと人が集まりそうだから」
「洋介が良いならそれで良いけど。部屋で話す?」
「それよりも外の方が良いかな」
と、そのとき須藤や池、隣には珍しく啓誠と明人の姿もある。
ここでは人が集まりそうだったため、寮の裏手に回ることにした。
着いたあと、須藤が清隆に何故クラス移動したのかと聞いてきたので、僕は一旦黙ってる事にした。
ちなみにそのとき、池が軽井沢が原因かと零し、清隆が否定しなかったのを見て、手を叩いて喜びだす。そして須藤が背中を叩かれて怒られた。
……なんか随分デリカシーないなコイツ。2年生の無人島試験では珍しくカッコよかったのに、今じゃその面影もない。1年生の始めのお調子者だったときに比べればマシだが、それでも全然成長してないように見える。
すると、今度は明人が話し始める。長谷部が塞ぎ込んでいたと。僕達がクラス移動したのは自分のせいなのかもしれないと何度も繰り返していたらしい。都合よく仲直りしようとしたことが清隆や僕の重荷になってたんじゃないか、と。
そして洋介も清隆や僕に助けられたこと。心配していることを話す。
それはまるで、僕達が仲間だとでも言うように。
………
「洋介はさ、僕達は仲間だと思っているの?」
「……そうだよ。だから────」
「悪いけど」
僕は被せるように言う。今まで思っていた事を。
「僕は君たちのこと、一度も仲間だと思った事はないよ。あくまでクラスメイト。それだけの関係だって」
僕の返答が予想外だったのだろう。須藤は大きく目を見開いており、それは明人や啓誠も同じだった。洋介も他3人に比べれば薄いが、それでもただのクラスメイトだと言われた事には少し動じているようだった。
「な、なん……マジで言ってんのか……?」
「そうだよ。友達とは思ってる。でもそれとは別だよ。洋介達からそう言ってもらえるのは嬉しいけど、少なくとも僕から君たちを仲間だと認識したことはない。君たちとは入学時、たまたまクラスが一緒だっただけの赤の他人だろう?」
そうハッキリ言うと、シンと空気が重たくなる。
「さ、悪いけど僕も暇じゃないからさ、そろそろ帰らせてもらうよ。……あ、そうそう。もうこれからなるべく話しかけないで良いよ。クラスメイトって繋がりが消えた今、わざわざ話しかける理由もないからさ」
洋介は何か言いたそうな顔をしていたが、結局何も言わずに黙っていたのでそのまま寮へ戻る。清隆を置いて行くことになるが、それよりも休みたい欲が勝ったので気にしない事にした。
………ちなみにその日の夜、ご飯を作りに来た帆波に襲われ、結局ゆっくり休むことは全然出来なかった。
白石の台詞が少ない気がするがそれはすまん。あとで結構出番あるから許してくれ。
補足:魁座は結構堀北クラスでストレスが貯まってた模様。アイツら普段は魁座を頼る癖に、負けたら文句言うからね。
(ちなみにこれが移籍を決めた2番目の理由。1番目の理由は清隆の命令と坂柳の最後のお願いだから。何だかんだ人情が一番の決め手)
あと、堀北や平田達との会話は辛辣な言い方だけど、ようは「お前らそんな事一々気にせずさっさと前向けよ。いつまでも都合の良い夢見てんじゃねぇぞ?」ってメッセージが込められてる。淡々と話す清隆と違って、少しだけ平田達を気にかけているからまだ優しい。
とはいえ、仲間だと思った事がないのはまた事実。そこまでの信頼を平田や須藤達に向けたことはない。